今日は一つ、発達障害の入門または初級(?)の保護者さんに良いだろうと思われる本を一冊、ご紹介します。


対策を取るにしても、何かを解決していくにも、子供の特徴を知ることがなによりも大事、とはいつもブログに書いていますが、その「子供の特徴を知る」ための手がかりがあまりない、という保護者さんも多いのだと感じました。


特にコメントやメッセージにお返事を書いて思うのは、子供を見ていく要点はたくさんあり、だからこそたくさんの解決方法があります。でも「子供を見るときの要点」がたくさんあるのに、その「たくさん」のバラエティーがそもそもわからないので、想像することもできず、また医師や心理士から指摘されていない特性や性質については「知らないまま」子供を見ていくので、「???」と子供の不適切言動や不思議な行動の原因や理由が思い当たらない、という感じなのかなと思います。


それで、こちらの本が一つの解決になるだろう、と思いました。



【内容情報】(「BOOK」データベースより)就学前に身につけたい、食事、清潔、排泄、着替えの基本動作のポイント、学校生活を楽しく過ごすための学習・運動の支援のヒント。保育園、幼稚園、小学校、家庭でできる具体的なサポート例が満載。

【目次】(「BOOK」データベースより)巻頭 気になる子の生活動作の指導・学習支援6つのポイント(大人が手本を示す/できたときにほめる/しからない ほか)/序章 子どもの発達と生活動作(子どもの発達段階/生活動作の自立をめざす理由 ほか)/1章 基本の生活動作の支援(食事/清潔 ほか)/2章 基本の運動動作の支援(歩く/走る ほか)/3章 基本の手作業の支援(筆記具を使う/ぬり絵をする ほか)/4章 基本の学習動作の支援(着席する/聞く ほか)


こちらの本だと、内容は他の発達障害の本と同じく「ベーシックなこと」が書いてあり、ものすごく詳細であるとわけではないのですが、他の本と違う点は「多角的な視点」がある、ということです。


例えば、手指の不器用さ、という悩みがあるとします。


この本を読むと、


「こどもの成長段階は今、どのあたりにあるか」を知ることができます。通常、他の発達関係の保護者向けの手に取りやすい本では「これができて、はじめて次の~というステップへいける」という子どもの発達段階に応じた対応をしようという視点までは、丁寧に書かれていなかったのではと思います。


ですので、手指の動きが悪くて工作ができない!となると、「こういう運動やかかわりがいいですよ」という内容を読んで、それをいきなりやるという事が発生したのだと思いますが、この本の場合は


赤ちゃんから乳幼児、児童期への発育状況をきちんと「順を追う」ことを示しています。つまり、極端な言い方をすれば、「スキップができない」という課題があったとして、いきなりしっかりとした立っちができていない状態をすっとばして、はい、片足で立って、そこで跳んでみて!などどやると、子供は発育状況がそこまで行っていないので、いくら「スキップを身に着ける方法」が療育的な優しいアプローチと言えど、立つことがしっかりとできていない子にやらせたのでは意味がない、という部分をしっかりと踏まえていると思います。それが、指の動きでも同じである、という手順を図解して説明してくれています。


(注:実年齢が例えば6歳でも、凹みの部分の発達度合いが3歳なら、その3歳の発達度合いに合わせてハードルを下げた関わりが必要になる、ということです)



大事なのは、発育状況に応じた凹み部分の関わりなので、それを丁寧に網羅しているのは珍しい本だと思いました。療育での誤解は、この「発育状況に応じて、この順番でやっていけばいい」という細かいところの説明を飛ばしてこの凹みには、この関わり、と特性と関わり方をセットで提案することが多すぎるので、発育状況に「応じて」という部分がおろそかになり、きちんとした療育の成果につながらないことがあるのかなという気がします。


そして、小児精神科での診断や心理士との面談ではよく「「視機能の問題」は見落とされることがあります。
学習不振があれば、LDなのか、もしかして目に問題があるのか、と検査されることはあるかもしれませんが、


集中力がない

いつも飽きっぽい

宿題や勉強が嫌いでなまける

物をなくす

片づけができない


というような子で、視力がとても良い子に、視機能検査をすすめる医師や心理士はまだまだあまりいません。視力の良さと、視機能の問題は全く別次元のことです。例えるなら、「すごく発語ができている。でもそれはエコラリアだった」というのと似ています。


そういう視力が良くても視機能には問題がある場合は結構あり、両目でしっかり見ていて問題ないと眼科医が診断していても「読みたくても読めない、集中したくでも全体がピンとがあわない遠近感のない世界で生まれた時から過ごしている」から集中できないし、どこに何を置いたかを「目で見てもわからない」から探せない、しまえない、という子がいる可能性についても、この本では「視覚機能について」も言及しているので、はっと保護者が「もしかして」と気づくことができます。そうすれば、親は「眼科ではなく検眼士のいる眼鏡屋さんで視覚機能を検査してみよう」と思えるのです。


こんな感じで情報のネタがちりばめられているので、判断材料として多くを得ることができます。


題材としては、早期療育のために早期発見をされた乳幼児期のお子さんを持つ保護者に一番効果的な本かなとは思いますが、すでに児童期になっている子供の療育結果が思わしくない、丁寧に関わっているつもりだけど効果が感じられない、という保護者が読んでも「あ、もしかしてこの点を見落としていたかも」という気付きが得られるのではないかと思います。


発達状況に応じた関わり方、それも具体的に例を知るということは、とても実際に応用して使いやすいと思います。






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