コロナショック以降、世界の穀物生産は生産が需要に追い付いていません。そして今年度も、必要量に生産が届きそうにありません。まだ、あまりニュースになっていませんが、この傾向が続いた中で、何らか大不作となる事象が起これば、一気に相場の主テーマになるでしょう。
日本でも小麦など値上がりし騒ぎになっていますが、不足するとなれば危機感は一段と増します。とくに日本にとってアキレス腱と言われる穀物需給。足りなくなれば日本への輸出を止められる可能性があるのですから。
穀物生産の状況&考え得るリスク
2022-2023年(今年度)の穀物生産は27.38億トン。一方で消費見通しは27.63億トンとなり、約2500万トンも足りません。現在7.87億トンの穀物在庫がありますから、これを切り崩しています。穀物在庫は、人類が4カ月生き延びる程度しかありません。
現時点では大丈夫ですが、もし近い将来に異常気象等で収穫激減があるケースも考えられます。少なくとも、ウクライナの戦場は黒土(チェムノーゼム)と呼ばれる穀倉地帯で行われ、今年の生産は減るでしょう。仮に収穫できても、ウクライナから輸出できるかも分かりません。
2022年夏を覚えているでしょうか?
2022年夏、西ヨーロッパの穀倉地帯でライン川が渇水。ぶどう、大麦など生産量が落ちた
2022年夏、中国・長江が渇水。中国南部は穀物生産の中心地で、米生産に影響がでたとされる。2021年夏には、逆に大雨によって田が冠水してしまい中国はコメ不足になった。
ウクライナは、農地が戦場になっただけでなく、農機は壊され、男手は戦場に奪われました。土壌には地雷や不発弾もあります。
【ウクライナの穀物生産量】※ロイターによる報道を基に作成
2021年 8600万トン
2022年 5000万トン弱
2023年 3500-4000万トン(推計)
冒頭の生産予測に、ウクライナ情勢がどのくらい織り込まれているのか不明ですが、さらに食糧事情が悪化する可能性あるでしょう。戦争の行方は分かりませんので、収穫量の判断もブレます。
食糧インフレが次の金融危機の要因かも知れない!
2022年夏から、アメリカなどのインフレ率は下落傾向にあります。それに伴い、FRBは利上げを止める方向へ向かいつつあります。2023年5月FOMCで最後となるかも知れません。これはコロナショックを始点とするインフレに対する利上げの最期という意味です。
しかし、2023年夏に干ばつ、水害、猛暑、冷夏、地政学リスク等を理由に、大きく穀物生産が落ちれば、食糧不足を意識した買い付け騒動に発展する恐れはあるでしょう。人類は2018年頃から穀物在庫を食い潰しにかかっています。ゆえに食糧不足がテーマになれば、買い付け騒動により価格高騰する展開はあり得るシナリオです。
パニックが生じ、穀物価格が高騰すれば影響は多岐にわたります。
まず生活水準が一気に苦しくなります。畜産業など穀物を使用する産業も影響するため、肉類や乳酸品も高騰が確実です。これらから影響が派生していき、最終的に私たちが想像もできないような金融危機に発展する可能性も考えられます。
実際、コロナショックが起こった時にも、ショックの2週間前までコロナの存在も知らない人々は多かったのです。武漢で感染症が見つかったニュースを見ても、ああなると想像できた人は決して多くないでしょう。
そういう意味で、危機管理として食糧リスクは考えておくべきです。
冒頭の図にもある通り、穀物の在庫率は28.1%しかありません。
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