「サムシング・ロッテン!」 | First Chance to See...

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 2ヶ月くらい前のこと。地下鉄の駅構内をぼんやり歩いていて、ブロードウェイ・ミュージカル「サムシング・ロッテン!」の広告が目に飛び込んできた。トニー賞授賞式でその一部が上演されたのを観た時から「これは絶対おもしろいだろうなあ」「でも日本じゃ絶対上演されないだろうなあ」と思っていたのに、日本人キャストが日本語版で上演するの?! っていうか、何で私、そのことを今まで全く知らなかったの?!

 

 

 帰宅して慌ててチケットをネット購入。贔屓の役者さんを近くで観たいというより広い視野で舞台全体を観たいので、敢えて3階の最前列を選ぶ。まだ完売になってなくて本当に良かった。

 

 そして昨夜、有楽町の国際フォーラムCホールに行ってきたのだが。

 

 時はルネサンス、場所はロンドン。シェイクスピアが劇作家として大人気を博している一方で、売れない劇作家であるニックとナイジェルのボトム兄弟は、準備していた新作をスポンサーから不意に却下されて窮地に陥る。却下の理由は、何と、彼らが温めていた「リチャード二世」をネタにした芝居を、シェイクスピアが次回作として書くことになったから。ニックが「リチャード三世の芝居を書いた後に、順番を遡ってリチャード二世の芝居を描くって何だよ!」と憤っても、スポンサーの意向は変わらない。翌日の朝までに新しいアイディアを用意しなければ、スポンサーを降りるという。追い詰められたニックは、予知能力があるというノストラダムス(正確には有名な預言者ノストラダムスの甥のノストラダムス)に金を払い、「シェイクスピアがこれから書く最大のヒット作」を予言してもらってそれを自分の新作として発表する(つまりパクる)という手段に出る。が、このノストラダムス、未来を幻視する能力はあるのだがどうにも中途半端で、シェイクスピアの最大のヒット作「ハムレット」を「オムレット」と読み違えた上、未来で流行するのは「芝居に歌と踊りを混ぜ込んだミュージカルだ!」と、次から次へと大ヒットミュージカルの情報の断片をニックに伝えたものだから、それらを鵜呑みにしたニックは革新的な朝ごはんミュージカル「オムレット」の製作に乗り出すことに……。

 

 いやあ、笑った笑った、口角が痛くなるくらい笑った。シェイクスピアとミュージカルへのオマージュがてんこ盛りな上に、日本語版独自のアレンジとして日本人キャストのネタ(宝塚とか帝国劇場とか劇団☆新感線とか)までぶち込まれていて、秒単位の油断もできない感じ。しかし、熱烈なファンが多いであろう1階席はともかく、3階席でここまで大笑いしている観客は周りにあまりいなくて、やっぱり日本の観客には通じにくいネタなのかしら、と少々寂しい思いもした。日本語で上演してくれたおかげで元ネタを根こそぎ理解できるというありがたさは他に代え難いものがあるけれど、ブロードウェイで元ネタをがっつり理解した上で大爆笑する観客に囲まれながらこの舞台を観られたら、それはそれでさぞ楽しかっただろうなあ。