小説 愛食家な彼女 35
「ちっ・・・糞餓鬼が・・・・」
「止めろ、高柳。ガキとはいえ拳銃を持ってる。それに、店の中にああ散らばっていられると、対処しきれない。機を待て。」
どうして、小学生なんかが銃をもってる?
社会が病んでいるとか言うレベルじゃない。
彼らが持っているのは、暴力団がまわしているようなトカレフだ。
それも、5つ。
偶然で手に入るようなものでもなければ、おふざけで手に入るような限度を超えている。
全員の位置を確認する。入口付近に一人。
俺たちの目の前に一人。
お菓子コーナー中央に一人。近くには女子高生がひとり。
弁当コーナー北側の端に一人。サラリーマンらしき男が一人。
そして、レジに一人。もちろん、近くにはレジ打ちが一人。
「あの・・・ぼく?おもちゃで人をからかうのは・・・・」
「あんれぇ?もしかして、これモデルガンかなんかと勘違いしてるぅ?」
乾いた音が一つ店内に反響する。
「ちがうよぉ~」
お菓子コーナーのガキが満足そうに帽子の縁を、銃口で押し上げていった。
近くには、女子高生が倒れている。
腹の下あたりから、赤い領域が広がっていく。
「いたぁあぁあぁいいぃいぃl、ふぅぅ、はああぁぁ」
悶絶する、女子高生を蹴りつける小学生。
「うるさいなぁ。このおねぇちゃん。ああ、そうだ。おれさぁ、もうそろそろ小5なんだけど。経験ないんだよ。ドーテーなの?かっこ悪いから死ぬ前に相手してよ」
「いあぁぁぁああああ」
お菓子コーナーで小学生が、女子高生に馬乗りになろうとした時。
「笹川ぁ」
「はい?」
笹川と呼ばれたお菓子コーナーのガキが、レジにいる小学生に呼ばれた瞬間
二つ目の発砲音が店内を支配した。
―笹川少年には、目玉のように黒い穴が開いて、そのまま崩れるように倒れた女子高生の上にかぶさった―死体として。即死だった。
「いやぁあぁあぁあ!!!!」
女子高生の悲鳴でやっと現実が受け入れられた。
レジの前のガキが、何の躊躇もなく仲間を殺した!
「何勝手に撃ってんの?たく・・・。
笹川ぁ、人質殺してどうぉすんのさぁ?
上にカラ打ちするつもりだったのに・・・。つっかえねぇなぁ。使えないやついらないんだよ。本当に。
それに、お前がエロイことしてる時間ねぇの。ちゃっちゃとやって、金もらって帰んの。なぁ、やることさっさとやんないとぉ、怒られるのって大人の世界でも同じっしょ?レジの店員さん。ねぇ?」
そう言って、再び銃口を、レジ打ちに押し当てる。銃口はまだ熱を帯び、その熱さと恐怖でレジ打ちの顔が悲壮に歪んだ。
「金」
「わ、わかった。」
レジ打ちは、レジ袋に金を積み込み始める。
その間、ほかのガキは、可笑しそうににやにやしていた。
「やべぇ、笹川ちょうかっこ悪い。童貞のまま死んでやんの。ウケルんですけど?」
「ほんと、だっせぇは。だから童貞なんだよ。シネシネ。もう死んでるけど。」
「残念、笹川童貞少年、享年11歳。志半ばにして死す!」
「なんだよ!それ!あははは!!!やばい!ツボダヨ!お前才能あるわ」
―なんだこれ?
正気の沙汰ではない。狂気―それも、こんなに単純な、純粋な狂気。
コイツラー理解シテナイ。
簡単に仲間を殺して―死んだ中もを笑って―平気な面をしている。
子供の皮をかぶった
ゴミくず―いや、ゴミくず以下・・・・・
『反転』
?かうろだうそてした果―
せ出い思くよ
?ロダルア―
ァァ 紗江の声が聞こえた ァ ァ ァ
ァ ッ ァ 俺はその声の方向に導かれ ァ ァ ァ
類同とらついあも前お―
ヨナルゲ逃ラカ分自―
?うろたっや時のキガ―
ァァッ ァ 紗江が喘いでいた -ァァ ァ
ァァ 艶やかに ァッッ
ァァ ァ 喘ぐ声がした ァァ
ヨセダイ思―
ダズハタッダイ匂ナンコ―
ァァ… 許せなかった ァ ァ ァ
苛められていると思った
助けなくちゃ
ダズハタッダイ匂ナンコ―
ハイ匂ノ血―
『正位置』
レジのガキの声が聞こえる。
レジ打ちの声が聞こえる。
思考がどろどろと溶け出す。
視界がどろどろと溶け出す。
まるで水中にいるかのようだ―だうよのかるいに中の血でるま
世界の音が、轟々と低い音を上げ
その中でぼやけた鈍い会話が交錯されている。
「で、できたぞ。これで全部だ・・・。」
「はぁ?おっさん舐めてんの?何?この超はした金。馬鹿にしてんのぉ?あぁあぁこれだから大人は汚いんだよ。金庫。金庫あるよね?ないはずないんだ。」
「そう言うのは店長が」
「さっさとだせよッ!!!おっさん!死ぬかッ!!!?」
オマエガ―
「おい、高柳。あのガキが店員について、店の奥に入った瞬間動くぞ―?―高柳?お前何言ってる?」
―ッ―ッ――――
ッ―――ッ―
「高柳?」
―オマエガ紗江ヲ
―オマエガ紗江ヲッ!!
―死ネ!
―死ンデシマエッ!!!
―オマエガッ!!!
―オマェガァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッツツツ!!!!!!!!!!!!
「高柳ッ!!!!」
体が、弾けるように動いていた。
小説 愛食家な彼女 34
一方、おれたちのほうにも変化が起きていた。
最近は、俺と紗江、そこに藤本刑事と一緒になることが多くなった。
最近では、張り込みの後、紗江を呼んで三人で食事をとることが多々ある。
俺は、紗江と二人っきりでいたかったが、
二人っきりになれる時に限って紗江も藤本刑事を呼ぼうか?と言ってくるので
俺には選択肢がない。
なんか、二人ともすごく仲がいいし。
紗江と藤本刑事はまるで姉妹であるかのように、ものすごく仲がいい。
聞けば、出会ったのはここ最近という話なのに
もう何年もそうしているかのようだった。
―なお、今も出会った時のエピソードは聞かされていない。
「だから高柳。張り込みの時、車内で弁当は喰うな。車が弁当臭くなる。」
「はい?今更タバコ臭いあの車内で、弁当臭さだけで俺をクーラーも聞いていない外に追い出すって言うんですか?」
「当然だ。先輩の言うことは絶対だ。」
「ケンジ君も沙世さんも仕事の持ち込みは禁止です。私が入れないじゃないですか?」
「なら、薄野が、高柳の過去の恥ずかしい話をしてくれ。大いに興味がある。」
「駄目だ―絶対駄目。お願いだ!勘弁してくれ!」
「ケンジ君はいっつもかっこよかったですよwww。」
「それじゃあ、ダメ。仕事の話はOKってことで。」
「沙世さん、意地悪。」
そんな他愛もない会話を今日もしている。
それが、なんだかとてもこ気味良くなってきたというか。
悪くないと思い始めていた。
◆ ◆ ◆
紗江と別れ、藤本刑事と二人で聞き込みに向かう途中のことだった。
途中で立ち寄った、コンビニでのこと。
気がついたのは―
すぅ
鼻孔をかすかにくすぐる異常な空気の匂い 鉛 火薬
―俺だった・・・・・。
「先輩、注視、入口」
「ん?」
5人くらいの小学生の男の子たちが入ってきていた。
自分でも
まさか―
と、思った。
しかしー
「店員さん。くださ~い」
一人の少年がなにも商品を手に取らず
そういった。
きっと、レジの店員が、ソフトクリームか、から揚げが御所望だと思い・・・
―駄目だ!俺が走り出そうとするところを、藤本刑事がおれの腕を掴んで制止した。
―首を横に振る藤本刑事ーさすが、もうすべてに気づいている。だが、―
・・・・レジ台から、少し体を乗り出して
「何が欲しいですか?」
と、聞いたところー
「金!」
と、笑顔で答えてきた。
その瞬間、少年はレジの店員の額に拳銃を押し付けてきた。
―マチガイない。本物だ。
店内に散らばっていたほかの少年たちも次々と拳銃を取り出し、ほかの客にそれぞれ銃を向ける。
―くそ、こいつら。マスクもつけずにこんなこと・・・・。常識を持て小学生。
そりゃ、学級崩壊もするだろう―だから、ゆとり教育はやめろと言ったのだ。(言ってないけど)
小説 愛食家な彼女 33
一本の白い帯を青空高くまで伸ばしていく煙
俺の嫌いなたばこの臭いはない。
死体のやける臭いだ。
「今度はローストビーフってか?くそ。」
あれから二週間が経過し、事件の状況は新たな展開を見せていた。
「これで4件目か・・・・」
殺人事件は、連続殺人事件へと変化しその狂気性は快を増すごとに悪化していた。
おめでとう、汐なにがし君。君は無実だ。
―と、汐にたいする確定的な証拠もなく
ついに釈放。
と、同時に別件で拘束。
おかえりなさい、汐君。
死体損壊容疑はきえないので―。
だが、それも今更、汐がやったかどうかもあやしい。
なにしろ、死体損壊は、その後の事件にも引き継がれているのだ。
相も変わらず、心臓を一突きされた良すぎる手際。
そして、死体の肉が切り取られていること。
その上で、君の悪いことが起こっていた。
第二の事件で、食塩と胡椒の粒が現場の地面から採取される。
第三の事件、ケチャップ、マヨネーズ、ビネガー。
そして、今回の事件。
第四の事件、バター、食塩、胡椒、そして、死体はこんがりと・・・・・
―こんがりと焼かれていた。
焼死体の匂いは、普通のしたいとはまた違った匂いがする。
編成したたんぱく質が、その焼き切れない内側の生の肉の腐食とあわせて
蛆のたかり具合もすごいのだ。
筋肉はほとんど収縮してしまって
まるで、胎児のように手足を曲げ、丸まる様にそこにある。
あとから、葬儀屋さんが、腱を切ってまっすぐに戻す作業をするのが可哀そうで仕方ない。
いや、その前に今回は解剖行きか・・・・・。
鑑識が作業する横で
俺は息を吸った。
残留する残り香は
やはり
『大好き』
何故、大好きな人間にここまでのことができるのだろうか?
理解に苦しむ。
「おい、高柳。」
警部殿が俺を呼びつける。
「はい。なんでしょう?」
「被疑者の張り込みにぬかりはないんだな?」
「ええ、ここ最近。目を離したことはありません」
「本当だな?」
「本当です。」
「本当だな?」
・・・・・なんで、二度も聞くんだ。本当以外のこと言ってどうするんだ。
「ええ」
「ふんっ・・・、張り込みは止めだ。
帰って捜査会議。いいな?」