このブログはインフレーション理論を提唱した佐藤勝彦先生の著述から多くを引用しています。
■ビッグバーンの問題点(その1)
この宇宙はビッグバーンから始まったと言われている。ところが、原理的な問題があります。今の膨張している宇宙から推測すると、宇宙の始まりは無限大のエネルギーを持った理論的にも解けない特異点になってしまうことです。又ビッグバーン理論は何故火の玉になったのかの説明がされていません。さらにこれだけ大きな宇宙が平坦に膨張することは非常に困難なことだと言われている。また曲率が正だと重力により押しつぶされ生命が生まれることができない短命宇宙になる。逆に曲率が負だとガスが一様に薄くなり、天体を形成することができない。現宇宙のように曲率をゼロにするためには、量子的なユラギもあるため、ビッグバーンだけでは説明が極めて困難なことである。
又星が誕生するほどのユラギはビッグバーンでは生じにくい等から、ビッグバンの前に空間を瞬時に膨張させるインフレーションという現象があったと考えられるようになりました。
■ビッグバーンの問題点(その2:モノポール問題)
モノポール問題とは、モノポール(磁気単極子)というものが理論上、宇宙の中にたくさんできることになってしまうという問題です。このことは、つまるところ力の統一理論から導かれる宇宙像と、現実の観測によって正しいとされているビッグバン理論が描く宇宙像とが矛盾してしまうことを意味しているのです。これでは、ビッグバン理論がつぶれるか、力の統一理論がつぶれるかのどちらかになってしまいました。
実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです。
そのようなはるか遠くの宇宙に押しやられたモノポールが、われわれの知りえる宇宙の中にないのは、当然ということになります。つまり、存在はしていても観測できないという矛盾が解決されるのです。