日経コンピュータ2012.06.21 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は「基幹系には まだ夢がある」です。なんだか微妙なタイトルですね。

他のフロント系だとかBI系だとかには夢がないと言いたいのか、基幹系は既に夢も希望もない不毛の土地だけど一点だけ救いがあると言いたいのか迷いました。読んでみるとどうやら後者の話のようです。基幹系の中の「タレントマネジメント」が「夢」だと日経コンピュータは主張されています。

基幹系の中心はPSI(生販在計画)ですが、夢がなくなるほど上手くできている会社を一社でも報道して欲しいものです。高価なERPを入れながらも自社に合わせるために大変苦労されている会社がほとんどでしょう。自社のビジネスを少しでも拡大するために夢を追いかけられていると私には見えます。どういう見方をすれば夢がないと見えるのでしょう。

【日本IBMが成果報酬型の新事業】(P.8)
顧客の経営成果と連動させた成功報酬型の新事業を企画しているそうです。過去にもコンサルタントベンチャーが何度もやってすべて失敗している形態です。
失敗の原因は、私見では2つあります。ひとつはコンサルティングは、事業の成功という生臭いものでなく顧客の意向を100%満足させる事を目的にするべきだという事です。簡単に言うと、失敗した時の責任についてたかだかコンサル料を無料にする程度の責任しか取れないのに経営判断に口を出せないという事です。もう一つはたかだかコンサルや業務システム程度で事業が成功したり失敗したりするキーファクターにはならないという事です。素晴らしい基幹システムよりも社員のモチベーションの方が重要でしょう。
イェッター新社長の社内改革の第一弾という事ですが、その会社に資本投資しない限り上手く行かないと思います。

【MSはLinux対応、オラクルはSFDC追撃 大手ソフト2社がクラウド戦略を転換】
(P.10)
マイクロソフトのAzureでついにLinux環境をWindows環境より25%も安く提供しました。対応するLinuxはCentOS、SUSE、Ubuntuです。最近はWindowsで動かないミドルウェアが増えてきましたのでAzureがPaaSでなくIaaSとして伸ばそうとするなら必須でしょう。ただ、ようやく3年ほど前のAmazon EC2になっただけですからまだ魅力はありません。
オラクルは6月に大きく方針転換してパブリッククラウドに本格的に参入しました。「オラクルが意識するのは米セールスフォース・ドットコム(SFDC)」だそうですがSFDCの大きな魅力の一つは製品体系がシンプルだという事です。オラクルクラウドは製品範囲が広すぎて恐らくオラクルの社員さんでも全部の製品を使える方はいらっしゃらないのではないかと想像します。

【ビッグデータ活用支援にIT大手が本腰 日立は2015年度、1500億円のビジネスに】(P.11)
このブログで何度か書いていますが、「どう使うかはわからないけど取れる情報を取ってためるのがビッグデータ」ならまず失敗するでしょう。日立はデータを預かり、活用目的を聞き取ったうえで、分析手法を提案するサービスを始めました。富士通、NEC、IBMなども似たサービスを始めています。本格ビジネスになるのは3年後(2015年)だそうです。

【IT大手が東南アジアで事業拡大 現地ベンダーを相次ぎ買収】

歴史的な円高のうちに海外企業を買収するべきだとこのブログで主張していました。各社も当然やっていたようで、買収状況が報告されました。
 ・NEC     2012.6 オーストラリア(予定)
 ・日立製作所 2012.5 マレーシア
 ・NTT データ 2011.10 ベトナム
        2012.1 タイ
お寒い状況です。生産拠点を探しているわけではないので、シンガポールを狙うべきでしょう。

【ウルシステムズと米タレンド、データ連携基盤構築で協業】

タレンドは、EBS(エンタープライズ・サービス・バス)などオープンソースのデータ統合ソフトウェアを開発している会社です。昨年日本法人を作りましたので、知名度を広げるために基幹システムが得意なウルシステムズと組んだのでしょう。タレンドに目を付けるとはウルシステムズは流石だと思いました。

【基幹系には まだ夢がある】
(P.28)
冒頭に書いた通り、基幹システムの最後の空き地である、タレントマネジメントシステムについての記事です。「タレントマネジメント」は今までは目標管理~成果主義の事でしたが、最近では社内のどこにどういう能力を持った人が居るのかというリソース管理が出来るようになりました。またゲーミフィケーション(遊びの要素)を入れて楽しませるという事も流行りかけていますが、日本でどれだけ定着するかは疑問です。

マーキュリープロジェクトオフィースというWEB広告などの制作会社が、社員向けに構築したシステムが掲載されていました。アルバイトを含む社員を評価するシステムですが、外注先を評価することも出来ます。「従業員が使うポータルサイトには、担当プロジェクト一覧とともに、進捗状況に合わせた収支が表示される」という事ですからソフト会社にも使えそうです。システムは、デジタルコーストの営業支援サービス「チームスピリット」をベースに作られています。
http://www.digitalcoast.co.jp/spirit/

【スマホで加速 「O2O」の威力】(P.58)
O2Oという言葉は、2012.1.5号 で言葉の定義だけ書きました。オンライン・ツー・オフラインの略で、ネットの情報からリアル店舗の集客につなげようと言うコンセプトです。10年ほど前に、クリックアンドモルタルと呼んでいたものです。

GPSやらマイクやらが標準装備されたスマホを利用すると今まで考えられなかったO2Oが実現するという報道です。結構驚きました。マクドナルド3000万人、コカコーラ1100万人のWEB会員がJリーグと連動してクーポン配信を行いました。好きなJリーグチームを登録してそのクラブが勝利するとマクドナルドで使えるクーポンが配信されます。その他、電子チラシサイトには200万人が登録しているなどここ半年~一年で大きく変わっているようです。

【最新サイバー攻撃に備える ハッカー集団があなたの会社を狙う】
(P.98)
ラックの西本専務理事(セキュリティ技術統括)の新連載です。私も昔、セキュリティインシデントの対応でラックさんにお世話になった事がありますがハッカー集団のような優秀な会社でした。

連載の第一回目では、「トヨタ自動車、三菱商事」などを「5月25日に攻撃すると予告」された事を受けて、企業はどういう対応が必要かを概説されています。「一般的にDDoSでシステムを止められるとセキュリティの甘い会社という見方をされてしまう傾向があるが、そんなことはないのだ」という指摘は重要です。今後の連載が楽しみです。

以上