第二章 多重存在 吉野巫女 その4 ―小説
あはは、と腹を抱えて笑う吉野巫女。
吉野巫女―『桃色血走り』。
「五日前から、こっちが対応しきれなくなったアブレ者のゴミ共を処理してた前任者を瞬殺!
イカスです!
カークイ~!感じが最高。
うふふ、一日そうそう多くの人は殺せないですけど、
あれですね、
うさぎ狩りみたいにターゲットを探して殺すのはまた違った楽しみがあるですね。
第一、毎日毎日『吉野巫女』ばっか殺してても飽きるですよ。
マンネリ野郎は最悪です。
どんなにたくましいのを持ってても、そんなんじゃイケなくなっちゃう!イヤんッ!」
・・・・
「そんなウチにさ・・、みんなどうしてるだろう、て、ふと思ったんだよ。
で、学校に行ったら『ゴミ』が私の代わりに授業受けてた。
寂しかったな。
ああ、そうか、
愛染さん、
私の家族を心配させないように、代わりを置いててくれたんだってその時知ったんだけど、
それって、同時に
ああ、もう私、あの世界には帰れないんだって―。
でも・・・・『やっぱゴミは処理しとかなきゃいけない』でしょ?
『私の代わりをしようなんて、死んでいくだけの存在のくせに、選ばれなかったくせに』
そんなのおかしいじゃない?
そんな『吉野巫女』もういないんだ。
だから、消さなきゃ、『殺してやる』って、
うん、私なりの決別なの、吉野巫女はもういないから、
ここにいるのは『桃色血走り』だから。
そういう意味を込めて、もうユダ君にも会えないから・・・
私、せめて、ユダ君にもらったライオンのマスコット返そうと思って、
一緒においてきちゃった。
うん、今までの私と決別、ユダ君と決別、そして優しい世界と決別。
・・うふ、
『あの女とユダ君』が一緒にいるところを見た時は、本当にいらだちを覚えましたが、まぁユダ君に免じて、通報くらいですましてあげたです。
えへへ、私の予定外の行動に、あわてた愛染さんが、もう一匹、『ゴミ』を派遣してきて、
ああ、もう、余計なことするなこの人は、せっかく殺したばっかりなのにってことで、愛染さんが変な気を利かさないように、今度は『家族ごとぶっ殺しちゃったですよ!』」
ははは、とさびしそうに笑う。
なぁ、吉野、俺お前の友達だからさ、何だって認めてやるよ。
俺も死戯だし、殺人鬼だし、でもさ、俺にはお前の本音がどっちか分からないんだ。
「寂しいよ。恥ずかしいよ。ユダ君。私こんなになっちゃった。
いやだよ、私。もう、殺してよ。私を楽にしてよ。」
抑圧してきたお前もお前だし、悲しげに笑ってるお前もお前だと思う。
どっちも吉野巫女だし、『桃色血走り』なんかじゃないよ。
「でも、汚れていいこともあるですね。
これで、ユダ君とお揃いですよ。
いいじゃないですか、私達はSEXなんかよりよっぽど深くお互いを知れる交われる、そういう快楽を共有できるんです。
愛しあいましょうよ。ユダ君。」
笑いながら泣くなよ、吉野・・・・。
吉野・・・。
――私を殺して!
―お願い!ユダ君!貴方のこと愛しているから
――私に殺されろ!
「吉野おおおおおおおおお!」
俺は、駆ける!あいつの望みをかなえてやる!
「ひひっ!」
血走った目!快感のときに期待する目!
しかし、その瞳は涙をこぼす―
お前のその充血した眼は、どっちの理由で赤く染まってるんだ!
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参加中第二章 多重存在 吉野巫女 その3 ―小説
「何があったんだよッ!お前ッッ!」
泣いてないで、ちゃんと教えてくれよッ!
俺の言葉が通じたのか、俯いた呼吸を整える吉野。
リズムを整える。
吉野の吐息だけが広場に響く・・・。
うん、と一言吉野は呟いた。
もう一度息を吸う。
「ユダ君がデートしてくれた日、12月の二日・・・覚えてる?」
「ああ。」
忘れるはずねぇよ。友達を傷つけた日だ。裏切った日だ、忘れるはずねぇ。
「あの後ね、愛染さんに、誘われたの。傷心の少女だった私は、愛染さんにひかれたのだ。
超~昼ドラ的~」
「うん」
俺はお前の話を聞いてやる。
「やだ、ちょっとは突っ込んでよ。
いけないなぁ、大阪人の魂を忘れちゃいけないんだよ?
まぁ、いいさ。
許してやろう。
私は心が広いのだ。
うん、で、愛染さんに誘われたの。
でもね、尻の軽い女と思わないで。
愛染さん、なんかいろんなこと知ってる人で、案外魅力的で、何よりユダ君に声がそっくりだった。
まぁ、こんなこと言ってもユダ君本人は解らないよね?
普通、自分の声が周りにはどう聞こえてるかって解らないもん。
自分の声、録音して聞いたときショックだよね~、あれ、私も結構へこんだ方なのよ。うん、三日へこんだ・・・。」
ずいぶん、へこむじゃねぇか・・・。
「最初はね?軽い気持ちだったんだ。
愛染さん、身振り手振りとか、そういうところまで全部ユダ君そっくりで、うん。
ユダ君と遊んでるような気でいたの。
それが楽しかった。
うん、・・・で、ユダ君が壊した、あの地下の施設に連れて行かれたの。
あそこね?『処理施設』なの。
この世界の未来に必要ない人材を選別して消していくところ。
一言でいえば、殺してたんだよ。
選別ってね、まぁ私も受けたわけだよ。
うん、で、私は『必要のある』方に入れてやるって、愛染さんが・・・。
あの人数からだよ?結構優秀でしょ?」
「うん」
・・・・・・
「入れてやる代わりに、仕事ができるようにしてやると言われた。」
・・・・・・
「うん」
「なんか、私と同じ姿をした人いたでしょ?
多重存在―そう、愛染さんは言ってたけど。
私には何の事だか・・・。
でね、『お前が選ばれたから、ここにいる吉野巫女は全部ゴミだ。お前が殺せ』・・・て。
ふふふ・・・はじめてって、あんな感じなん『ですね』。
『ウネッテ』
『ヨがって』、
『痛くって』―ふふふ、
一人殺すのに結構時間がかかったん『ですよ』。
私の手、カタカタふるえちゃってさ、なんか怖くって、それでもさ、これなら簡単だからって拳銃持たされた。
持たされて・・・磔にされた『私』の怯えた瞳を見たら、
もう頭真っ白になっちゃって・・・殺せないっていったの。
なんて、『ウブ』なわたし、そんな私に、愛染さんはこういう『ですね。』
―お前もゴミなのか?―
・・・死にたくなかった。
『私はあんなゴミとは違う』。
だから、引き金を引いたの。
すごいんだね・・・銃って、迷いながら震える指で軽く触れたつもりでも、簡単に人を殺せてしまう。
『なんて味気ない』。
そのあとは、流れ作業みたいに、どんどん出てくる私を処理していった。
ねぇ?
世の中の普通にテレビで凶悪犯とか言ってる殺人鬼って、多くてもせいぜい二桁じゃない?
なのに、単なる中学生だった私が、あっという間に三ケタを超える殺人をその一晩でしたの。
ねぇ?わかる?
その次の日目覚めても同じことをするの、次の日も同じことをするの、殺人しかしないの。
『殺人の事で頭が一杯』。
もう、いろんな意味で、『絶頂』でした。
5日もしたら、なんか、なんか、良くわかんないけど、『気持ち良くって!』。
あれ?
不思議だな・・て、思ったの。
ご飯食べたいとか、もう眠たいとか、エッチしたいとか、
そんなのと同じ感じで『人を殺したくなっちゃう』。
あはは、ははは!
どのあたりなんですかね?
私が死戯になったのは。
あの時は結構自動的でしたからね。
あんまり覚えちゃいないですよ。
うふふ、そうそう、それで、愛染さんが、働かせてやるって。
うふふ、初出動!」
あはは、と腹を抱えて笑う吉野巫女。
吉野巫女―『桃色血走り』。