日経コンピュータ2022.12.08 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<アジャイル組織変革 柔軟に方針変える体制のつくり方>です。何度も書いてますが私が日経コンピュータに求めるのは基幹システムの方向性です。この特集は企業組織をどう作るかというテーマでしたので日経ビジネスでやってほしかったです。

【地銀システムに再編機運 10以上の共同化乱立でコスト高止まり】(P.06)
地銀(地方銀行)が信金(信用金庫)よりもシステム関連経費の効率性が悪いというレポートが金融庁から出ました。3年連続です。信金は90%以上が共同利用型システムを利用していますが、地銀は10以上のシステム共同化が乱立しています。コスト高はそのためだと思われています。

 

そこで広島銀行は日本IBMが運用するシステムからNTTデータが運用する「MEJAR」に参画すると発表しました。MEJARは横浜銀行などが利用。再編の動きが加速しそうという記事でした。

※個人的にはシステムが共通化するならこれほど多くの地銀は不要という流れにならないのかと感じます。

【ガバメントクラウド移行でコスト倍増 先陣切った美里町に透ける課題】(P.08)
デジタル庁が整備する「ガバメントクラウド」に基幹システムを移す事で運用コスト3割減を目指しています。その先行事例として、埼玉県美里町からコストの試算が出ました。

運用コストは5年間で移行前の1.9倍、約4.2億円になります。

これは現行のTKCパッケージをそのままAWSに移す試算です。今後「ガバメントクラウド上の標準準拠システムを使い、第3弾では国が提供する情報連携基盤や共通機能などを使いコストを減らす構想」だそうです。

※減るわけがないですね。菅元総理がデジタル大臣やってくれないか、祈っています

【共通テスト「情報Ⅰ」に配点なし? 急がれる情報科教育の体制強化】(P.14)
2022年度から高等学校で「情報Ⅰ」が必須科目になりました。2025年実施の大学入学共通テストに情報Ⅰが導入されます。ところが一部の国立大学では
<教科として情報Ⅰの受験は必須とするが、配点はしない>
と発表しました。理由は都道府県により教育体制に差があるのでどの程度格差が出るのかを見極めないで配点が出来ないというものでした。

※国立大学が「情報Ⅰは必須だけど勉強しなくてよい」と言っているに等しいと思われます。

【2weeks from 日経XTECH 11月14日(月)~25日(金)】(P.17)
11/14IPADX手引書の完成版 API管理やアジャイル開発 課題克服事例紹介も
 →このサイトはしらなかった。UIだけは良い
11/21:「ワコムストア」が被害 不正アクセスで約15万人の個人情報漏洩か
 →2/19-4/19に購入した顧客情報が流出
11/25:DeNA子会社のアルムが薬事法認証を取得 スマホ一体型眼底カメラで
 →持ち運べる眼底カメラ。2022年10月に子会社化完了

【アジャイル組織変革 柔軟に方針変える体制のつくり方】(P.22)
従来の組織は「計画主導型」であり、大きな変化に弱い。期の途中で計画を変更することが難しいため、来期から・・・という対応になります。
そこでアジャイル型の「試行錯誤型」の組織にチャレンジする企業の紹介です。

■SATORI(MAツールのメーカー)
全社をアジャイル型組織に作り替えた
■リコー(OA機器メーカーからデジタルサービス会社へ)
デジタル戦略部が主導し徐々にアジャイル手法による組織運営へ
■auカブコム証券
新しい金融商品企画部署などででアジャイル型組織への変革
■日本生活協同組合連合会
新事業を手掛けたいメンバーを出島組織としてアジャイル運営

※試行錯誤という限りはその時点の目標と結果があるはずです。それが全社の成績と直結するような「目標」設定が出来ない限り成り立ちません。その点が曖昧ですので全社で採用できるとはにわかに信じられない特集でした。人事部の目標はどうするのでしょうか?アメーバの方が良いのでは?

【ケーススタディー:高砂熱学工業】(P.60)
<基幹システムはローコードで作れ 40年稼働のメインフレームを刷新>
40年以上使っていたメインフレーム上で稼働する基幹システムを、ローコード開発ツールを使って3年かけ自社開発されました。600以上の機能・画面を300人が関与しました。

会計はSAPのS/4HANA。SAPのバージョンアップ時に不具合が発生しないよう、特有の処理は工事側でスクラッチ開発しました。SAPはアドオン開発を一切せず、疎結合で「ASTERIA Warp」で連携しています。

ローコード開発ツールは複数を比較検討し、PoCを実施したり導入企業訪問したりして、ポルトガルのアウトシステムズ(OutSystems)を採用しました。200ページのRFPでベンダーを選定し、アビームコンサルタントを選びました。

各業務領域とは別に「クロスチーム」を設置し、標準化や品質管理を担当しました。このチームがCoEとして機能しました。

※記事のどこにもCoEの解説がなく驚きました。センター・オブ・エクセレンスの略で、「組織を横断する取り組みの中核となる部署や研究拠点」を意味します。トップレベルの人材やノウハウが集結した集団という事ですが、この記事の文脈では単なるPMO(Project Management Office)に見えます。
※OutSystemsを使うならデータモデリングが肝のはず。アビームコンサルタントは普通にデータモデルを理解されているかたが多い印象でした。どうやってデータモデルを押えたのか、データ移行はどうやったかなど気になる点が多くありました。

【動かないコンピュータ:NTTデータ、地銀5行】(P.64)
地銀の共同利用システム「MEJAR」が2022年8月8日15時から18時、内国為替の送受信ができなくなるシステム障害が発生しました。

原因はDBテーブルとインデックスの不具合。不具合の原因は平日13時に走るバッチ処理を忘れて通常休日におこなう処理を平日12時に行ったことです。

※この程度の障害は報告するほどの話でもないと思いますが、利用している5行が同時に障害が発生したという事はテーブル自体も同じものを使っている事ですね。共同利用とはそういう仕掛けなら情報漏洩しないのか心配になりました。

【新連載:業務現場で使える AIアルゴリズム 第1回】(P.70)
新連載が始まりました。野村総合研究所の鈴木 雄大氏がビジネスに使える最新のデータ分析アルゴリズムについて解説されます。今回は、「教師なし学習」の3つです。「教師なし学習」とは予測や判断の対象となる正解が存在しません。

そのため出来る事は「クラスタリング(グルーピング)」と「次元削減(データ特徴を抽出)」です。
1.k-means
クラスタリングする時にもっともよく使うアルゴリズム
 →簡単だが、何故その分析結果になったか可読性が低い
2.主成分分析
多くの属性から類似しているデータ項目をまとめる
 →次元を削減する
3.潜在クラス分析
表の縦横を同時にまとめるアルゴリズム。Yes/Noも対応可能
 →データの背後に隠れたセグメントがあると考える

※私の仕事には関係なさそうですが基礎教養にはなりそうです

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第229回】(P.82)
<IT部門は事業創出を支援できる 試行錯誤してモデルを描こう>
「システム設計のセオリー」「SE職場の真実」などで有名な赤俊哉氏の講演内容からDOBA(Data Oriented Business Approach)について解説されます。DOBAはJUAS(日本情報システム・ユーザ協会)が2022年3月末に出した報告書「データ経営が日本を変える」で提唱された方法論です。

データモデルを、システムを作るためでなくビジネスを可視化するために作ろうという主張です。
1.ビジネス鳥観図を描く
 →わかりやすく目的と方向についての記述があれば良い
2.データモデルを描く
 →ビジネスに出てくる主語や述語をエンティティ、
  動詞や形容詞をリレーションとしてとらえて日本語で書く
=>エンティティを特定したら用語集にまとめる
  業務のルールが明らかになればルール集にまとめる
3.プロセスモデルを描く
 →分かり易くアイコンを描き、業務の流れに従って線でつなぐ
=>5W2Hを記述する。5W2Hが書けないプロセスは書かない
 ※いつ(When)どこで(Where)誰が(Who)何を(What)
  なぜ?(Why)どのように(How)量(HowMany)
4.2つのモデルを見比べCRUDマトリクスを作る
 →Create/Read/Update/Deleteするプロセスを整理
=>ビジネスレベルでも整理する

4点を書くことで営業と工場のように互いに影響し合う立場の違う者同士が分かりあうことを最優先します。自分たちで描くことが重要。どんな見事なモデルでも他人が描いたものは自分たちの心に入ってきません。

※私個人はこの方法はやったことがありませんが、ユーザ自身が描くにはルールが明確でやりやすいだろうと思います。用語集は一般的にはデータ辞書とかリポジトリーとか呼びますが、ビジネスレベルですからこう呼んでいるのでしょう。

以上