<艶が~る、二次小説>
古高俊太郎様、花エンド後の話も、もう12話目です
あれから3人はどうなったのか相変わらずの駄文ではありますが…良かったら、また覗いていって下さいませ
※俊太郎様の花エンドや、秋斉さんの本編を攻略されていない方には、多少ネタバレになりますので、ご注意下さい!
【第11話のあらすじ】
俊太郎を見送った主人公は、秋斉の待つ駐車場へと急ぐ。そこで二人は偶然にも、慶喜に良く似た男性を目撃することに…。
現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…少しでも、俊太郎様を感じて貰えたら嬉しいです…。
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【古高俊太郎~花end後~】第12話
前を走っていた車に追いつくと、秋斉さんが静かに口を開いた。
「昨晩、少しずつではあるが、俊太郎はんと共に幕末時代の記憶を取り戻し始めてな」
「……秋斉さん」
「せやけど、まだどこか半信半疑なんや。あまりにも非現実的過ぎるやろ?」
「そうですよね…」
チラリとその横顔を見つめて、また前方の車に視線を戻す。
秋斉さんも前方を見つめたまま、意識だけを私に向けて。
「俊太郎はんが、あの古高俊太郎の生まれ変わりやゆうことと、共通の記憶。そして、○○はんの存在がその証やさかい…信じざるおえないんやけどな」
「どこまで思い出したんですか?」
「断片的やけど、藍屋の楼主として勤める自分と…それと、」
……その時だった。
前の車が自動精算機の前で止まり、運転席からさっきの男性が少し乗り出すように顔を出した。
「……ほんまに似とるな」
「そ、そうですね…」
横顔がチラッと見えただけだったが、私達はその横顔に釘付けになっていた。
やがて、精算を済ませたその車は少しスピードを上げて走り出す。
「あ、行っちゃう…」
「……………」
私の呟きに答えるかのように、秋斉さんは急いで精算を済ませ見えなくなった車を追いかけるようにスピードを上げた。
「あ、秋斉さん!あそこに…」
「ああ…」
駐車場を出て間もなく。偶然にも、私達が向かおうとしていた方の道路で、あの車が赤信号に捉っているのを見つけた。
間に二台の車を挟んでいるが、その車を追いかけるような形になって。ちょっとした探偵気分に、胸がドキドキとし始める。
「やっぱ、気になっちゃいますね…」
「せやな…」
「俊太郎さんや秋斉さんのように、もしもあの人が慶喜さんの生まれ変わりだったとしたら…」
「………………」
前方を見つめたまま、秋斉さんは小さく溜息をついた。
その横顔は、ほんの少し憂いの色を浮かべているように見える。
(そういえば、あの頃も…)
秋斉さんは気が付いていないようだったけれど、置屋を訪れた慶喜さんを見送った後。小さく溜息をついていたことが何度かあった。
私は、そんな秋斉さんの少し憂いを宿したような瞳がどんな意味を持っていたのか、とても気になっていたのだった。
「あの、良かったらさっきの続きを聞かせて下さい」
秋斉さんは、私をチラッと見やりまたすぐに前方へ視線を戻して静かに口を開く。
「……俺は、幕府の下に就き、その立場を全うする為に命を懸けとったようや」
「幕府の?」
「その為に、藍屋の楼主になった」
(幕府を守っていた?その為に、楼主に??)
「どういうことですか?」
私の問いかけに、秋斉さんは眉を顰めながら。
「……十五代将軍となった慶喜はんを守り抜く為」
「慶喜さんを守る為……?」
「その為には手段を選ばんかった。いや、選んでいる暇がなかったゆうほうが正しいな」
……第十五代将軍・徳川慶喜。
私には、一橋慶喜と名乗っていた。
彼がケイキと親しく呼ばれていたことなど知らなかった私は、あの徳川慶喜のことだとは夢にも思っていなくて……
揚屋だけではなく、置屋の秋斉さんの部屋へ訪れていたのはそういうことだったのかと、初めて知ったのだった。
「十四代将軍・家茂様の代には、守護職などの任に就き。新選組と共に京の町を守るべく身を粉にして働いとった。俺は、あんお人を支える役目を担っていたんや」
「だからだったんですね。翔太くんから教えて貰うまでは、ずっと疑問に思っていたんです。偉い人なんだろうなってことは認識していたのですが…」
言いながら意識を前方に向けると、前を走っていた二台の車がいなくなっていて、いつの間にかあの車の後ろについていた。
時々、黒い影となって見える二人の腕や横顔を見やる。
「慶喜さんだったらいいのに…」
「どうして、そないに思うんや?」
「現代に戻って来てからも、ずっと気になって…」
残して来てしまった俊太郎さまだけではなく、私がお世話になった方々があの後、どうなったのか知りたかった。
だから、秋斉さんとの出会いも同様に嬉しくて。
「もう、二度と会えないと思っていた俊太郎さまの生まれ変わりである俊太郎さんと出会い、その上、とてもお世話になっていた、秋斉さんとも再び出会うことが出来た…」
「…………」
「皆さんが、あの激動の幕末時代をどのように生き抜いたのかとても心配だったから…」
今まで想ってきたことを話すと、不意にあの懐かしい手の平の温もりが甦った。
「よう、俺の胸で泣いとったな…」
「秋斉さん……」
「あんさんは頑張り過ぎてしまうところがあったし。頑固なわりに泣き虫で、誰かさん同様、放っておけんようになってな」
優しく後ろ髪を撫でるその温もりは、あの頃と同じ。
何か失敗したりする度に、秋斉さんは私を励ましてくれて…。
『こんだけの器量や、もっと自分に自信を持ちぃ。それと、我慢したらあきまへんえ…泣きたい時は、泣いてもええんやから』
さ、おいで。
そう言って、優しく微笑む秋斉さんの温かい胸に甘えたこともあった。
その腕の中は、例えようもないくらい安らげて。
そっと、私の背中を押してくれて。
幕末時代で一人。孤独を感じていた私の全てを受け入れてくれた、唯一の味方のような…。
「秋斉さんには、特に迷惑をかけてしまいましたよね…」
「迷惑とは思うてなかったけどな」
「えっ?」
「楼主として当たり前のことをしたまでやから…」
私の後ろ髪を優しく梳いていた指先が、再びハンドルに戻ったその時。
前の車が突然、車線を変えて車道パーキングへ横づけした。
「あっ…」
そう呟くと同時に、秋斉さんも二台先のパーキングに横づけし、車を降りる彼らを見やる。
二人は、そこからほんの少し離れた立派な建物に入って行った。
「あそこは確か、大手芸能事務所だったような…」
「芸能事務所?」
「はい、テレビで何度か観たことあったから。名前が浮かばないんですけど…とにかく行ってみましょう!」
私達は、いったん車を降りて彼らが入って行った建物の前で立ち止まり、
「やっぱりこの建物は…多分、間違いない…はず。ということは、芸能人ってことでしょうか?」
「……そうなるんとちゃうやろうか?あるいは、関係者か」
「……ですよね。えーと、事務所の名前は…中に入らないと分からないみたいですね」
「……………」
しばらくその建物を見上げ、場所を確認するかのように周りを見回して。秋斉さんは、また溜息をつきながら腕時計を見やった。
「もう、こない時間や。急がな…」
「え、でも…」
「また、縁があれば会えるやろう。さっきの男が、あいつなら…」
「…そうかもしれませんね」
二人の行方が気になりつつも、車に乗り込んだ私達は名残惜しげにその場を後にしたのだった。
そして、走り出した車の中ではまた、お互いの話に耳を傾け合っていた。
「偶然見つけた古道具屋さんに入ったことで、私と翔太くんの運命が大きく変わってしまったんです」
ひょんなことから、幕末時代へタイムスリップしてしまったことから始まって、俊太郎さまとの別れの後、翔太くんと一緒に現代へ戻って来たこと。
そして、俊太郎さんと出会い、現代の秋斉さんと出会うまでの経緯を簡潔に話した。
秋斉さんは、その大半を俊太郎さんから聞いていたようだけれど、改めて私の言葉に驚いているようだった。
「この時代に生きる意味でもあるんやろうか?」
「何となくですけど、私もそれは思っていました…」
俊太郎さんも、秋斉さんも。
同じ時代を選び、お互いにその想い人を探していた。
「今は、分からないけれど…きっと、いつか分かる日が来るんじゃないかと」
「……そうかもしれへんね」
柔和な微笑みを浮かべる秋斉さんに頷いて、微笑み返す。
この時、私は夢のようなことを考えていた。
あの時代で関わった、全ての人達と再会出来たらいいのに…と。
その後、順調に走って来られたおかげで、なんとか9時前に辿り着くことが出来た。
秋斉さんはふぅ~と、小さな息を漏らしながら…
「途中、寄り道してしもうたからどうなるかと思ったが」
「秋斉さん、今日もお付き合い下さってありがとうございました」
「いや、これぐらい当たり前や。あんさんは、俊太郎はん許嫁いいなずけ(いいなずけ)やし」
「い、許嫁っ……」
その、許嫁という言葉を聞いて、瞬時に耳まで真っ赤になっていくのが分かる…。
「俊太郎はんは、そないゆうてはったけど」
「私も、そのつもりです!でも、まだ先になるかと…」
「そうか…」
秋斉さんは、少し伏し目がちな視線で呟くと、「もうじき9時になる」と、言って私に家に戻るように促した。
「あの、お店がオープンしたらメール下さい!友達と遊びに行きますから」
そう言って、私は携帯を取り出すと、秋斉さんはハンドル脇に設置されている携帯を片手に操作し始め、
「こちらが受信でええやろうか?」
「あ、はい!じゃ、送信しますね」
無事に交換が終ると、秋斉さんはまた微笑みながら。
「ぎょうさん連れて来ておくれやす」と、言った。
私は、元気よく頷いて車を降りて。
「じゃ、また!帰り道、気を付けて下さいね」
「ああ」
ドアを閉めて、見送ろうとしたその時。
助手席の窓が開いてすぐ、早く家に戻るように促される。
「あんさんが家に戻るのを見届けんと…」
「え、あ…分かりました」
そう言って慌てて玄関へと急いで、その前でお辞儀をして家の中へ入ると、それから間もなくして車が走り去る音がした。
「本当にありがとうございました」
ドア越しにそう呟いて、振り返るとお母さんのにんまりとした視線と目が合う。
「うわっ…びっくりした…」
「お帰りなさい」
「ただいま…」
マッタリと靴を脱いでいると、「で、どうだったの?」と、尋ねられた。
「楽しかったよ!とっても」
「そう、彼はもう帰っちゃったの?」
私は、今日一日の出来事や、洋服の中に隠れてしまっていたイルカのペンダントを取り出して、プレゼントして貰ったことなどを簡潔に話した。
「良かったわね」
「うん…一生、忘れられない日になったよ」
それから、しばらくの間。楽しそうなお母さんと、ナイターを見ていたお父さんとも話をして。俊太郎さんからの連絡が来る前にお風呂などを済ませた私は、ベッドの上で横になりながら今日一日を振り返っていた。
「俊太郎さんに報告しなきゃ…」
慶喜さんにそっくりな男性を見つけてしまったことを…。
でも、何よりも私は……
無事に京都へ着いたというメールが待ち遠しくて。また、とろけるような声で優しく包み込んで貰いたくて。
とても幸せな時間を過ごせたことに感謝すると同時に、なぜか……
それぞれが一日も早く、探しているであろう相手を見つけられますように…と、思っていた。
けれど、そんなそれぞれの想いが……
後に一波瀾も二波瀾も巻き起こしてしまうということを、この時の私はまだ知らなかった。
~あとがき~
お粗末さまでした
書きたいと思っていた続き、やっと書けました
俊太郎さんほどではないものの、秋斉さんも主人公ちゃん達との記憶を取り戻し始めている状態っすね。そして、慶喜さんはいったい何者なのかんでもって、慶喜さんの傍にいた女性は何者なのか
まだまだ言えませんが、『それぞれの想い』がいつか、探していた相手を引き寄せる…かも
(なるべく、あの件は隠したままで頑張ります;)
俊太郎さまと主人公ちゃんが結ばれるまで、それぞれの人間ドラマも素敵に描けたら、と思ってまふ
せやけど、やっぱり…この物語の秋斉さんを描く時、脳内で時々ですが……向井理くんと及川みっちーが交互に浮かんでしまうんですよね(笑)
今日も、遊びに来て下さってありがとうございました