区分所有法制研究会の検討内容(3) | セミリタイアを目指すサラリーマン大家 マンション管理のお勉強

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令和3年3月から令和4年9月にかけて「区分所有法制研究会」において、法律専門家、都市工学者等のほか、実務・実態的な側面からマンション関係団体、法務省、国土交通省等も参加して、決議要件の緩和、所有者不明の課題等、広範な検討が行われ、報告書がとりまとめられました。検討会で行われていた議論内容も参考になるかと思い、資料を参照し、気になった点をメモ書きしましています。今回は令和3年6月24日の第3回の検討内容についてです。

■第3回(令和3年6月24日開催)
https://www.kinzai.or.jp/legalization_manshon.html

(1)マンションの建替えに向けた合意形成と管理について
1)マンションの建替えがむずかしい理由
2)住民の合意形成をむずかしくしている事情
3)合意形成のために、管理組合活動の中で心がけた方が良いと思われること


(1)マンションの建替えに向けた合意形成と管理について

1)マンションの建替えがむずかしい理由

・既存不適格で容積率縮小が求められるケースもある。
・地区計画作成などで、良好な環境とする条件で容積率を割り増しする制度もあるにはあるが。
・経済状況が変動(バブル崩壊、リーマンショックなど)して事業採算性の見込みが変わってくることがある。(長期間かかっているうちに状況が変わり、事業協力者が撤退してしまうケースもある。)

・区分所有法の建替え決議の要件では、議決権の数だけでなく区分所有者の数についても5分の4や3分の2の要件が求められている。このため、他の区分所有権を取得して集約をしていくと、面積は多く持っていても所有者数としては1になってしまうことになり、集約が不利に働いて進まなくなることが考えられる。

2)住民の合意形成をむずかしくしている事情

●高齢者に多く見られる事情
・新たな収入のない高齢者にとって、まとまった資金を用意するのは難しい。(お金の問題を直接的理由として示さないで反対するケースも多い) ~借入れ策等を最初からセットで提案しないと、「反対」と言われてしまう。
・自己資金を調達するのが難しく、建替えに参加できない高齢者の居住の安定を図る観点から、建替え後のマンションに賃借人として入居できるような仕組みができないか、という声が建替えを検討している現場ででることがある、とのこと。

●所有者不明などのケース
・登記義務がないため、区分所有者の特定に多大な労力と時間がかかっている。(今回の法改正で、今後変わっていくことを期待。)

●その他、法律上の課題
・被災マンションの取り壊し決議は5分の4だが、実際の現場では全員合意が求められることがある。(地方自治体から全員の承諾書の添付を求められる。)
・管理組合(法人)が住戸の所有者となって住戸の賃貸事業をすることができない。(やってしまっている組合もあるらしいです。)

●その他、諸々の要因
・専有部分を1000万円近くかけてリノベーションして入居した人もいる。
→建て替えに反対しがち
*最後まで反対という人は、後から入居した人というケースも少なくないと聞く。
(多額の投資をしてしまっている。この人にお金で提案しようとしたら、却ってこじれてしまったケースもあると聞く。)
・条件が比較的良い立地だと、賃貸化が進む→老朽化していても賃料はとれるので、却って建て替えに消極的になりやすいこともある。(今のままで十分、今の家賃収入が入らないと困る、という考え。)

3)合意形成のために、管理組合活動の中で心がけた方が良いと思われること

・人間くさい要素を排除して論理性合理性だけで推し進めようとすると、こじれてしまうことがある。
・不合理を感じた人は、勝ち目が少なくても裁判を起こしたりして徹底的に戦おうとする傾向がある。そういう人を作らないことがまず大切。