第三章 幸福在処 はやく・・・あの場所へ―小説
何故でしょう。
何故でしょう?
なぜでしょう?
足が速く動きます。
体が、先へ先へと求めています。
私は、理由もなく走っていました。
走りながら、その場所のことを考え、いつの間にかそこにいました。
はぁ はぁ はぁ
・・・・っ
息が上がってます。
酸素が足りない。
それは霧が目の前に広がっているよう。
すぅ、と体に空気が入って行きます。
それと同時に霧は晴れて行き
そこには、あの公園がありました。
第三章 幸福在処 3-7 サクラとノート ―小説
授業の中、白いノートの、私の文字が書き込まれていきます。
先生の黒板のスピードに合わせて動く手、先先と書き込まれていく情報。
ノートさんは何となく・・・・。
―私に似ている。
ノートのページが下まで埋まっていくと、次のページに、書き込みます。
ふらっと、目の前をほのかに淡くピンクに染まった物が落ちてきました。
それはふわりと、未だ白いままのページの上にとまりました。
私はそれを拾い上げます。
えと、・・
桜の花びら?
冬なのに?
似てるけど違うは花かも・・・・。
わたしは、それをじっと見つめて、ふと、今日の朝の少女を思い出した。
たぶん、年齢で言うなら小学校くらいだ。
たぶん、まだ学校のある時期だし、どうしたのかなぁ?
まだ、一人でいるのかな・・・。
寂しそうだったな・・・。
どうしてだろう。
―「春咲!」
チュチュ
あっ・・・あの子の名前・・・聞いてなかった。
―「おい、春咲!」
チュチュ
ゴツン☆
「はうあっ!」
「久野君!ひどい!本の角はさすがに痛いよ!」
「篠原は、こいつを甘やかしすぎなの!」
「ふへぇえぇ???」
どうやら、夢だったようです。
あれ?どんな夢でしたっけ?
「しらねぇっての」
と、今日もぶっきら棒に、私に言ってくるのは、同じクラスの男の子。
久野隆(くの たかし)君です。
「お前、今何時だと思ってる?」
「ふぁい!1時間目が終わったので、きっと、10時半です!」
「違う!今日の授業はすでにすべて終了した!
今は、12時半!
昼だよ!昼!
ば、か、こ、は、ね!」
「ば、馬鹿ではありません!
いえ!そうですね!小羽は馬鹿ですけど!
そんなの嘘です!
いくらなんでも、私はそこまで寝ぼすけさんじゃありません!
ぶーぶー、久野君がまた私をからかってます!」
久野君はいつもそうです!
小羽をバカバカと言います!
それは確かに、学校の成績はそこまで良い方ではありませんけど、それにしたってひどいです。
ずっと寝てたなんてそんな事、ありえないです。
「小羽ちゃん。それがね、本当なんよ。」
「ええ!しーちゃんまで!?」
そんな~
「そうじゃねぇよ。時計見てみろ!ほら!」
私は黒板の上に取り付けられた黒縁の時計を見ます。
十二時・・・よじゅうご......ふん・・・・・。
空を見上げれば、日は天頂にあり、です。
ついでに、窓の柵に泊まったちぃさん(スズメ)にも確認。
あ、さっきの『チュチュ』は、ちぃさんの声だったんですね。
「えええええええ!」
「平然と鳥と会話するな、お前はネズミ―のお姫様かよ、
つか俺の意見より鳥に信頼性をおくたぁどう言うことだ。」
携帯の時計を見て、さらに確認!
かわらな事実に、もう一度私は驚きの声をあげました。
「小羽ちゃん・・・本当に大丈夫?体の具合・・・悪いんじゃないの?」
「いえ・・・そんなはずは・・・小羽元気ですよ。」
「本当だろうなぁ?
あれだろ?
またどっかにふらふらほっつき歩いてんだろう?遅くまで何やってんだよ。」
「ぶ~ぶ~、私ほっつき歩いてなんかいません!
お仕事です!必要なことです!
それに、夜遅くになる前には毎日帰ってます。」
疑わしそうな眼で久野君がこちらを見ます。
ああ、もう、小羽はそんな悪い子じゃありませんよ。
「とにかく、先生に失礼だかんな。
あんまり、堂々と眠りこむなよ。ほれ、今日のノート」
「あ、ありがとうございます。」
久野君はぶっきらぼうですが、やっぱりどっか優しいです。
すると、しーちゃんが、急に んふふふ と笑いだしました。
「久野く~ん、つんでれ~」
「うるせっ!馬鹿!そんなんじゃねぇよ!誰かが貸してやらんとダメだろうがッ!」
あ、しーちゃんの目つきがいやしい感じになってます。
ああなったしーちゃんは強いです。おそらくクラス最強です。
その前に・・・
ツンデレってなんでしょう?
「久野く~ん」
「ああ、もう、しつけぇしつけぇしつけぇっ、てば!おい、春咲!」 「久野く~ん」
「はい!」 「つんでれ~」
「明日までには返せよ。約束だからな」 「くのく~ん」
「了解です!私は約束を破らないです!はい!」 「つんつんでれでれ~」
「ああ、もう!篠原あああっ!」
さて、学校全域を舞台にした追いかけっこの始まりです。
こうなると、久野君が諦めるまで1時間は続きます。
基本的にしーちゃんは陸上部のエースなので、運動の苦手な久野君が捕まえた事はないんですよね。
それにしても・・・。
私は久野君に借りたノートを開きました。
細かくチェックの入った綺麗で見やすいノート。
そこに、今日もピンク色でテストに出そうな所に丸い印がついています。
今の私には、なんだか春に咲くあの花をイメージさせます。
「本当に・・・どうしたんでしょうか?」
ふわりと、窓から入る風。
今日は、不思議と温かい。
それでも、夢のように花の香りを運ぶことはありませんでした。