<艶が~る、二次小説>


私なりの沖田さん花エンド後も、5話目になりました(^ω^)


※沖田さんを攻略されていない方や、花エンドを攻略されていない方には、ネタバレになりますので、ご注意ください!


現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…よかったらまた読んでやってくださいきらハート


第1話 第2話 第3話 第4話  




【沖田総司~花end後~】第5話




……翌朝。


ふと目覚めると、手の平の上に携帯が乗ったままだったことに気付く。


「もう、9時半かぁ…」


昨夜は、今夜帰京するはずの沖田さんにどんなメールを送ろうか…とか、あれこれ考えていたらあっという間に深夜になり……そんなふうに沖田さんのことばかり考えていたせいか、なかなか眠れないままいつの間にか朝を迎えていたのだった。


私と翔太くんが、幕末時代に飛ばされたあの日。


不審がる土方さんの横で、「怖がらなくても大丈夫」と、声を掛けてくれて。


私が置屋でお世話になるようになって数日が経ったある晩の事…。



【こんな夜更けにおでかけですか?】



大門の塀から飛び降りた瞬間、偶然通りかかった沖田さんに声を掛けられた。



*艶が~る幕末志士伝* ~もう一つの艶物語~



……新選組の沖田総司。


彼があの有名な新選組の沖田総司だということを知ったのは、まだ先のことだった。


最初は怖くて野蛮なイメージしか無かったのだけれど、すぐにその不安は消え、やがて沖田さんの優しさに気付き始めた私は徐々に心を開いていった。


あの夜の出会いが無ければ、もしかしたらいつまでも誤解したままだったかもしれない。


(…それからだったんだよね。私と沖田さんの儚くて切ない恋が始まったのは…)



そんな風に思いながら携帯を開いて彼のアドレスを確認していると、一通のメールを受信した。


「裕香から…どうしたんだろう」


受信メールを開くと、いつものように絵文字たっぷりの文面が目に飛び込んでくる。


その内容は、新しく出来たばかりの洋食レストランへランチを食べに行かないかというものだった。


(あそこのお店、オープンしてたんだ…)


「もちろん、行く!っと…」


送信して思わず顔が綻んだ。


オープンしたら行ってみようと約束していたそのレストランは、静岡で有名なお店の別店舗で、中でもハンバーグが絶品だと聞いていたから…。


何時に待ち合わせするかなどをメール交換し合うと、私は堪らずに漏れる欠伸を一つしながらゆっくりと起き上がりカーテンを開けた。


「うわぁ…雲一つ無い良い天気…」


眩しくて思わず目を細めながら、青く澄み渡った空を見上げる。


(…沖田さん、今どこで何を見ているんだろう?)


枕元の携帯を充電器へ置いて洋服に着替えた後、階下に繋がる階段をゆっくりと降りていき、リビングキッチンへ行くと、ソファーにだらしなく腰掛けるお父さんの眠そうな視線と目が合う。


「おはよう、お父さん」

「おう…」


お父さんは、テレビのリモコンを手に持ち、チャンネルを替えながら大きな欠伸をした。


「日曜日くらいもっとゆっくり寝てればいいのに」

「俺もそう思うんだが、目覚めてしまうんだよなぁ…」


そう言って、またふわぁぁ~と言いながら欠伸をする。


テレビ局や各都心にあるスタジオでCMやドラマ、アニメなどの編集を主に担当する仕事をしていて、日曜日にこうして家にいること自体珍しい。


だから、うちは昔から盆も正月もあまり関係なく、逆に平日に家族で出かけたりということが多かった。


「二人とも、用意が出来てるから早いとこ食べちゃって」

「はぁ~い」


キッチンに立ったまま洗い物をしているお母さんに促され、私達は返事をしてテーブルに腰掛ける。


テーブルの上には、ご飯とじゃがいもと玉ねぎのお味噌汁と、鯵の塩焼きとシラスが混ざった納豆が置かれていた。


「いただきまぁす」


二人声を揃えて言うと、お母さんは笑顔でそれに答える。


平日は忙しいからパンが多いのだけれど、土日はこうやってしっかりと食べさせてくれることが多い。


「お昼は、うどんにしようと思ってるんだけどいいかしら?」


言いながら、お母さんは洗い物を終えてエプロンを外すと私の隣に腰掛けた。お父さんが、「それでいいよ」と、答える中、私は裕香とランチすることになった事を伝える。


「前から気になってたお店でね、知らない間に出来てたみたい」

「そう、若いっていいわね…」

「急に何言ってんの?」


苦笑しながら首を傾げる私に、「昨日の今日なのに、全然疲れていないみたいだし」と、言って溜息をつく。


「……だって、とっても楽しかったから」


誰もが同じように思うだろう。


もう、二度と会うことは叶わないはずの人と再開し、これからもまた、同じ道を共に歩んでいくことが出来るのだから…。


「私が高校の時も同じように京都へ修学旅行へ行ったけど、早く東京へ帰りたくてしょうがなかったというのに…」


苦笑しながら言うお母さんを見つめながら、私はいつか沖田さんのことを話すことになるかもしれないと思った。


この二人なら、きっと沖田さんのこと好きになってくれるだろう…と。


それから、朝食を終えた私は自分の部屋へ行って出かける準備を済ませると、部屋の片づけをしたり洗濯物を干すのを手伝ったり、庭の植木などに水をやって時間を費やした。


そして、待ち合わせ時間を見越して家を出た瞬間、どこか夏を思わせる強い日差しに照らされると同時に、涼しい風が私の髪をさらっていく。


「ん~っ、風が気持ちいい」

「気を付けてね。裕香ちゃんにもよろしく」

「はい、行って来ます!」


母の優しい笑顔に見送られながら、裕香と待ち合わせしているお店へ急いだ。


日曜日の午前中だからなのか、人の姿はまばらでどこかマッタリとした時間が流れているような気がする。


あまりにも済んだ青空に目を細めながら私はまた、昨晩考えに考えていた連絡するタイミングについてなどを考え始める。


(今夜、メールしたいけれど…やっぱり、疲れてるだろうから明日の方がいいかな…だけど…)


清水寺で、ほんの少しだけれど一緒に話すことが出来た時……



『連絡先…ですか?』


『はい。良かったら連絡下さい…』


『帰ったら、すぐに!すぐに連絡しますね』



胸の鼓動が高まっていく中、それを抑えきれずにはしゃぐ私に、沖田さんはとても澄んだ瞳で優しげに微笑んでくれたのだった…。


(横浜に戻るのは、8時半くらいだって言ってた…。だから、家に着いて携帯を手にするのは9時以降だろう…)


「…うん、決めた」


「何を?」

「えっ?」


背後から裕香の声がして慌てて振り返る。


「お、おはようっ」

「おはぁ~。待ち合わせるまでもなかったね。で、何をどう決めたの?」


彼女のにんまりとした顔が近づいてきて、私は思わず足を止めた。


「いや、その…この後食べるランチのことだよ」

「本当に?例のおっきたくんの事じゃないのぉ?」

「……ううっ」

「嘘がつけないからね、あんたはの目は…」


(さすが、そういうところは特に鋭いなぁ…)


今夜、沖田さんにメールするタイミングについて悩んでいたことを彼女に話すと、「絶対に今夜に決まってる」と、即答された。


「彼は、あんたからのメールや電話を待ってるに決まってるんだから…」

「そう…かな」

「そりゃまぁ、気を遣うのも分かるけどさ。でも、好きな人からの連絡ならそんなの気にならないし、逆に連絡が来ないほうが心配しちゃうと思うよ」

「……そうだね」


「そうだよ」と、言って彼女はバッグから携帯を取り出すと、今度は修学旅行の話で盛り上がり始める。


「だけどさぁ、京都や奈良って歴史的建造物が多いってだけで…特に、歴史とかに興味が無い私にとってはただの立派な建物にすぎなくて、早く東京へ戻ってカラオケ行きたぁいとか考えてたんだよね」

「そんなこと言ってたね…」

「でも、あんたが彼と出会ってから、そういう縁って本当にあるんだなぁ…とか思うようになって、違う意味で楽しかったかな」


裕香は、携帯画面を親指でスクロールさせながらそう言うと、今から行くお店のHPを見始めた。


「ほら、これ」


いくつかある料理を拡大させると、すっとこちらに見せてくれる。


「うわぁ~、美味しそうっ。こういう時、スマホは便利だよね」

「あんたも買い換えればいいのに…」

「いつもそう思うんだけど、まだ使えるから。今のが壊れたらスマホに替える予定」


(そういえば、沖田さんもやっぱりスマホなのかな…)


そんな風に考えながら歩いていた時、裕香が楽しそうにある方向を指さしながら言った。


「おお~見えてきた!外観も可愛いなぁ」


私達は微笑み合うと駆け足で店へと向かい、とてもおしゃれな作りのドアを引いた。


「いらっしゃいませ、2名様ですか?」

「はい、予約していた川澄です」


ご予約の方でしたかと、爽やかな笑顔で言う店員さんに導かれ辿り着いたのは、奥の部屋の窓際だった。カントリー調でありながら、気品のある家具や装飾に目を奪われる。


「素敵だね…なんか、イギリスやフランスに建ってるような家みたい」


裕香が感嘆の溜息を漏らしながら囁くように言った。


私も共感して頷くと、お互いに向い合せになるように腰を下ろす。


「こりゃあ、おっきたくんと来なきゃだね~」

「えっ……」


彼女は、メニューを見開きながらそう言うと、唖然としたままの私を見つめてニヤリと微笑んだ。


「う、うん…いつか…ね」


そう言って微笑み返し、私もメニューを見やる。



……いつだっただろうか。


とうとう、剣を振るえなくなってしまうほど病気が悪化してしまったある晩のことだった。


近藤さんが用意させた牛肉を沖田さんに食べさせようと沖田さんの部屋を訪れ、なんだかんだ言いながら嫌がる沖田さんを説得し、食べて貰ったことがあった。



【どうしても食べなければいけませんか?】


【これを食べると精が出るらしい。いいから我慢して食え】


【では、土方さん…手本を見せて下さい】


【おめぇ、そう言って食わねぇ気だな…】



結局、沖田さんは土方さん達に睨まれながら牛肉を口に含み、苦しそうに呑みこんだ。


周りが、やりゃあ出来るじゃねぇかと言う中、沖田さんは涙目になりながら、『不味かったけれど、頑張りました』と、言って微笑む顔が可愛くて……


私よりも年上なのに、なんて頑固なんだろう?とか、まるで子供みたいな沖田さんの言動に、新たな一面を垣間見たような気がした。


(もしかしたら、今もお肉が駄目だったりして…)


「もう決まった?」

「えっ、あ…うん。このチーズハンバーグにする…」


急いでそう答えると、裕香は近くにいたウエイターさんに声をかけた。


「すみません、チーズハンバーグとビーフシチューをお願いします」

「かしこまりました」


もう一度、注文を繰り返す彼に返事をして、立ち去るその背中を見送る。


「なんか、イケメンだったね…今の人」

「裕香はいつもそのへんよく見てるよね…」

「当たり前じゃん。料理もそうだけど、そのへんは大事っしょ」


時々、さっきの彼が姿を現す度に、裕香の視線がそれを追っている。


「私も、カッコイイ彼氏欲しいなぁ…」

「裕香は理想が高過ぎるんじゃない?」


彼女は、「そうかもね…」と、テーブルに肘をついて手の平で頬を支えながら呟いた。



中学一年の春。


違う小学校からやって来た彼女と同じクラスになったのが切っ掛けだった。


サバサバとした気さくな性格の彼女は、いつも周りを気遣うことが出来るし、人の悪口も言わない。悪口や陰口を耳にしたら言った本人に駄目出し出来る人。


私に無いものを持っている彼女は、私にとって親友と言っても良いくらいだ。


「ところでさ、一つ疑問に思っていることがあるんだけど…聞いてもいいかな?」

「……疑問に思っていること?」


ふと、彼女の真っ直ぐな視線を受けて、私は戸惑いながら聞き返した。


「うん。なるべく気にかけないようにしていたんだけど…そうすればするほど逆に気になっちゃって……翔太と沖田くんてどういう関係なの?」

「えっ?!」


(そう言えば、昨日も同じようなことを尋ねられたような…)


「○○と沖田くんは、初対面なんだよね?」

「……うん」

「あの時、翔太が『思い出した』って言ってたからさ…。あんたとは初対面なのに、どうしてあの二人は知り合いだったんだろうって思って…」


(…す、するどいっ……)


思わず俯く私に、彼女は、『本当のことを教えてくれないかな?』と、言って微笑む。


「うん……」


(どうしよう…何て言おう…)


私はどう話していいか分からず、ただ俯くだけしか出来ずにいたが、彼女なら本当の話をしても理解して貰えるかもしれないと思い、少しの間考えに考えた結果、私は思いきって彼女に全てを話す決意を固めた。


「……今から話すこと、笑わないで真剣に聞いてくれる?」

「勿論…」

「あと、絶対に信じるって約束して…」

「神様に誓って」


彼女は手の平をこちらに向けたまま、いつにない真剣な眼差しで呟いた。私はその瞳を見つめながら静かに口を開く。


「じつは……」


私は息を整え心を鎮めながら、今までの出来事全てを彼女に話し始めた。




沖田side



下鴨神社や京都御所近辺にある名所などを巡り、その近辺で昼食をとった後、二条城へと足を運んでいた。


「二条城か……」


(やっぱり思い出してしまった……)


元治元年(1864年)一月。家茂様が再びこの城に出向いた時、数名の同志が警護にあたり、家茂様の死後間もなくして、十五代将軍となられた慶喜公の警護に勤めたこともあった。


王政復古後、その主を失った後でさえも同志たちが守り抜いていた場所。


近藤先生が銃弾に倒れたのも、ここへと訪れた帰り道のことだった…。


「近藤先生……」



【さすが近藤先生だ…銃弾に倒れても戻って来られるなんて】


【まぁな……】


【それっくれぇで死んでもらっちゃあ困る。特にあんたにはな…】



布団の中で呻き声を上げながら痛みを堪える近藤先生を見守りながらも、私と土方さんはいつものように声を掛けた。


(…苦い思い出ばかりだ)


水戸藩兵との対立が起こり、『骨相逞しき壮士』とまで言われた近藤先生が、新選組の警備の命を受けたことを伝えに赴いたが拒絶され……


新選組の二条城退去まで要求された。


結局、我らの警備は二日間のみで、大阪へと下って行くことになって…



【憤激の色面に顕れ、恐ろしげに席を蹴立て…】



私には痛いほど分かります。


それでも、私達は最期の最期まで新選組隊士として生き抜いた。


「私が最期まで武士として生きられたのは、あなたと一緒だったからですよ…」


近藤先生の豪快な笑顔が浮かんできて、気が付けばそんな言葉を口走っていた。



「おーい、総司。そろそろ移動するらしいぞ」

「ああ、今行く!」


遠くから声を掛けられそれに答え、軽く二条城に一礼してみんなの元へ急ぐ。その途中、もう一度振り返り二条城を見上げた。


「この後だったはず…」


……私が病に伏せることになるのは。


次の目的地である壬生寺では、もっといろいろな想いに苛まれるはずだ。



*艶が~る幕末志士伝* ~もう一つの艶物語~



そんな想いを引きずりながら、またバスに乗り次の目的地である壬生寺へとやって来た僕らは、早速自由時間を迎えた。


隣を歩いていた勇人が嬉しそうな顔をしながら門を潜っていく。


「確か、近藤勇の像があるんだよな?」

「…ああ、そうだね」


(……壬生塚には芹沢さんをはじめ、池田屋事件で命を落とした、奥沢くんや安藤くん、新田くん達がここで眠っている…)


門を潜ると、真正面に本堂が見える。


「…壬生寺」


初めて訪れた場所のはずだ。


けれど、やっぱりあの時代の記憶が怒涛のように甦ってきて……



(…胸が…痛い……)


よくここで、子供達を集めて遊んだり……近藤先生達と一緒に町の人を集めて相撲興行を催して、寺の放生池の魚やすっぽん料理を力士達に振舞ったこともあった。

そして、武芸や大砲の訓練をしながら、私達は京の都を守る為に日々精進していた…。



「…総司?」

「え?」

「さっきから呼んでんだけど…」

「あ、ごめん…」


僕の顔を心配そうに見つめる勇人の視線と目が合う。


「おいおい、大丈夫かよ…」


大丈夫、と苦笑しながら答える僕の顔を覗き込むと、彼は、彼女のことでも考えていたのか?と言って目を細めた。


「いや、そうじゃないんだけど…」

「とりあえず、自由時間は1時間だ。ゆっくりだけど、確実に回ろうぜ」

「…ああ」


一歩踏み出す度に、懐かしい風に包まれ…


また一歩進むにつれ、身を斬るような冷たい風に肩を震わせる。


「……戻って参りました」


ふと、口にした言葉に戸惑いながらも、僕は前を堂々と歩く彼の背中を追いかけた。




【第6話へ続く】




~あとがき~


お粗末様どした汗


一足先に修学旅行を終え、東京へ戻って来た主人公は、覚悟を決めて友人の裕香に話すことに涙沖田さんは、壬生寺や二条城の見学により、幕末時代での記憶をどんどん取り戻していきまふアオキラ


この後、沖田さんが帰京した後。主人公とどのような展開になるのか…


ここでも翔太くんと絡み、お互いの友人の裕香と勇人も、どないなふうに絡んでくるのか。


そして、俊太郎さま花end後のように、他の旦那はんは登場するのか?キラキラ


今日も、遊びに来て下さってありがとうございましたキラ