吉田兼好 (よしだけんこう・1283?-1353?)は、鎌倉末から南北朝期の歌人，随筆家である。本名は卜部兼好（うらべのかねよし）。
出家ののちに、俗名を兼好（けんこう）と音読して、法名とした。武蔵国称名寺（現，横浜市金沢区）の長老あての書状断簡に〈故郷忘じ難し〉とあることから，関東で生まれたとする説もあるが，それは〈故郷〉の語義〈住みなれた地〉を誤解したもので，京都で生まれで，関東で若い時期を過ごしたのであろう。
父の兼顕は治部少輔で，兄弟に大僧正慈遍と，兼雄がいる。兼好は宮廷に仕えて，祖父の代から、かかわりの深い堀河家の諸大夫ともなったが，1313年（正和2）ころに出家した。
出家後の生活を支えたのは，洛外山科の田地からの年貢米であった。17年（文保1）ころから歌人として名が知られ，歌会への出席も多くなる。
また，このころまでに、鎌倉へも2回以上赴いている。《徒然草（つれづれぐさ）》の執筆は、1317年から31年（元弘1）の、40代後半から50代前半と推定され，〈つれづれなるままに〉と書き出されるこの随筆が代表作となった。
1345年（興国6・貞和1）ころ，勅撰集《風雅和歌集》の撰集に提供するために、《兼好法師自撰家集》（《兼好法師集》）を編集したが，自筆草稿本が尊経閣文庫に現存する。
〈雲の色に別れも行くか逢坂の関路の花のあけぼのの空〉にはじまる約280首の和歌をおさめる。いわゆる二条派風の平明優美な作品で，頓阿，浄弁，慶運とともに二条為世門下の四天王の一人と賛えられた。
勅撰集には、《続千載集》《続後拾遺集》《風雅集》に各1首のほかに，全部で18首入集している。
歌壇での地位の安定とともに，古典作品の書写や研究にも力を入れて，《古今集》《源氏物語》などの伝本に，彼が書写校合した旨の奥書を加えたものが伝えられている。
晩年は，1344年（興国5・康永3）足利直義勧進の〈高野山金剛三昧院奉納和歌〉の作者となって，46年（正平1・貞和2）賢俊僧正に従って伊勢に下ったり，48年高師直に近侍したりするなど，足利幕府を中心とする武家方に接近している。
最晩年の事跡としては，50年（正平5・観応1）4月玄恵法印追善詩歌，同年8月二条為世十三回忌和歌会の作者となり，翌年《続古今集》を書写，観応3年（1352）8月の日付がある《後普光園院殿御百首》に加点したことが知られている。
吉田兼好(1283―1352)は鎌倉・南北朝時代の歌人,随筆家で、俗名は卜部兼好(うらべのかねよし)で、法名は音読して兼好である。
鎌倉時代末期から南北朝時代にかけての官人・遁世者・歌人・随筆家で、日本三大随筆の一つとされる『徒然草』の作者である。私家集に『兼好法師家集』がある。
人間の生き方について彼は語っている。
「大欲は無欲に似たり」