今のドラマと昔のドラマ | やまとうた響く

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日々の出来事や想いを綴っています。エッセイ風に書けたら素敵なんだけれど。

前回の記事に引き続き懐かしいドラマをもう一本観た。宮尾登美子さん原作の蔵、と言うドラマを再放送していた。


このドラマをリアルタイムで観たのは21年も前のことになる。過去に観ているし、観ないつもりだったけれど、多少の懐かしさと、当時の若い松たか子さんの真っ直ぐな目が印象的で記憶に残っているし、何より今観ている朝ドラ、らんまんと同じ酒蔵が舞台だと言うのが再視聴の一番の理由だった。


時代はらんまんより少し後の大正から昭和にかけてだけれど、同じNHKドラマではあるし、らんまん、で見る酒蔵の様子と同じで当時の酒蔵のことが以前観た時より興味深く観ることができた。


この作品は過去に(毎日新聞)に毎日掲載された小説で、私は読んでいなかったけれど母が毎日楽しみに読んでいたことを記憶している。以前私がドラマ化されたこの作品を観たのもそういうことがあったからだった。そうでなければ宮尾登美子作品はどうも好みではなく観なかったと思う。


けれど当時この作品は自分で思っていたよりも面白かったと思う。その頃母はいくらか認知症になりかけた頃だったけれど、まだ一人でどうにか過ごしていたから大好きだった小説がドラマ化されたこの作品を観ていたのだろうか、と今となっては尋ねることもできないけれど。再放送を観ながらふと、母のことも思い出す。


ストーリーはやはりかなり重苦しい暗さがあった。らんまんとは全く違うものだ。時代としてはずいぶん後の時代ではあるけれど。こういう所は宮尾登美子さんの真骨頂かと思う。


こちらは東北地方の大きな蔵元で、物語は蔵元の意造の結婚の際のちょっとした勘違いから始まった。そしてそのちょっとした最初のボタンの掛け違いから人生が重くなった女性と、松たか子さん演じる意造の娘とが織りなすなかなか過酷な人生模様が描かれている。


檀ふみさん演じる佐穂は昔から意造に恋心を抱いており、その佐穂に意造との縁談が持ち込まれ、天にも昇る心地の佐穂だったけれど、蔵元の家の方の勘違いで、望んでいたのは美しい姉の方だったことがわかり、天国から地獄へと落とされたのだった。


高橋恵子さん演じる姉は意造に嫁ぎ、佐穂も姉の手伝いだったかで、蔵元の家で暮らすことになる。(そのあたりの記憶はあいまいで、再放送も後半しか観ていないので)同じ家で暮らす佐穂にとっては地獄のような日々だったろう。


けれど地獄の様な日々は意造と姉夫婦も同様で、体の弱い姉はいくどとなく流産を繰り返し、ようやく産まれた長女、烈(のちの松たか子)は 病気で失明してしまう。そしてほどなく姉も亡くなる。


その間常に甲斐甲斐しく一家の世話を一手に引き受けてきたのが佐穂だった。その後、意造に後添えの話が持ち上がり、まわりは皆佐穂だと疑わず、佐穂もそう思っていた。けれど意造が望んだのは歳の若い売れない芸者のせき、だった。


またしてもどん底の佐穂だったけれど、それでも変わらず一家を支え続ける。宮尾登美子さんの描く女性は抗えない運命に翻弄されつつも、しっかり強く生き抜く女性を描く作品が多い。


一家はその後も初の長男誕生に喜びにわくものの、幼い時に木から落ちて命を落としてしまう。その後も後添えのせきも蔵元での暮らしに馴染めず悲痛な出来事の末家を出ていった。


よくもこう次々と、と思うほどの出来事に見舞われる。そんな時も変わらず一家を支えたのが佐穂だった。


その後、松たか子さん演じる烈は目が不自由ながら利発な娘へと成長していった。そして佐穂とはまた別の強い意思と行動力を持っていた。そこから少しずつ何か今までの重い扉がこじ開けられていくような展開を見せる。


烈はその頃貧しい漁村の出の蔵人涼太に恋をするも、許されるはずもない。




当時なら身分違いでは当然のことだったろう。けれど烈は見えない目で涼太の暮らす村へと夜一人飛び出していく。




そこは当然佐穂がこっそり女中さんを付いて行かせることで助ける。涼太の元へ辿り着いた烈は、夫婦になって欲しいと訴える。



その時涼太の母親が、お嬢様に差し上げます。その代わり婿なんてとんでもない。下男としてお世話をさせてやって下さい、と今では考えられない発言をする。この言葉は以前観た時も衝撃でよく覚えている。


そういう時代だったのだ、と重く暗い時代の背景が映し出されていた。けれど、意造が折れ、涼太は正式に烈の婿養子になることになった。



一人向かった道を帰りは二人で。美しいシーンだった。




それ以前に意造は、佐穂に烈の縁談についてどう思うかを尋ねた。佐穂は烈の思いに理解を示しつつも、それと結婚は別で、人は産まれ育ちに相応しゅう生きるのがいっち幸せと思う、と答える。


その考えが一般的だったし、佐穂もそうして分相応に、辛抱しつつ生きてきたのだ。けれど、烈は自分が幸せになりたい、とか世間の常識とか何も考えず、ただ今の自分の気持ちを貫いた。そして重い運命の扉をこじ開けた。目が不自由と言う障害も物ともせずに。


朝ドラらんまんと描く内容は全く違うけれど、万太郎と烈の生き方だけがリンクする。この昔のドラマが、今のドラマらんまん(設定は昔だけれど)と通じるメッセージを伝えていることに感動した。


これからは、こうやって自分の人生を切り開いて生きていくのだな、と時代がそう語っている気がした。


烈はその後男の子を出産する。涼太は戦死してしまうけれど、長男と二人しっかり蔵を守って生きていく。




ちなみに佐穂もようやく、意造と同じ墓に入ってくれ、と告げられ長い長い辛抱が報われる。佐穂は佐穂で苦難を耐えて耐えて乗り越えて、ようやく開けた扉だ。どの生き方がいいとは言えないし自力だけではどうにもならない時代の背景も映し出されていた。そこが宮尾登美子作品なのだな、と思う。




晩年は意造も佐穂も穏やかで幸福に過ごす。



このしっかり生きていこうとする決意の眼差しが印象的だった。


万太郎も波瀾万丈な暮らしが待っているだろうけれど、苦難を苦難と思わぬ天真爛漫さでどんどん道を開拓しながら進むのだろう。明るく朗らかに。今後の展開が楽しみだ。



いざ東京編へ!



とにかくこれからはもっと明るく軽々と、ドラマではない自分のリアル人生もそんな風に生きてゆきたいものだ。



そういえば、最近観たもうひとつのドラマ、リバーサルオーケストラも、 田中圭さん演じるマエストロの実家が蔵元だった。やはり家業を継がずに音楽家の道へ😁 明るく軽やかなドラマだった。なぜか最近ドラマに酒蔵がよく登場する。何かのメッセージか!?メッセージかもしれないけれど、私はただ酒蔵でお酒を味わってみたい。そんな気になった。



らんまんでは峰の月、だったけれど、 蔵、では冬麗! 亡くなった父も酒好きだったなぁ😌