日経コンピュータ2022.12.22 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<経営層・管理職のDX通信簿 パラドックス克服へ、学びの加速を>です。前号は会社自体をアジャイル組織に変えるという大きな話でしたが、今号は経営者をどう教育するのが良いかという視点でした。

【改正電帳法に骨抜きの懸念 紙保存を認める「特例」がDXに冷や水】(P.06)
どうやら中小企業の電帳法対応状況が悪いため「特例」を設けて紙での保存も容認する可能性があるそうです。
11月25日の日経新聞にその記事が出ました。特例なので例外ですが「資金を手当て出来ず会計ソフトを導入することが困難」という理由も認めますのでほぼどんな企業でも適用されます。


後回しになりがちな会計システムが、DX化するせっかくの機運をそぐ方針転換だという意見もあります。
個人的には、当初ルール通り突き進めるべきだと思います。ただ、タイムスタンプの付与の要件はやりすぎなので見直すべきだと思います。

【尼崎市は発注者の義務を果たしたか USB紛失事案の報告書を読み解く】(P.08)
USBメモリー紛失事案について2022年11月28日、第三者委員会が38ページの調査報告書を公表しました。その中ではBIPROGY側の問題を多数指摘されていますが、尼崎市の情報管理体制の指摘はわずかでした。

今回の事件を、受託者側だけが悪いという結論にすると防げなかったという結論になります。

【AI契約書審査サービスに見解 「シロ」のケースを政府が整理】(P.10)
AIを使って契約書の内容を審査するサービスが法律違反か。弁護士法第72条では<弁護士でない者が(中略)法律上の専門知識に基づき法律的見解を述べる「鑑定」を「業とする」>ことを違反としています。

内閣府・規制改革推進会議に設置されたスタートアップ・イノベーションワーキング・グループで<弁護士法に違反しない>との見解を示しました。その理由は、今はまだ、AIと言ってもひな形との違いを強調表示するだけなので「鑑定」には当たらないというもの。また弁護士が補助的にこういうサービスを使ったり「無償」の場合は違反しません。

簡単に言うとこのAIはまだ単純な判断しか出来ていないので違法ではないという判断ですから、AIの進化を止めるような見解です。この辺りの岩盤規制も撤廃する方向で検討して欲しいです。

【富士フイルムが本気のゼロトラスト EDRとSIEMに続き、SASEも導入予定】(P.11)
富士フイルムHDは2021年6月に社内へのランサムウエアの被害で1週間の業務停止に追い込まれ完全復旧には1か月を要しました。そのため経営層がセキュリティーリスクを再認識し、従来の「境界型防御」では守り切れないためゼロトラストに踏み込まれました。保護対象の端末は10万台です。
<導入済み>
EDR(Endpoint Detection and Response)

 =エンドポイント検出応答
SIEM(Security Information and event Management)

 =セキュリティ情報管理
SOC(Security Operation Center=サイバー攻撃対策組織)
<2023年までに導入予定>
SASE(Secure Access Service Edge)

 =ネットワーク・セキュリティ統合セキュリティモデル
SWG(Secure Web gateway:WEBアクセスの保護)
CASB(Cloud Access Security Broker:SaaSの可視化制御)
ZTNA(Zero Trust Network Access:リモートアクセス)

 などを含む

これらにどの製品を選定したかは公表されていません。個人的にはまた多量の3文字省略形が出てきたなという印象です。

【花王がローコードで製造現場をDX 工場勤務者が自らアプリ開発】(P.12)
衣料用洗剤や住居用洗剤などを製造する和歌山工場で、300種類の原材料を管理するスマートフォンアプリを社員4名が3週間で開発しました。ツールはマイクロソフトの「Power Apps」です。その他ローコード開発するアプリは263個を検討されています。

PowerAppsはマイクロソフトがEXCEL VBAの呪縛から逃れるために広げようとしているノーコードツールです。神EXCELよりはましだと思いますが他のツールに移りにくい印象。
違和感があるのは、単に製造現場のIT化を「DX」と呼んでいる事です。日経コンピュータ内でこの言葉を定義して欲しいです。

【乱反射:5人の社長の通信簿を作った 業績拡大でNRIは5、富士通は2】(P.18)
2022年7~9月決算から計算した、国内売上高成長率に基づきほぼ同期の社長の通信簿を作ってみたというコラムです。2019年7~9月期の売上高を100として2022年にどうかをみました。
                   成長率  5段階評価
・富士通の時田隆仁氏(2019年6月就任)   84   2
・日本IBMの山口明夫氏(2019年5月)   106   3
・NTTデータ本間洋氏(2018年6月)    114   4
・野村総合研究所 此本臣吾氏(2016年4月)132   5

面白いですね。富士通はこういう視点で見ても心配になります。

【2weeks from 日経XTECH 11月28日(月)~12月8日(木)】(P.19)
11/28:スマホ位置から避難者探すドローンを公開 ソフトバンクなど
 →ソフトバンクユーザは生き残り確率高い?
11/30:ゲートレス生体認証 NECがシステム 1分当たり100人を認証
 →2024年度に実用化。普通に歩くだけで認証
12/1:富士通がSaaS提供開始 食品卸業界向け業務工数を半減へ
 →買掛処理の請求書と買掛データの照合をAIで行います
12/8:三菱UFJ銀行が勘定系をモダナイズ 2031年度までに750億円
 →三井住友は500億円でハード入れ替えのみ

【経営層・管理職のDX通信簿 パラドックス克服へ、学びの加速を】(P.24)
ITに投資しても大した効果が得られない。1970年~1980年代の米国で論争があった「ソロー・パラドックス」です。日本では今同じように、デジタル変革(DX)に厳しい目を向けられています。
1.エンドユーザ視点がDXの価値を生む
IT投資が生産性向上の効果を発現するまでに10年~20年のタイムラグが存在していたことが確認されています。DXも同様だとすると投資が難しくなります。
2.経営層・上司はITに好奇心を抱け
3.社長から社員までみんなで学ぼう


【必要なのは伴走者 変わる「ITベンダーとの付き合い方」】(P.36)
「ご用聞き」としてなんでもいう事を聞いてくれる姿勢ではなく、共に新たなサービスを創出する「伴走者」としての振る舞いが期待されています。
■シャープ シャープが2次請け3次請けを含めて直接契約
 →手を動かせるエンジニアを求めると中小ITベンダーが増えた
■ビッグカメラ アクセンチュアを「伴走者」に選定
テラスカイ 内製化を支援する「内製化支援ソリューション
 →技術支援などを担う、CoEの立ち上げを支援するサービス
  派遣事業を手掛ける子会社を設立(1年で100社が採用)

【IT資格の新旧交代 AWSがオラクル超え】(P.46)
アンケート結果の表がたくさん載った詳細な分析ですが2点だけ書いておきます。
■効果を得られた資格
1.プロジェクトマネージャ(情処)  129点
2.システムアーキテクト(情処)   119点
3.データベーススペシャリスト(情処)116点
4.ITサービスマネージャ(情処)   111点
■実務に役に立った資格
1.PMP(Project Management Professional) 64点
2.AWS認定各種              59点
3.プロジェクトマネージャ(情処)     58点

筆者自身は情処のプロマネ、DB、ITサービスは合格しました。PMPは日本語になった時に少し勉強しましたが1億円以上のプロジェクトしか役に立たないと判断して受験しませんでした。みなさんもプロマネを目指してください。

【ケーススタディー:コニカミノルタジャパン】(P.56)
営業支援系システムを内製開発
コニカミノルタジャパンは2019年5月に営業支援系の見直しに着手しました。

それまでは米セールスフォースの「Sales Cloud」、ワークフローにNTTデータ イントラマート「intra-mart」を採用していました。

営業部門が主体的に要件定義から内製で行いました。
・業務プロセスを独SAP製のツール「Signavio」を用いて定義
 →定義したプロセスを疑似的に実行し画面のひな型を作成
・ローコードツールはintra-martを採用。

・SFAも同社の「DPS for Sales」

SalesCloudがひっくり返されたという残念な事例です。この事例は知りませんが、承認ワークフローは基幹システムとの連携が必要なことが多くありますのでワークフロー側に片寄したのかなと推測しました。

【動かないコンピュータ:米メタ】(P.60)
<「AI科学者」がデタラメなリポート執筆 SNSで炎上、2日ででも公開を中断>
米メタは2022年11月に「AI科学者:Galactica」を公開しました。科学に関連する様々な問題が解けるようになったと主張していました。
ユーザが様々な質問を入力すると、回答文にデタラメな内容や人種差別的な表現が含まれるとして批判が相次ぎSNSで炎上、公開中止に追い込まれました。

似た機能を持つ、オープンAIの「GPT-3」は簡単には試せない形で公開していました。同じオープンAIが、様々な質問に答える「ChatGPT」を一般公開したときは難しい問題に応える事よりも、倫理的に正しい回答をすることに重きを置いて開発していました。

メタとしては「気軽に試したうえで問題が出たらフィードバックして欲しい」という感覚で公開し、注意書きにも書かれていました。それが炎上しました。こういうタイプのAIについては、性能よりも安全性、倫理性により注力が必要なのでしょう。

【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第230回】(P.78)
デジタル化の「二周目問題」 システム部門はどうすべきか>
データマネジメント関連のサービスを行うリアライズの設立20周年記念イベントで早稲田大学の根来龍之教授の講演会の話。


二週目問題とは、デジタル化がもたらす変化は1回で終わらず2回、3回と続きます。二周目以降に真の脅威があるという意味
<例示>
本のデジタル化
1周目:ECショップ。売上高はリアル書店の方がまだ多い
2周目:電子書籍が特にマンガで急伸。リアル店舗に脅威
カメラのデジタル化
1周目:デジタルカメラ。老舗メーカーは優れたカメラ発売
2周目:カメラ内蔵したスマートフォン。カメラメーカーは撤退
道路地図
1周目:カーナビの広がり。地図会社が協力
2周目:スマートフォンでのナビアプリ

企業として二周目問題に対応する一つの打ち手は、データエンジニアリングです。使えるデータを事業部門や顧客に届けられれば、デジタル化の二周目問題への対処に貢献できます。脅威に対抗して事業モデルを変える場合、新しい事業モデルにそってデータがきちんと流れ、各種の判断ができるデータを意思決定者に伝えないといけません。そのためにデータの整備・統合・品質向上といったエンジニアリング活動がかかせません。

二周目問題という視点は面白いです。

以上