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クレハズム

松澤くれは公式ブログ。

昨年もお世話になりました。
劇場へ足をお運びいただき、小説をお読みいただき、大変嬉しく思います。

コジンシュギという大切な場所で、ゼロ距離演劇ともいえるステキな交流ができたのも貴重なひと時でした。今年もお待ちしております。

舞台2本、小説1冊にしぼってお届けしました。

本当はもっと多くの作品をご提供したいのですが、一つ一つ、時間と労力をかけて世に出していきたいという気持ちもあり、本年も少ないながらクオリティの高いものを作っていきたいと思います。


人気商売ですから、人気がなくては活動できません。
かつて何度も廃業の危機にあり、今こうして表現活動を続けていられるのも、ひとえに応援してくださる方々あってのことです。本当にありがとうございます。

悠理序曲、さよなら東京、東京ドーピング、焔の命……。2020年は、火遊びが何度も物語の舞台にしてきた時代です。

時代が追いつきました。
ならばそれより先へ、さらに進みます。

まずは新たな代表作『共骨』とともに。
今年も、どうぞよろしくお願いします。


2020.01.01  松澤くれは



稽古場では、身なりに気をつけています。

必要なのはおしゃれではなく、刺激です。

役者さんは稽古中、相手役を見ている時間と同じくらい、下手したらそれ以上に、演出家を見ている時間が長いこともある。みすぼらしい仕事着で行くわけにはいかない。

ばちっとスーツやシャツで決めている方、飾らずにカジュアルな装いの方など、たくさんいらっしゃいます。とても素敵だなあと憧れます。
僕の場合は、極力同じ服を着ないように心がけます。稽古がはじまる前の風景に、わずかでも変化をもたらす新鮮さ持ち込めたら……そう思えば僕自身の心持ちもフレッシュになる。毎日の仕事着は朝起きてから選びます。



演出家とは何者か。
僕は「こだわる人」だと思っている。

最高責任者ではなく最終責任者。
キャストとスタッフからいただいたアイデアの渦のなかから、何を残して何を加えて何を洗練し、どこに向かうのかを決断し続ける、そんな役割を担うひと。

だからこそ。
これがいい、これもいい、これがすき、これはちがう、これじゃなきゃだめなんだという感覚は、忘れないように四六時中、こだわりたい。


ひとり書斎にこもる執筆も同じ。
部屋着から着替えればスイッチが入る。
襟を正せば背筋が伸びるのは本当らしい。

演出にも言葉にも。
日々の生活においても充実をもたらす。

それが僕にとって、服を着るということ。






さあそんなわけで。

後半は五着をご紹介いたします。

























2019AW
RBTXCO
予言のプルオーバー


「胸に進化って書いてあるよ」
と、よく人に言われました。
その通りです。僕は進化したいです。


ファッションは自己表現でもあります。

こういうのがすき。
こんな私になりたい。
こういった考え方です。

会った人にそれを伝えられる。



タグすらも詩的なRBTの世界。

RBTの服を着て打ち合わせに行くことが多い。相手に自分のやりたいことを伝えやすいから。
きっと親和性が高いのだと思います。構築したい物語がどこかで似ていると一方的に感じています。



もし自分の身体が何か物足りないなら。

新しい皮膚として、その服を着たらいい。





























2019AW
ANREALAGE
スラックスコート


驚くべきことに、着てません。
優れた衣服というものはそれ自身がひとつの藝術品であり、壁にかけて鑑賞可能なアートの役割すらも果たします。
だけど服は、人が着る/人に着られることで真価を発揮します。だから着るべきです。その点については反省しています。


服の細部を拡大したコレクション『DETAIL』。

スラックスのウエストを拡大したこのタータンチェックのコートは、世界で一着しか販売されなかったそうです。


よく「人とかぶるのが厭だ」という理由で個性的なファッションを好む方がいますが、人とかぶるというのはむしろラッキーで恵まれています。世界中の誰かと、その服が好きだと分かり合える。お互いのあいだにシンパシーを生むわけですから。


それがどうでしょう。

世界で一着しかない服ばかり着ていたら、その共感の芽を摘んでしまいます。


唯一無二とは、すなわち孤独なのです。




ファッションとは孤独の覚悟でもある。




孤独を纏って生きる覚悟。

……あなたにはありますか?









































シーズン不明
MR.OLIVE
セミダブルライダースジャケット


何度も買うことはない服があります。

カットソーやパーカーなどとは違って、人生で数着、もしかしたら一着しか選ばないかもしれない服。ライダースジャケットも、そういった類に入るのではないでしょうか。


好きに選んで、自分で着る。
それがファッションの醍醐味。


本革のライダースジャケット。
生き物のいのちをもとに作られた衣服。

流行りのデザインを買って、ワンシーズンで捨てるのとは訳が違います。買うことに責任すら伴うのが革製品です。

だからこそ、その尊さを知り、オーナーとなって長年かけて服を育ててゆく。


生半可な気持ちでは選べません。
だからとても時間がかかりました。
ずっと生涯の一着を探してました。


33歳。ようやくめぐり逢えました。


はじめて訪れた街。
普段は入らないであろう雰囲気のセレクトショップに、導かれるまま、足を踏み入れました。


ラムレザー、キャメル、セミダブル。


王道の黒ダブルではありません。
裏地がキュプラで着心地もよい。

その柔らかな可愛げに惹かれました。



どこかで見かけた服を、後から買おうとしても手に入らないことって多いですよね。

一期一会。
めぐり逢えた服を大切に。




































2019AW
NOZOMI ISHIGURO
Haute Couture
ウェスタンシャツ


まだファッションへの興味が漠然としていたころ。

今はなきストリートスナップ誌『TUNE』を読んでいた、若き日の松澤くれは。
「うお!おしゃれ!」と思う服思う服が、同じブランドなわけです。

その名は、
NOZOMI ISHIGURO。


ああ、こんな服を着てみたい。
心からそう思える服に出逢いました。


値段を調べてびっくり。
まあそれはお高い代物。

表現でごはんを食べることを志す、貧乏な若人にとって、自由に使えるお金なんて微々たるもの。


だけど思いました。

お前は駆け出しでもクリエイターだろ。
素晴らしいと思ったそのこころに従え。
すごいと思ったらきちんとお金を払え。


だからお金をためました。
がんばって、買いました。


初めて手に入れたのは、
パッチワークパーカー。

あの感動は今でも鮮烈に憶えている。



それから僕はファッションに傾倒した。

ノゾミも毎シーズン、ちょっとずつ集めていった。たくさん着た。

どんなに悲しいときも、苦しいときも、好きな服が僕を救ってくれた。とりとめもない日常でも、その服を着ただけで特別な1日をおくることができた。


僕にとってノゾミは原点で。
何にも変えがたい、お洋服。


月日が経ち、デザイナーの石黒望さんと知り合いました。
何度かアトリエにもお邪魔して、仕事場を見学させてもらったり、コムデギャルソン時代の貴重なお話を伺ったりもしました。
石黒さんは僕の舞台も観に来てくださいました。先日は一緒に富山の地酒を飲みました。

服が、ご縁をつないでくれました。



2019年。
そんなブランドが終わりを迎えました。

経営破綻のニュースをきいてから、しばらく仕事が手につかなかった。

こんなにすごい技術とセンスをもった服作りが、新しく知られなくなってしまう。それは寂しさよりも悔しさでした。これは個人的で勝手な感情です、ただひとりのファンとして、勝手に悔しがりました。



このウエスタンシャツは、幻の一品です。
商品化されず、受注会でのサンプルしか存在しません。


こんなにすごい服はどこにもない。
この服は、ここにしかないのです。


発色のよいイエローチェックに、見たこともない布地を組み合わせたシャツは、ウエスタンの要素を残しつつポップな可愛さを演出してくれる。袖のフリルもガーリーになりすぎず、メンズ/ウィメンズをこえて、明るさを灯している。


この服を着ると、
気分が華やかになります。

だから、終わりだなんて思えなくて、きっといつかまた石黒さんの作品に会えると、そう信じさせてくれました。



明るい未来を纏うように。
これからも僕は、ノゾミの服に袖を通す。































2019AW
COMME des GARÇONS
HOMME PLUS
刺繍ガウンジャケット


ほんの数日前。
今年最後に大きな買い物をした。


やっぱりギャルソンはすごい。
語るために言葉すら要らない。

ただただ、新しい世界を見せてくれる。

世界を代表するデザイナー、川久保玲さん。

いつか御大の服も、作られなくなる。
それはわかってる。いたしかたない。

だからこそ、同じ時代を生きる者としての幸福は、いま、あなたの服が買えることだ。あなたがこれだと信じたものを、わたしがいま、選んで着られることだ。



袖を通したのは自宅で一度だけ。


来年は外に着て行くことでしょう。

どんな日になるのだろう。
何が待っているんだろう。



今年一年。
買ってよかった服はもっとあります。
服を買うために仕事も頑張りました。

服は自分自身を広げてくれます。
何気ない日常を特別な一日にしてくれます。



ひとの想いが込められた服を、選ぶ。
選んだ服で、かけがえのない日を過ごす。


今年がおわる。
新年を迎える。


何も変わらない。
新しい毎日が待っている。
























明日は何を着て、
どこに出かけましょうか。




2019.12.31 松澤くれは
こんばんは。松澤くれはです。
今年一年お世話になりました。


師走なので、ふりかえります。





ただし!
お仕事の話ではなく!



「今年買ってよかった服」をご紹介!



まあ読んでくれよ!!!!!!
ドドンといきますよ!!!!!




















2019SS
JUNYA WATANABE
COMME des GARÇONS MAN
マウンテンパーカー


まずは手堅いところから。
今年の初売りで買いました。

もうねぇ、実用性が完璧。
薄手なのに防寒ばっちり。
パリッとかたい生地で着崩れしない。
トレンドのリフレクターがおしゃれ。

あと雨を弾きます。全く濡れません。

ジップを上げれば首周りもあったかいし、フードが可愛いし、リブの素材も柔らかくて着心地がよい。

試着した時に「値段が高いものには価値がある」と率直に悟りました。これは自慢や高慢から言ってるのではありません、完全なる真理です。

おしゃれは我慢だって??
そんな言説を覆すほど革新的な多機能アウター!


なんか、くれはって華美で奇抜なデザインを好むと思われがちなんですけど、こういう洗練された山岳系ストリートって普通にコーデ合わせやすいし、街を歩くのにも最適だと思うんです。

ということで1~3月あたりヘビロテでした。
最近もよく着ています。汚れてなんぼのマウンテンパーカーなのに、まだまだへたりそうにありません。





















2019SS
COMME des GARÇONS
HOMME PLUS
クレイジースーツ(セットアップ)


あのですね。
まずこちらをご覧下さい。


プリュスの2019SSが発表されたとき。

「あ、これ頑張って買わないと駄目だ」

って思いました。確信しました。
別にお金持ちじゃないんです。特にジャケットなんてバカスカ買えません。

だけど金銭的に無理をしてでも、生活を切りつめてでも、このシーズンだけは買わないといけない。だってもう二度と手に入らなくなるのだから。



テーマになった「クレイジースーツ」。
スーツという規定の枠を崩さずに、それでいてどこまでスーツを崩せるか……そんな試みの到達点だと思います。
ここ数年のプリュスでも最高にどストライクな、まさに理想のジャケットが並んだコレクションでした。


正直、ぜんぶ欲しかったです。



緑のパンツからはじまって、水色の短冊パーカーも買いました。


それでもいちばんは……。
このピンクのセットアップ。


この服を買ってよかった理由はただひとつ。

「着たかったから」

それだけで買ってよかったと思っています。


























2019AW
KENZO
「黄金の竹」Tシャツ



黄金の竹


エクストラフレーバー

ユニークなクオリティ

ファンシー


東京/リマ/パリ




…………。


長らくKENZOの人気を牽引したデザイナー。

その最期のコレクションです。イカれてるとしか言いようがない。

値段を言うのは野暮ですが3万円しました。

もちろん納得してプロパーで即買いました。



ちなみにトレーナーも持ってます。

こっちには「長粒米」の文字が光ります。





まあひどくダサいですよ。

だからこそ、あまりにカッコいい。

そう。こころの底から痺れるほどに。



最近のKENZOって「ダサさの美学」だったんですよね。


かっこいい服、かっこよすぎる服って、どこか恥ずかしさを伴うことがあります。キメすぎちゃってると言いますか。。。


とくに「前衛」の旗印としてのモード系が、いつしか「かっこいい服」へと変貌を遂げていったところに、バレンシアガやルイ・ヴィトンといったハイブランドよりもいち早く、ダサいファッションを真っ向から提示したのがKENZOだと思っていて、しかもその衝撃は何年も継続して発表され、そのダサさを心から愛して着用できる域にまで昇華されていきました。

その意味で僕は、KENZOこそが現代モードの救世主だったとすら感じています。



漫画『へうげもの』の主人公、茶の湯の達人・古田織部が、最上のもの《甲》よりも、あえて格が落ちる、遊び心のある《乙》なものを追い求めたように、まさしくKENZOにもその《乙》魂が強く宿っているように思えてなりません。



KENZOという、世界的ブランドを長く牽引してきた気鋭のデザイナーが、最期の最期にたどり着いた、究極至高のハイファッション。


それが、




黄金の竹


エクストラフレーバー

ユニークなクオリティ

ファンシー


東京/リマ/パリ


長粒米




だったというわけです。

ここには底知れぬ哲学が含まれ、また同時に、膨張し続ける無限の宇宙すらも縫い込まれている。



一は全、全は一。

(いちはぜん、ぜんはいち)。



やがて人類(ヒト)は知ることになるでしょう。



すべての服は、

黄金の竹に回帰することを……。












~~~後編に続く。