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sakura咲く頃、あの子の桜 2


2008年の大戦争は不可避の戦いであった。
異常なまでに急激に発達した科学使いと、魔法使いが大戦争を起こす。
—その理論法則圏を巡って争い、勝者の側がこの世界のルールを作る。

表面的には、それだけの名目の戦争になる予定だった。

だが、実際には違う。
本来、科学と魔術は同質の存在だ。正確には、魔術の中に科学があると言っていい。
お互いに理論法則に違いはあれど、魔術内にいろいろな理論法則が混在するように、其処に一つ、科学と言う理論法則が加わった所で、魔術と言う大きな器が壊れようが無いからだ。

何故?

なぜならば、魔術というのは、この世界の法則を規定する『考え方』としての意味しか持ってないからである。

実際、科学の中にとけ込んでいる魔術はものすごく多い。
医学における、東洋医学なり、中医学なるものの魔術的思考法は、もはやその薬=漢方を処方するとき『常識』となっているのだ。
もちろん、体内のレセプターがどう、病態生理、薬理がどう、そういった科学的思考で漢方が処方される事は多い。
が、漢方の薬効の出方には『科学的には未知な部分』が多く、結局は魔術的思考法、つまり傷寒論や、陰陽五行論に基づいて処方する事になる。
そして、それがやたら滅多に効いてしまうのだから、しょうがない。
結局、結果さえ出てしまえば、方法論なんて言うのは宗教と同じで個人のアイデンティティによる所で片がついてしまう物なのである。

だから、本来、私たちが科学と呼んでいる物は、争う物ではなくて、むしろ尊いまだまだ幼き魔術の一分野なのだ。

其処に争い等生まれようはずは無い。よって、この名目と言うのは『最もらしい』嘘なのである。

しかし、結果的に2008年に大戦争は勃発する。
そういう『名目』で。

実際、科学者たち=科学使いたちが戦争を仕掛けてきたのは実は全く別の理由なのである。
彼らは、魔術儀式ならぬ『科学儀式』を行う事で、この世界を救おうとしたのだ。

宇宙は、日々膨張しているとはよく聞く言葉だが、ならば、世界は絶え間なく増殖しているという事実に彼らは行き当たってしまった。
量子物理学によって、瞬間瞬間、刹那と刹那の間に絶え間なく増殖する平行世界と言う可能性の連鎖が、『とある事象』によって限界を迎える事になる。『根源と呼ばれる日』と名付けられたそのグラウンド0の爆心地となる時間軸を中心に、世界に可能性と言う未来が次々と消滅し始めたのだ。
『ノロイ』とよばれるその現象の回避を求め、彼らは世界の可能性を束を一本に束ね完全なる世界を作り上げる事でその一つの世界だけを生き残らせる手段を、『神(管理者)』の指導のもとに行ったのである。
『ノアの方舟』と呼ばれるこの計画には、選ばれた人間以外生き残れず、選ばれた思想しか生き残れず、選ばれた可能性しか生き残れない。完全なる選民。
文字通り、世界崩壊という『洪水』を生き残る為の神話級の儀式形態だった。

こうして、表では魔法と科学の戦いが
     裏では選ばれた民とそうでない民が争っていたのが2008年の戦いの全容である。

ただ、確かなのは、その選ばれなかった民に確かに魔法使いと言う人種は入っていたのは間違いない。そういう意味では表は表なりに真実だったのだろう、理由全くの嘘ではあるが。

結果として、2008年のその大戦は、第三勢力として突如現れた
演算機(未来予知能力者)霧宮瑠璃ひきいる勢力にて終結し、それどころか、未来消滅の運命まで『春咲 小羽』と呼ばれる一人の少女の犠牲のもと回避される。

そして、弦候堂と羽白は、この当時、弓端家と古矢家を裏切って、後に誕生する第三勢力の前進、霧宮
紘一(三島)と手を組んでいたのだと後になって知る。

だから、この時の私は、随分シビアな話を父からされたにもかかわらず、その実その半分も内情を明かされなかった。

ただ、弦候堂の『事情』を表の事情から歯抜けに解説されたにすぎない。

曰く、科学者たちとの戦争が起きる。
曰く、その時の科学者たちの力は圧倒的である。
曰く、我々の次世代を後の世に残すために、天才・弦候堂流は封印され、そして、弦候堂夫妻は、科学者たちの目を欺くため、死んで霊体化することで、愛する息子を見守っているのだという。

故に、今まで一族宗家の集まりにも参加できなかった。宗家の敷地の結界は霊体を駆逐する故。
故に、弦候堂現党首はここにいない。
故に、霊体をもって羽白の―――私の所へ来たのである。
わざわざ、私の儀式の行方を見守るために、死人同然にもかかわらず。

私は・・・・この時初めて、この儀式の重大さの一端に触れ
      この時初めて、弦候堂という誠実な家の事を知ったのである。

sakura咲く頃、あの子の桜


小さな頃、私は三重県のある村で育った。

「おかあさま~」—私は走る

そこは、とても太陽の光が綺麗で、だけどあまりにも強すぎるから、
森が覆うカーテンが幼い私を守ってくれていたんだと思う。

「おかあさま、どこ~?」—板間の上をトントンと

だって、私の髪は真っ白で雪の様だとお母様が言うから
きっと、その強すぎる太陽の光を浴びてしまったら—折角ここまで綺麗にのばしたのに溶けてしまうでしょう?

「おかあさまあああ!」
     —私は疲れて立ち止まった。走りすぎた。代わりに今までで一番大きな声で母を呼ぶ。

そんな私のとんちんかんの問いに母は、「きっと、そうね」と微笑みながら言ってくれるのだけど

「あらあらどうしました?美晴?」—母の声がする。お勝手(台所)の方だ。私は再び駆けて…

何処か少し悲しげだった。

「おかあさま!」—私は母に飛びつくように甘えたのだ。

◆◆◆

「あら、はしたない。女の子が着物姿でそんなに走り回る物では在りません」
母は、やや強めの口調で私を嗜めるのだけれど、私は母が私を心配する姿に愛を感じて
「にひひ」
にへらと笑うので、全くの逆効果だ。
そんな私の表情を見て、一つ、ため息をついた母は、すぐにすっと腰を屈めて、私の白い髪を一撫ですると、私が崩してしまった着物をすっと整えてくれる、
「ほら、きれいきれい」
整えられた着物は、ピタッとまとまって隙がない。
その様子に母は満足して、漸く私の話を聞くためわたしに澄んだ眼差しを向けてくれた。
「あのね、おかあさま。夢を見たの。忘れてしまう前に、話さなきゃと思って走ったの。えっと、それで、えっと、えっとね?」
「あら、また、あのおかっぱのこの夢を見たのね?」
「そう!香苗ちゃんの夢!金色のお目目でね、凄く可愛いの。いつもは泣いてばかりだったけど、今日は笑ってた。男の子とあって、遊んだみたい」
「そう、それはよかったじゃない。今日の香苗ちゃんは笑ってたのね」
「ぜんぜん良くないよ!おかあさま!!香苗ちゃんが笑ってくれるのは私の所為じゃなきゃ!!」
私のあんまりにもわがままな言い分にか、それとも拙い言葉使いにかはよくわからないが、母は苦笑すると私の頭をそっとなでて「あなたは、本当に香苗ちゃんが好きなのねえ」と言った。
わたしは「うん」と言った後。
「私あの子のお嫁さんになるの!だって、あの子は私の◆◆◆なんだもの!!」
よりいっそう母は破顔した。

◆◆◆

羽白家はその統括地域を四国に持ちながら、現在は「大事な時期」なので三重の別荘に居を移していた。
特に一週間後の魔術儀式、私の◆◆◆継承の儀は羽白の家にとって最も重要な儀であり、私が羽白の家を継ぐために絶対条件となる儀式だった。
それ故、その時期が近くなると、羽白家に弓端宗家はもちろんのこと、他の分家にである古矢や、弦候堂までやってくる。
三重県の山中に位置する別荘は、まるでお正月やお盆に親戚筋が集まるように、ごく自然に人が集まる事になっていた。
それだけ聞くと、わいわいがやがやと楽しそうな会に聞こえるが、ちっともそういった雰囲気ではない。むしろピリピリとしていて、誰もかれもが緊張していた。
殊、日本において儀式なんて言うとお祭りやお祝いなんてイメージが付加されるけれど、そうじゃない。
羽白の儀式は魔術の儀式だ。
分かり易く言うなら、命を賭けた試練であった。

まぁ…その当時、当の本人である私は、そんなこと、一欠けらとして理解はしていなかったのだけれど…。

◆◆◆

「弦候堂にございます」

まずはじめに、羽白の家に到着したのは兵庫に統括地域を持つ分家・弦候堂だった。
弦候堂は弓の弦を作る家系。代々髪に魔術を込め、それを結い、糸となし、弦を編み、音をなして魔術を奏でてきた。
属性は『波動』、系統は『極細糸・須臾・刹那』、根源は『反転』。
『天才・弦候堂流』を次期当主に据える事になっているとは聞いているが、私はそのとうの「天才様」とやらにあった事が無い。
弦候堂は、私が生まれていこう、宗家での旧正月の集まりですら顔を出さないため、正直言って謎なのだ。
本来ならば、羽白と同じで分家の分際である弦候堂に、そんな勝手が許されるはずは無いのだが
どういう訳か、周りの大人たちが気に留める様子が無かった。

同じ分家のくせに謎多き家系・弦候堂。→私のこの家に対する感想はこれに尽きる。

だから、今日、その傲慢勝手なる弦候堂とやらを一目拝めるとあってちょっと楽しみにしていた。
いいや、大いに期待していた。
「天才」だなんて、御世様を差し置いてそれを語れるほどの逸材とやらにも興味がある。

正直言おう、私の弦候堂に対する印象はこの時点で最悪。
やってきたら、軽くいなし、嫌みの一つでも言って嘲り笑ってやろうとそんな意地の悪い事を考えていたのである。
私は、先制攻撃をお見舞いしてやろうと。玄関前の廊下に急いだ。そうして、玄関から隠れるように、ふと物陰に隠れ、急いてまた乱れてしまった自分の着物をちょこちょこと直す。
(つんっとめいいっぱい澄ました態度でお出迎えさし上げるわ)
私は、一つ深呼吸をして、その当時思いつく中で一番、舌の上に載せられる毒を、頭の中で反芻してから—(よし、準備万端)。
私は、何でも無いようにしかし美しく玄関前の廊下に出て
「あら、おはようございます。どこの——」
と、言いかけて視界の中にそれが目に入ってきた瞬間—私は絶句してしまった。
次の瞬間、カーッと頭に血が上り
私は思わず叫んでしまった。
『分家とはいえ!霊体を差し向けるとは非礼が過ぎる!!」
弦候堂は、使い魔にも劣る分け魂(わけたま)をよこしてきた。
この術式は、意識のみを遠くに飛ばすもので、本来、これはただの遠見の術、千里眼と同じでただ覗き見するだけの術だ。声など発しようがないはずなのだが、弦候堂の波動の属性をもってすればそれも可能なのだろう。
…その分け魂だけが、其処にあった。しかも、どうやら、天才とおぼしき流なる人物の物は無い。

失礼極まる!

例えば、この行為は、結婚式の参加上にテレビ電話だけよこして参加するようなもので、あまりにも無礼な行為だった。
しかし、後から遅れて玄関に訪れた母と父は、「ようこそ、いらっしゃいました」と何でもないようにもてなした。
普段礼儀に厳しい母のこの態度に余計に納得がいかない。
私は思わず、母にまで噛み付こうとした瞬間「とんっ」と頭に手が置かれた。

え?——

ふと、振り返るとそこに、弦候堂の分け魂がしゃがんで私の頭をなでていた。
「すみません、羽白の次期御当主。しかし、この分け魂の様な身なりをお許しいただきたい。私たち、弦候堂には、もはや体と言う物が無いのです。」
「体が…ない…?」
ならば、弦候堂とは幽霊なのだろうか?
自らの意思で霊体化を試みる魔術師は多い。特に西洋では、肉体を捨てる事こそが、己がカルマをピュリファイできる唯一の方法だとして流行した事もある。
けれど、一時的な存在の底上げ等、問題にならないくらいの欠陥が其処にはあり、とうの昔に廃れてしまった。悠久だと思われた精神と言う存在は、どうしようもなく劣化しやすい物だったのだ。
その上、現代の魔術レベルでは次世代の個体が残せない。つまり、繁殖が出来ないのである。

霊体化は魔術師という種を絶滅させる—それが、今の魔術業界での常識であり、真理だ。

だから、そんなばかばかしい事あり得るはず無いのに。
だが——どうも、嘘と言う訳ではないらしい。頭にポンッと置かれたての感触。本来霊体である彼らに、触られた所で何も感じる事は出来ないはずなのにー今、彼らの暖かみさえ感じる事が出来る。
つまり、それは、魂と魂が直接ふれあっているからであって、彼らが分け魂などではなく、本当に核のある魂そのものである事を暗示していた。

「いい機会だ、美晴。『あなたも生き残る側に選ばれたのだから』、弦候堂の方々の今の状況を知っておくのも悪くないのかもしれないな」

父さまが、奥の方からやってきた。父は四角い人間だった。四角四面。何処から見てもカチコチで、頑固親父と言う言葉はこの人を元に作られた言葉だったと思っている。それは、羽を語る環が一族からすれば、とても場違いのように思えたのだけれど、仕方が無いと言えば仕方が無い。父はそもそも羽白の家の人間ではなく、ただの武術家で、魔法使いですら無い。そぐわないのは、当然か。

「あなた…」
母は、やや困惑した顔で父を見つめた。

「よろしいかな?」と父は言う。

弦候堂となのる幽霊は
「ご随意に…」といって

「いずれは、羽白当主も関わる問題です」

とだけ、最後に言った。

私は、子供ながらに、嫌な予感がしたのである。



ヒノキのラフ

昔書いた設定用ラフだったりするもの。

しゃっほー8の時のものだけれど、封印した理由は

上の二つ、背部の設定ラフが、明らかに年齢に対して幼かったから。
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