その施設には独特の雰囲気を持つ私より1回り程年上のオジンがおり、そのオジンが私の事を危険視していると言いますか信用していない感じがありありでムカついていました。


あぁ~いつもの強そうな奴にビビってるのを悟られたくないから妙に斜に構えて虚勢張ってるやつですね。やれやれですよ。


位に思っていたのですが、ある日ごっつい子が暴れだした時に、そのオジンが力技でなくフワっとした感じであっという間に押さえ込んでしまいました。あまりにも殺気なく現れて「どうしたのぉ~?」から一瞬だったので暴れていた本人も一瞬呆気にとられていました。


しかも押さえられながらもまだまだ暴れまくるその子を制しながらも、とっても申し訳なさそうに「ごめんねぇ~ごめんねぇ~」と謝っていました。


その姿を見て愕然としちゃいました、私は暴れる彼らが恐くて恐くて、そして同僚を殺す勢いで攻撃する彼らに腹立って仕方なかったです。


恐怖と怒りに囚われていた自分と施設利用者さんへの愛に溢れたオジン。人としての度量の違いに情けなさを感じました。


しかも相手の単純な戦闘力を計る上で、ちょっとイカツイとかガタイが良いとかでしか見れず、ヨレヨレのトレーナーを着たそのオジンが自分よりも強いなんて思ってもみなかったのも意識の居着きですよね。


そして随分と後になってから理解できましたが、私の恐怖と怒りが彼らを余計に不安定にさせていたんですよね。


これはここだけの話で無く自分の生き方にも関わる話で、振り返ってみれば今までの数々の人間関係でのトラブルもこれが起因している部分が多かったと思います。


私も単純お馬鹿な解りやすい人間なもので、そこからはそのオジン、いやその方の話を素直に聞く姿勢になりました。その方は若い頃から色々な格闘技を学び行き着いたのが中国武術との事でした。


正直言って私は中国武術に対して紛い物という認識が強かったのですが、その後も目の前で凄さを目の当たりにしたので信じざるを得なかったですね。


とは言え、中国武術を謳う方々には紛い物が多いのも事実で、その中に少数正真正銘の本物がいます。


その方が特に影響を受けたのが「蘇東成」先生で現在は日本におられないようですが直接指導を受けていたそうです。実際に指導を受けた際には腕に刃物傷等が多数あり何も語らずとも感じる凄味があったそうです。


 

 

 

 

 

 

 

 


YouTubeでも検索していただいたら動画がありますが、掴むのではなくて手のひらで引っ掛けるようにしながら巻き込むように倒す形はまさに私が施設で見たのと同じですね。


その方にお話を聞いたり指導を受けながら3年が経つ頃には、私が特に関わった子でしたら不安定になり暴れそうになっても、駆けつけると落ち着きを取り戻してくれるようになりました。それは技術的な部分もよりも、彼等との関わり合いの中で私自身が少しだけ優しくになれた事、彼等と素直な気持ちを持って心で向き合えた事が大きいと思います。




随分と話が回り道してしまいましたが、不審者対応について生き死にの緊迫感の中で行動する事の難しさを伝える為にもここまでをお話した方が説得力があるかなと思いまして回り道になってしまいました。すいません。



今回のハロウィーンでの事件については、やはり早めに状況を認識した上で逃げるのが上策だと思いますが、追いかけてきて対応せざるをえなかったり、家族など守るべき対象が居るので対応せざるをえない場合においては、


自分であればこの季節は上着を着ているので上着を脱いで左腕に巻き付けてナイフをはらう事と刺すのであれば、まず胴体を狙ってくると思うので、そのガードと殺虫スプレーに対応するのを基本としながらも、いつも鍵の束をカラビナに通してベルトループにぶら下げているのですが、その中に袋に入れて一緒に吊っている 「クボタン」


 

 

 

 

 

 


を使って眼鏡か喉を攻撃するタイミングをはかりながら、ナイフを持っているとは言え基本は素人なので刺してやろうと前足荷重になったその足の膝に低い横蹴りを入れるタイミングも同時に狙うと思います。


人間の頭骨はかなり硬いので、例え空手をやっていて素手での攻防に慣れていたとしても、拳がこめかみより上に当たってしまった場合にはこちらの方がダメージを喰らう恐れがあるので、ただのアルミやカーボンの短い棒とは言え、クボタンのような物を使う事でかなり有利になります。


またクボタンは押さえ込んだ時にも首や脇腹を先で圧迫するように使う事で制し続け易くなります。


そして携帯している時に万が一職務質問にあったとしてもツボ押し用途として携帯していると説明できます。まぁただのボールペン位の長さの棒でしかないので大丈夫ですけどね。


あと蹴りを狙っていけるのは普段からケブラーを編み込んでいる厚手のジーンズを履いているので多少刃物が当たったとしても致命傷には至りにくいので蹴れるというのもありますね。


また、その際に電車が揺れるようでしたら、自分が手すりをつかみながら戦える有利なポジション取りをするのも生き死にを分けるポイントかと思います。


勿論、これらを咄嗟かつ冷静に判断する事ができる訳も無いので、こうやって想定しておく事が必要だと思います。


蘇東成先生が仰られていたのですが、日本人は平和ボケしている。台湾であれば例えば屋台で呑んでいる最中に喧嘩になれば、日本人のように胸ぐらの掴み合いなんて生易しい事ではなく、その場にある鍋料理を躊躇なく相手にかけるだろうと。


そんな事が普通に起こってしまう社会の是非は別として、電車という密室内での事件が立て続けに起こってしまう現在の日本では我々ももっと護身について考えた方が良いタイミングなのではないかと思います。


まぁそんな事を考えて離れた距離からの低く素早い横蹴りを練習している私も端から見たら充分不審者に見えてるのかな・・・




私自身はあの日々の経験から大概の事では動じなくなってしまいましたが、今になって思うのは、あの危険な状態で武道という武器がある私よりも、それら武器が無いながらもあそこで働いていたその他の方々の方が人として強いのかもしれないなと思います。


たぶんそれが人としての本当の強さなのかもしれなせんが、その本当の強さでは先日の狂ったジョーカーを止める事ができないのも事実であると言うことは忘れてはいけないですね。