「ゴマ」について
ゴマ(胡麻)は、ゴマ科ゴマ属の一年草である。アフリカ大陸に、野生種のゴマ科植物が多く自生しているが、考古学の発掘調査から、紀元前3500年頃のインドが、栽培ゴマの発祥地であるとされている。
主に種子が、食材や食用油などの油製品の材料とされて、古代から今日まで世界中で利用される植物である。
リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである。
「名称」について
中国名は、「芝麻」「胡麻」である。紀元前1世紀ごろに、西域(中央アジア)から古代中国に渡来した、胡(塞外民族)の麻(油分を含んだ種子の意)として、中国名の「胡麻」が生まれた。
和名の「ゴマ」は、これを音読みしたものと言われている。
「植物学的特徴」について
「ゴマの実」
アフリカ原産とされる一年草で、紀元前14世紀ころには、古代エジプトや古代インドで栽培されていたと言われている。
草丈は約1メートル (m) になり、夏(8月)に、葉腋に白色の花をつけて、秋に結実して、実の中に多数の種子を含む。
旱魃に強く、生育後期の乾燥にはたいへん強い。逆に多雨は生育が悪くなる。
「栄養」について
昔からゴマは栄養価の高い食品として知られて、生薬としても用いられた。
種皮の色によって、黒ゴマ、白ゴマ、黄褐色のものは、金ゴマなどの品種に分けられるが、栄養的にはほとんど差がない。
黒ゴマの皮の部分には、タンニン系ポリフェノール色素を多く含んでいる。すりゴマや切りゴマにすることでかたい種皮が破られ、より風味が出て美味しく味わえるほかに、栄養の吸収効果を高めるメリットもある。
カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、亜鉛等のミネラルが多く含まれて、骨粗しょう症の予防や貧血の改善に効果がある。
タンパク質、食物繊維、ナイアシン、ビタミンA・B1・B2・B6・Eや葉酸が豊富に含まれている。
ゴマには抗酸化物質として働くリグナンが含まれていて、ゴマの代表的なリグナンはセサミンである。
ゴマ自体も抗酸化作用を持ち、活性酸素が体内で生成されるのを抑えて、肝臓機能を強化し、細胞の老化やガン化を抑制する作用がある。
種子にはオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸などの脂肪油が45 - 50%、蛋白質約20%、含水炭素10%、アデニン、コリンなどを含んでいる。
リノール酸は必須脂肪酸の1種で、コレステロールの血管への沈着を抑制して、動脈硬化の予防に役立つと言われている。
ただし、搾油したものは、そのまま空気に触れさせて放置すると過酸化脂質化して、癌や肝炎、動脈硬化の発病に関与してしまうとも言われている。
セサミンは、抗酸化作用によって動脈硬化予防、老化防止や肝機能にもよいといわれている。
「ごまアレルギー」について
栄養価が高く健康に良いとされているゴマではあるが、子供を中心にごまアレルギーの調査が報告されている。
アトピー性皮膚炎の子供126名を対象に行なった例では、1歳未満の乳児が21%、1歳から1歳6ヶ月未満では44%、2歳・3歳以上では約50%が、ゴマに対して陽性を示す結果となった。
「食材以外での利用」について
ゴマはかつて、生薬としても用いた。秋に果実を収穫して、種子を採取して日干しにしたものを、胡麻(ごま)と称した。
栄養価が高いことから滋養強壮になって、切り傷、ただれ、刺し傷の治癒にも使われた。傷や皮膚のただれには、新鮮な胡麻油を患部に塗布すると、傷面の保護や消炎に役立つと言われている。
また、耳に小さな虫が入ったときに、綿棒の先に胡麻油を塗って耳に入れると、油の粘りで虫取りに利用できる。
薬膳的には、黒ごまは平性で肝臓や腎臓に作用して、精力を増強して、白髪・耳鳴り・めまいなどを改善するとされる。白ごまは寒性で、便秘を解消するとされる。