こんにちは。HCAP東京大学運営委員会の吉川です。
カンファレンス4日目、女川町訪問の後半部分について報告させていただきます。
この日は前日とうってかわって天気に恵まれた一日でした。
居心地の良いトレーラーハウス型宿泊施設「エル・ファロ」でしっかり休息を取ったメンバー24名は、まずかまぼこ工場の「高政」を訪れました。
高政では、4代目当主の高橋様に震災当時の経験をビデオ映像も交えてお話いただきました。高政は、震災直後に工場の中に残っていた全てのかまぼこと水を、避難所に配りました。さらにその後も、製造ラインを早急に復旧させ、かまぼこを無料で配布し続けました。そういった調子で、震災直後の様子を淡々と語るお話の裏に、工場としての、個人としての、女川町への思いを感じ取ることができました。また、このとき同時に行政で把握しきれていなかった避難所の人数調査なども行ったというお話があり、いざというときに自分の役目を考えることの重要性を私は考えました。
工場と販売店舗を併設する高政では、お話の後に実際のかまぼこ製造ラインを見学し、かまぼこの手焼き体験を行いました。新鮮なかまぼこを味わったメンバーは、列を作って沢山のお土産を購入していました。
かまぼこ工場を出発した一同は、次に女川湾のクルージングを体験しました。普段は女川町と近くの島を結ぶ定期船として利用されている船に乗り、また違った角度から女川町を眺めました。漁業を生業とする方々にとって、船は命の次に大切なもので、震災が起こり津波の危険があると分かっていながらも、船を逃がすため海に向かった方々がいるとのことでした。また、大きな船では逆に津波の来る沖へと向かうという、私たちが想像もしなかったお話を聞くこととなりました。
ウミネコが沢山飛んでいました。震災当時、ウミネコも全くいなくなったそうですが、今は沢山のウミネコが戻ってきて、船に乗っている私たちを追いかけました。沿岸部には倒壊した建物も残り、家の基盤の撤去も、地盤の沈下に対する工事もまだまだ年数が必要とのことでしたが、こうして自然は少しずつ戻ってきているのかも知れません。
お昼ご飯に新鮮な魚介をふんだんに使った「おかせい」の女川丼を食べたあと、カンファレンス最初のディスカッションの時間を設けました。震災について、当時の自分は何をしていたか、東北にどんなイメージを持っていたか、女川町に来て、見て、話を聞いて、何を感じたかなど、皆自分の思いを述べました。
そして女川訪問の集大成として、複数の班に分かれムービー・コンペティションを行いました。言葉では表せないくらいお世話になった女川町に対して何かしたいという思いから、女川町の魅力を伝えるCMを各班作りました。女川町を訪れたハーバード生・東大生が、自分たちの経験を身近な人に伝える、ほんとうに微力ではありますが、外から人が来ることが町に元気を与えるというお話を聞き、女川町の方々にご迷惑をおかけしない形で、復興に少しでも貢献できればという思いがありました。
ムービーのURL等は、各関係者に許可を取り次第、また公開させてください。
夜は、音楽イベントを主催し女川町を盛り上げている地元の若者集団「福幸丸」の方々と夕食をともにしました。被災地訪問というと、「被災者」対「外部の人」という構造を中々抜け出す事が出来ません。今回の訪問も例に漏れず、しかもメンバーの半数は外国アメリカからの訪問者です。しかし、この夕食会では、少しはフランクに同じ立場で話が出来たかもしれません。
小さい町である女川町は、地元の方々の結束力が強く、復興が早いある意味特異な地域と聞いています。また、それゆえ外部の人の訪問にすごくオープンで、私たちも被災地に訪れていることをしばしば忘れてしまうくらい各企画を楽しみました。
東日本大震災や東北という言葉は多くのものを含んでいます。女川町がその全てを表しているわけではありません。震災を忘れないというとき、私たちは何を思うのでしょうか。
ここに今回の女川町訪問の意義があるのではないかと私は個人の意見として考えています。東北という漠然とした地域に思いを馳せるより、女川町のあの方、あのお店、あの場所、というつながりが出来るとそこには血が通います。
私は(下見も含めて)2回女川町を訪れ、予想していなかったくらい多くの方のご好意に触れ、空気を感じ、美味しい魚介を食べ、女川町が好きになりました。必ずまた訪れます。震災復興は、年々町の様子を変えるといいます。変化する女川町を見るのが、私は楽しみです。
他の日の活動報告に比べ、些か主観的な文章になってしまいました。震災に対して本腰を入れて活動を行っている訳でもなく、説得力の伴わない美辞麗句かもしれません。HCAPの東京カンファレンスを経験した一メンバーの感想として読んでいただければ幸いです。
末筆になりましたが、この度お世話になった女川町の方々(もちろんそんな「方々」は存在するはずはなく、今一人一人の顔を思い浮かべて書いています)には、ほんとうに感謝の念が絶えません。学生のワガママに付き合っていただき有難うございました。また必ず遊びに行きます。
この日は「エル・ファロ」でもう一泊し、次の日の群馬県大泉町訪問に備えました。
吉川慶彦