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小説 愛食家な彼女 32

それからは、最悪だ。


あのあと、紗江とわかれ、俺は引きずられるように藤本先輩に、俺から言わせてもらえば見当違いな被疑者の張り込みに付き合わされた。


現在の被疑者と目されているのは、被害者の元彼女と現在のその彼氏。

外目から見る限り、何とも幸せそうな二人である。

事件はまだ公開に至っていないので

もしかしたら、元カノが元カレのしについて何も知らないのかもしれない。

だったら知らないままにしておけばいいものを。

彼女は犯人ではない。


捜査会議で警部が星を付けた被疑者が、犯人であったことなどほとんど無いらしい。

そうでなくても、おれの鼻が違うと言っているのだ。


無駄な徒労だ。


張り込みの刑事を同僚と交代することになり、俺たちは


「これ以上お前が勝手にさぼって、それをほかの同僚にでも見られたらどうする?

ましてや、あの警部にでも見つかった日には、貴様は国家反逆罪で死刑だ。」


「いや、さすがにそれはないでしょう。だいたいなんですか?国家反逆罪って。あの警部は、藤本警部の中で何者なんですか?将軍様ですか?」


「そう言うわけで、これからは常に私と二人で行動だ。」

「そういうのいじめって言いません?」

「いわない」

「言い切りますね。」

「美人だからな。私は。」

「本当に容赦なく言い切りましたね。」


「だが、冗談でも酔狂でもなく今のおまえは『オカシイ』・・・・。自覚はあるな?」

「恋の病です。」

「いいきるな。」

「ええ、隠していても仕方ありませんので。俺は彼女のことを愛しています。」

「本当に容赦なく言い切ったな。」

「いけませんか?」

「いけなくはない。恋じたいは、年齢を超えて自由に行える権利があるだろう。私が保証してやろう、高柳。

ただ、自分の職務(プライド)を汚してまでする青臭い恋は高校生で卒業してもらなわなければ困る。

やることはやる。

仕事をないがしろにして行う恋は三流以下だ。

ましてや、お前は人の金で食わしてもらってる身だ。

自立してるなんてばかなことは言うなよ。

当然、私たちの給料が税金から支払われているという確固たる歪みようのない事実としてだ。

我々には責務がある。

必要がある。需要がある。

酬いなければならない。供給せねばならない。

わかるな?高柳。

社会の責務を果たせぬ人間には『恋をする資格すらない』」

「NEETは人を愛するなと?」

「彼らは社会の責務から外れてしまったから、逆だ、勝手に恋をして勝手に愛を覚えてもいい。自由だ。ただし、権利じゃない。もっと、野性的な位置づけだ。彼らのカテゴリは人類であっても、本来ならば、国民を名乗ることはおかしなことだ。

ただ、そこに生まれたから

そこに存在したからという理由で

日本国民という地位に甘んじる権利は本来ならばありえない。

そんな不平等許してはならない。

虫のいい話とは思わないか?

自分は国に甘え、環境に保護され、国民(家族)に寄生する。

何の代償もなしに?

他の人間はこんなにも代償を支払っているのに?

この安定した土地を得るために働き

社会の中で自分の居場所を作るために多少の我慢はし

そのうえで誰かのためになることを行い

社会を支える歯車となって

はじめて寿命を全うできる権利の一つを得るというのに

何の障害も、不幸も、不文律もない人間が

その権利を謳歌しようとする。

そんな奴に限って、やれ、政治が悪い、国が悪い、社会が悪い

それを作り上げてる歯車となって必死に支えている人間をあざ笑ないながら

そんなことを平気で言う。枠の外から。」

「まぁ、そうも言えるでしょうね。本人たちもそう言うのわかってて自分を制御できずにいるんでしょう?」

「お前はそうなるなと言ってるんだ。高柳。」

「俺は働いてますよ。」

「同じだ、自分を制御できてない」

「・・・・・・・・・・・・」

「制御し続けろ、高柳。そうしてやっと、お前は薄野ことを愛しているという権利を持てる」


最後に小突かれた。

なぜかその痛みは妙にリアルで

呆けていた自分がうそのようだった。


「なんか・・・・生易しすぎて逆に怖いっすよ。」

「マゾめ」

「そう言うこと言ってんじゃないです」

「ガキめ」

「う、・・・・否定はしません。」

「私を抱いておいて」

「それ、嘘ですよね」

「ああ、そこに到達するまでに寝てしまったからな」

「そんなこったろうと思いました。」

「どうして?」

「どうしてでしょう?」

―匂いがしなかったから―


「ん?」

―あの、匂いがしなかったんだ。―


「なんでもありません」



俺はゆっくりと立ち上がる。

ひだびさに、地に着いた足。

指先にまで力がこもっているような気がした。

はっきりした大地が

意識を覚醒させていく。


「ありがとうございます。」


俺は少し恥ずかしかった。

何と言う年甲斐もない行動を、藤本刑事の前で見せ続けていたのだろうか?

それがはっきりとわかるために、急にここ最近の行動を抹消したいほど恥ずかしいことのように思えてきた。


だから、とてもじゃないが藤本刑事の顔が見れなかった。


大人になった。落ち着いたと思っていた俺が、たった一つの出来事まででここまで退行することになる。

それは、きっと自分が今まで大人になり切れておらず、無理に大人になろうと肩肘を張っていた、背伸びしていた何よりの証拠だった。


それを、彼女は見透かしていたに違いない。


だから恥ずかしかった。

どうじに、感謝の気持ちが片隅に生まれた。


だから、俺は彼女の顔も見ずに「ありがとう」といった。

それこそがガキの行動だ。まともに礼を言うこともできない。

けれど、このときの俺は、彼女がそれを許してくれるような気がした。

だが、鬼刑事と呼ばれた藤本刑事にそれはないとも思う。


「うん。」


俺は驚いた。驚いて振り返ってしまった。

藤本啓二らしからぬ切り返しだと思った。

そして、振り返った先にはもっと驚くものがあった。


藤本刑事が 太陽のように 笑っていた。


その瞬間は 10秒にも満たない 刹那にも余る時間


彼女の本当の表情との

         ―わずか8.76秒の邂逅だった。


第一章 自己消失 1-26 ~私はあなたのすべてでありたい~ ―小説


「望みとあらばそうしよう。」

低い、低い声。

ぴりぴりと肌に響くような、それは人ならぬ声。
机の上から、コトリ、コトリとくるみが落ちる。
机の上で動いたそれは、不自然に立ち上がった。
人形。

「物には魂が宿る。特に人形(ヒトガタ)には人の念がつきやすい。だから、お前みたいなやつがいてもおかしくはない。」

「人形という言葉は気に入らんな。

たしかに、私はヒトガタとして生まれた身。

だが、今の私はより高次な存在だ。

魂を得、意思を得、魔法さえ使える。

もはや、私は人形ではない。

人だよ。

愛さえある。

ああ、だがしかし、お前たちの言葉で私をツクモ神と呼ぶなら私は神だな。

それはそれで正しい。

私はお前たちを簡単に殺せる。

いつでも殺せる。

優位に殺せる。

私は人より遙かに優秀だ。」

「わからないな・・・」

「何がかね?」

「お前の使う唯一の魔法は、『人の個を完全に奪うこと』だ、だが、弓端さんには、その魔法を使わなかった。
代わりに、その『副作用』を使ってじわじわ殺した。
お前は、弓端さんに関わった人々を片っ端からその魔法で殺すことで、その人達に内在
する弓端さんの『個』を一つずつ、片っ端から殺していったんだ。

だから、弓端さんは、徐々に空っぽになっていった。」

同時に、弓端さんの中の殺害された人の『個』も死んだ、だから、弓端さんには被害者は、知り合いという認識、いや、それより浅い認識になっっていた。

「僕と出会った時は、弓端さんは、もうほとんど死んでいたんだ。
人に声をどうやって掛けていたわからなくなるほどに。
お父さんを、単なる知り合い程度にしか感じられなくなるくらいに。
僕と出会ったことで少しは回復したし、カザトや、商店街の人たちのお陰で会話が成立するまでにはなった・・・。
だから、商店街の人間を殺したんだろ?
今までと同じように、今は井戸に詰まっている『古矢さん以外の使用人達』や、今は病院にいる『弓端さんのお父さん』と同じように。
古矢さんは、お前に操られていたんだ。

異界にもなっていない状況で、お前が移動するには古矢さんにを操って移動する他ない。」

人形は答える。

「いやいや、操ったなどとは人聞きの悪い。

古矢とは共犯だ。

いや、違うな、古矢は私なんだよ。

あいつは元から空っぽだ。

あいつに中身を与えたのは全部私だからな。

そういう意味では、古矢は私の人形だ。」

人形に、人形扱いされていたのか、古矢さん。

あんた、意外とかわいそうな人だったんだな。

「商店街の全員を殺すために、この要塞のような屋敷・・

いや、監獄のような鉄壁の守りをもつ屋敷から出るのも、古矢さんがいれば楽だろうな。

お前は、ただ蔵の最上階の窓から外壁の向こうまで投げてもらうだけでいい。

お前の体重は野球ボールよりも軽いのだから簡単だろう。

出来るだけ通行人がいる時をみはからって投げてもらうことで、通りがかった人を捕まえ、操る。

操った人間をつかいあとは商店街の人間ごと殺すだけ・・・実に簡単だよな。」

今、思えば、僕が見た蔵の最上階の明かりは、ちょうど古矢さんがこいつを外壁の向こうに投げていたからだろう。

「戻り方はいくらでもある、古矢さんが外に出る機会さえあればね。

まぁこの場合。

その機会を与えてしまったのは僕だけどな。」

柄原を捕まえた時、古矢さんに、隠れて相手の出方を伺う役は、こいつに有利に働いていた。

こっちも、捕り物中の古矢さんの様子はこちらからも把握できない。

「この事件で起こったことの大体のあらすじはこんな所だ。
で、あらためて見てやはり判らない。

何の躊躇いもなく古矢さん、弓端さんのお父さん、使用人達や商店街の人間を殺せるお前が、弓端さんだけは違った。
なんで、弓端さんだけこんなめんどくさい方法で殺そうとするんだ。
お前の魔法を弓端さんに直接かければ、簡単に弓端さんを殺すことができる。

こんなに苦しめて・・・そこまで彼女を恨む理由があるのか?」


そういった、僕の言葉に何がおかしいのか?

奴は笑う。

最初はこらえるようだったが、

ついには耐えられなくなったのか大きな声で笑う。

やがて満足したように頷いた。

「ふふ、恨み・・恨みか、・・程遠いな。

わからないか?

言っただろう?

『愛さえある』と。

これは愛だよ。

愛。

お前たち人間が好んで使う言葉だ。

尊いと思っている心だ。

これは愛だよ。

だいたい、なんだ?

さっきから彼女を殺す殺すと・・誰がそんなこと言った?

私にそんな気は毛頭ない。

手紙にもただ『迎えに行く』と書いただけだ。」

そういって、笑う。
なにが、愉快なんだ?こいつ、何が面白いんだ?
それに、愛?誰を?誰が?
これのどこがだ?

「ああ、そうだ。

彼女を愛しているのだよ。

私は弓端御世を愛しているのだ。

そう・・心から。」

「言ってる意味が分からない」

「いいや、君たちだって理解できるはずだ。

君たちがもっているものさ。

愛は、仏も禁ずる最も強固な執着だ。

彼女を独占したいのだよ。

愛しているからね。

そう、私は彼女の全てでありたい。

そんな彼女が、・・彼女と言う『個』が、醜い他人の手によって構成されているなど耐えられないッ!

私はね、彼女の心を私だけにしたいのだよ。

文字通り私が彼女の全てになりたいんだッ!」

自嘲気味に語る。

人形は語る。

まるで、人間であるかのように語る。

「・・究極だ。最高の愛の形だ。

だが、そのためには、まず、彼女に今迄の醜いクソどもと作り上げた『個』を捨ててもらわなくては・・・。

しかし、私の魔法では、彼女が、彼女自身で育んだ『個』、つまり自己を自己で比較し育んだ彼女の核さえ消してしまう。

そんな事をすれば美しい彼女が自分の形さえ忘れて、醜く溶けてしまう。

そんな凌辱を彼女に与えてはいけない。

そんな汚し方はできない。

だから、時間はかかったがこうする他なかったのだよ。

だから、殺すほかなかった。

だが、殺された彼らとて、きっと満足だ。

彼らは愛のために死んだのだからね。

尊いのだろう?

君たちにとって、最高に!

これは、最高の愛だ!」

人形は叫ぶ。

愛を叫ぶ。

愛に吼える。

「そのためならば、何人だって殺そう!
何百年、時をかけようと殺そう!
彼女に関わる醜き存在を私の愛で浄化しようッ!
全てだ!
片っ端から!1人たりとも!逃さずに!
彼女と深く関わったのならば尚更だッ!」


そうか、それが理由か。
とんだ、・・・とんだ妄言だ。
ただの独りよがりだ。
このオナニー野郎。
まったく結界と同じで半端な野郎だ。
僕は自分の心臓を親指で指さした。

「まだ、一人残ってるぞ」

ぼくは告げる。それは、合図だ。
さあ、殺ろう。

「安心したまえ、君も当然浄化してやる。」


これは殺しあいの合図だ。

 絵 リニューアル 霧宮瑠璃

本当にお久しぶりです。


ふふ、どうやらしばらく うp してないうちに


ずいぶんとランキングが下がったようですね。


千五百件見てくれてたのが、幻想のようだ。


アクセス数が、恐ろしいほどへこんでいる。


うう~ん、リターン客のすくねぇブログだねぇ。


新塵小説も第一章のリニューアル版を先にあげたらよいものを


愛食家な彼女のプロットを読みました。


暗い・・・・鬱展開・・・・


ただ、なるほどって感じはしたけど。

たぶん読みすぎると病みます。


中盤は青春物語なのに・・・・



それはそうと、第二章の霧宮瑠璃のデザインリニューアル



メガネっこ
趣味でメガネっ子になった。



いいよね、メガネ。


健全な精神は、健全なメガネによって保たれます。


それではアデュー