HCAP6期の柿沼です。山本に引き続き、12日の活動について報告させていただきたく思います。
12日の午後は新幹線で一路京都へと向かいました。
京都といって一般に思い浮かべる観光は明日へおあずけで、今日は自分が企画担当者を務めさせていただいた、「ATR研究所訪問企画」のため、京都でもやや外れの法にある関西文科学術研究都市へ。
ATR研究所というと初耳の方もいらっしゃるかと思いますが、こちらの研究所のフェローのお一人としてロボット研究を行われている石黒浩教授のお名前は、耳にされたことのある方が多いと思います。
石黒教授は実在の人間に酷似した遠隔操作ロボットGeminoid、特に教授ご自身にそっくりのアンドロイドの製作を通じ、人間や心の存在の本質といった哲学的課題に取り組まれている、日本を代表する研究者のお一人です。
日米は共にロボット大国として知られていますが、米国が軍事技術中心に開発が進められていることに対し、日本では人型ロボットや、ペット型ロボットなど、人とのコミュニケーションを主眼に置いた、「如何に人と関わるか」「如何に人に近づけるか」をテーマに開発されるロボットが多いのが特徴といえるでしょう。
そうしたロボットの中でも、特に日本独自で興味深いと言える、実在の人間そっくりのGeminoidと、テレビ電話のように操作者の存在感を遠隔地に伝えるロボットTelenoidを見学し、その開発者である石黒浩教授にお話を伺うことで、ロボット技術が発達し、「人」と「人ならざるもの」の境界が曖昧になってゆくことへの是非を考えようというのが、今回の企画の意図でした。企画提案者の私自身は中学生のときから石黒教授のご研究に興味を持っていたのですが、何分しがない一中学生だったもので、中々直接研究所ご見学に伺うというわけにもいかなかったため、この度の企画は前々から、自主的に勉強会を企画したり、脳内でハーバード生の驚く顔を想像したりと、自分の中でかなりの比重の置かれていた企画でした。
研究所では、Geminoid・Telenoidの見学・質疑応答だけでなく、実際にロボットを操作し、モニターを通じて人と交流する体験もでき、参加学生全員がその奇妙な感覚に驚きつつも楽しんでいました。また、石黒教授ご本人はもちろん、他の研究者の方や、研究学生の方々とお話する機会もあり、特に理系学問を専攻する学生にとっては研究者としての歩みを考える機会にもなりました。
自分自身は、Geminoidの見学時に、他の見学者の方が「ロボットは学ぶことができるか」と質問し石黒教授が「Yes」とお答えしたのに便乗し、「しかしGeminoidが学んだら、本来相似体だったモデルとロボット間のGAPが広がり、自己のコピーが自己と乖離し、私でありながら私ではない存在が出来上がってしまうのではないか」という趣旨の質問をさせていただいたところ、「そうした哲学的な問いは重要だ。しかし私自身はそのGAPを問題とはしない。Geminoidは兄弟のようなものだから。」とのご回答をいただきました。
今回の研究所見学は「ロボット=人が何かを生産するため、又は行動を代替するために使う機会」という一般概念を再構築する機会となりました。人と似ているのに人ではない、その「居心地の悪さ」は、今回のカンファレンスのテーマであるTechnology&Social JusticeのJusticeを考える上でも重要な感情だと思います。
夜には京都駅で各々小グループで京ごはんを堪能。私のグループは天ぷらを食べたのですが、店員さんが、一品ずつ揚げ、揚げたてを席まで持ってきてくれる日本スタイルに、ハーバード生も感動しきりでした。
こうして日本の文化を伝統・最先端技術両面から紹介し、共に海外の学生に新鮮な体験をしてもらえたことは、日本の学生としても非常に嬉しく思うとともに、日本も観光分野含めまだまだ国際社会でやっていけるのではないかとの自信も持つことができました。