日経コンピュータ2022.11.24 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<モダナイズ 最終ステージ 「ラスボス」メインフレーム攻略法>です。メインフレームで苦労されている企業は気になるでしょうが、一般的な読者に響くのかが疑問でした。業界別の主要トップ5の基幹システム状況とクラウド利用状況でも調査して欲しいです。

【ITが危ない:インボイス制度IT対応に黄信号 個人・中小零細で対応済は1%】(P.06)
2023年10月の制度開始ですが、実は2023年4月に税務署への届け出が必要なので期限は半年です。ところが売上高1000万円以下の企業では60.5%が「特になにもしていない」という調査結果でした(日本商工会議所)。

6年間の経過処置が設けられていますが逆にこれが対応を難しくしています
・最初の3年は免税業者からの仕入額の8割を控除できる
・残りの3年は仕入額の5割を控除できる
・2029年10月からは特別処置がなくなる
このため帳簿への仕訳が複雑になります。

日本税理士会連合会や日本商工会議所は免税事業者の控除を当分の間維持する事を求めています。さてどうなるでしょう。
個人的にはインボイス制度が存在しないのは日本くらいですから経過処置なく強制適用すべきだと思います。

【大阪の救急病院にランサムウエア 電子カルテ被害で手術・診療停止】(P.08)
10月31日に大阪急性期・総合医療センターの1300台のサーバ・パソコンが停止しました。稼働台数の約半数でした。厚労省の専門チームが調査したところ、侵入経路がわかりました。
・社会医療法人生長会が運営する調理センターから侵入
・米フォーティネット社製VPN装置バージョンが古かった

2021年10月に発生した徳島半田病院もフォーティネット社製VPNが原因と言われています。フォーティネット社製のVPNを使用されている企業は今すぐ確認が必要です。

【ランサムウエアの「身代金」 意図せぬ支払いにリスク】(P.16)
徳島半田病院にランサムウェアを仕掛けた犯罪者集団が
「病院側から身代金3万ドル(約450万円)を受け取った」
と表明し話題になっています。半田病院側は「調査修復費の名目で約7000万円を支払った」そうです。

 

調査報告書では多少曖昧に「何かしらの方法で修復に必要な手段を入手し」復旧したと書かれています。

千葉大学の石井徹哉教授は「事業者に詐欺罪が成立すると考えられる」と指摘しています。交渉することを病院側に了承を得ていても、犯罪者に利益を与えたことが有罪になるそうです。

交渉しない事が契約条件であればともかく、了承を得ていても刑法的に有罪になるとはにわかに信じられません。記事として採用した限りは裏付け取材して欲しいと思います。

【乱反射:大手18社の2022年7~9月決算 クラウドの伸びは最低の27.7%】(P.18)
成長の柱であるクラウドの伸びが27.7%増となり、北川氏が調査を始めた2015年から最低の伸びでした。

クラウド  売上高(百万ドル)、伸び率(%)
Microsoft  25,700                         24.2
Amazon         20,538                        27.5
Salesforce       7,143                        20.8
Google            6,868                        37.6

このままの伸び率なら次の4半期にはGoogleがSalesforceを逆転しそうです。とはいえ20%以上の伸びです。日本企業はうらやましいでしょうね。

【2weeks from 日経XTECH 10月31日(月)~11月11日(金)】(P.19)
10/31:米アマゾン7~9月期 営業利益48%減 AWSにも逆風
 →売上は増加したが利益は減少
11/1:LINE銀行の開業予定22年度から延期 決算会見で明らかに
 →前号で記事があった富士通の品質問題の影響?
11/11:「COCOA」機能停止版 11月17日から配布 年内めどに総括へ
 →筆者はもうアップデートして機能停止しました
11/11:メルカリがクレカ参入 与信事業を強化へ アプリ利用で評価
 →メルペイに加えてメルカード開始。還元率が人毎に違う

【モダナイズ 最終ステージ 「ラスボス」メインフレーム攻略法】(P.24)
<モダナイズ>の説明が書かれていません。メインフレーム+COBOLの基幹システムを<何とかする>程度の意味で使われているように思います。直訳では「現代化する」という意味ですが、サーバーの事なのか言語の事なのかよくわかりません。メインフレームも最新型が出ていますし、オープン系COBOL言語に変える事も記事ではモダナイズと書かれています。
 

NTTデータが9つの手法を定義されています。参考になりますので貼っておきます。


実際の手法として多いのは<リホスト><リライト><リビルド>です。3~4年前はリホストが主流でしたが、最近はリビルドやリライトが多いそうです。

リライト>ツールでCOBOLを別の言語に変える
リホスト>メインフレームからオープンシステムへ移行する
リプラットフォーム>オープンシステムをクラウドに移行する

リライトしたCOBOL風のJavaを「JaBOL」とも呼ばれているそうです。初めて聞きましたがちょっと差別風で嫌な言葉です。流行って欲しくないです。

テストとして<現新比較テスト>が必要です。ロジックを見切らないで移行するからですが、これがエンジニアリングと言えるのかは少し疑問です。
個人的には企業全体のリソースとトランザクションを整理してグランドデザインを描いたのちリビルドすべきと思います。

【トリドールHD、「二律両立」のDX 逆張りで挑むビジネス変革】(JP.36)
丸亀製麺で破竹の勢いのトリドール。その沿革が面白いです。
1985年:1軒の焼き鳥屋として創業
2004年:鳥インフルエンザで売上減。うどん屋にシフト
2022年:1700店舗を日本国内外に展開

二律背反でなく二律両立という言葉が強みの源泉です。多店舗展開するためには効率化してセントラルキッチンにすることがセオリーですが、それを「二律両立」させて躍進してきました。
 ・「手間暇をかける店舗を」「多店舗に展開する」
 ・「そこでしか出来ない体験」を「世界中で出来る体験」に

2019年、磯村康典氏がCIOとして就任。磯村氏は1993年に富士通のSEとしてキャリアをスタートし、ソフトバンク、スタートアップと亘り歩いた方です。就任直後はIT関連が間接費に計上されていたため、勘定科目を変えて明確に出来るようにするなど調査を行いました。その結論が「持たないIT」です。

1.世の中にあるSaaS(Software as a Servic)を組合せて使う
2.そのためVPNをやめゼロトラストネットワークとする
3.バックオフィスも出来る限りBPO事業者に移管する

同社が求める機能をSaaSが備えていない時は「他社も使える標準機能として新たに開発してもらえないか」を直接交渉します。他社で使えないような独自の機能は要求しません。

使用されているSaaSの1つとして「チームスピリット」が書かれていました。チームスピリットはSalesforceを使用したタイムカードシステムですので私も扱っています。この会社のモットーは「カスタマイズはしない。必要な機能は無料で追加するが全企業で使えるようにする」です。このモットーを聞いたのは2012年くらいでしたのでどちらが先かはわかりません。

Salesforce社も全く同じ考え方です。「SaaSとして提供されているものがあるなら臆面もなく使うべき」と言う方針です。この方針を取るには「目利き」が重要です。磯村氏は素晴らしいですが、目利きが出来る右腕を育てる事が出来るかが課題です。

【新連載:変革する組織をつくる チェンジマネジメント 第1回】(P.64)
<日本企業でDXが進まない 原因は社員の意識にあり>
日本アタウエイの大和屋氏の連載です。企業のDXを進めるためには社員1人ひとりの意識変革が必要です。その代表的な手法の一つが「チェンジマネジメント」です。この連載ではDXを成功させるためのチェンジマネジメントの考え方、ツールなどを紹介します。

チェンジマネジメントは元々1950年ごろから「人がどのように変化を経験するか」を理解する心理学として始まりました。1990年にはジョン・コッター氏の「変化の8段階プロセス」が出てきました。2000年以降は米プロサイなどチェンジマネジメントを専門とする組織によって体系化されています。

日本アタウエイ社は2014年からチェンジマネジメントを活用した支援を行い、現時点で20社以上を支援しました。

正直だと思いますが、8年で20社は少なく感じます。どれだけ劇的に変わったのか知りたいと思いました。調べると2019年に日本アタウェイはプロサイのパートナープログラムに参加していましたのでそのPRの連載なのかも知れません。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第228回】(P.76)
<リスキリングの場を提供する その役割はシステム部門が行う>
久しぶりに日経新聞の話から。日経新聞11月4日付1面<人工知能(AI)を使いこなせる人材をリスキリングで半年以上かけて育てる主要企業>は16.9%だったという記事。新聞記事としては「イノベーションを起こすにはリスキリングによる高度専門人材の育成が不可欠」と言う主張です。

コラムでは、ITや情報システム、システム部門という言葉が出てこないことに疑問を呈されます。<イノベーションを起こすデジタル人材なるものを育てるリスキリングをするのであれば、実践の場が不可欠で、それをシステム部門が提供すべきだ>という主張です。

そのためには、システム部門をリスキリングする3点の場が必要です。まずは<現行システムの実態を調べ、自社全体のデータモデルを作ってみる>事を薦められています。
1.データマネジメントの場(情報活用する元データ)
2.プロジェクトマネジメントの場(PMの経験)
3.イノベーションマネジメントの場(新事業創出の元情報)

システム部門が現場の業務を知らないという課題は書かれていませんでした。システム部門要員をライン部門に「レンタル移籍」させてラインのIT化を底上げする企業もあります。これは人数的に相当な余裕がないと出来ないでしょう。

このコラムは何種類かのネタ元がありますが、日経新聞ネタが個人的には好きです。この日経新聞の記事も読んでましたが、こういう視点では捉えていませんでした。海外のベンチャー情報も役に立つのですが、そういうネタは記事として取材して欲しい。

以上