日経コンピュータ2012.01.05 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

今年最初の日経コンです。特集は「経営者が求めるITの真価」。2011年に掲載された経営者トップ17名のインタビューを編集長が解説した記事です。一粒で2度美味しい典型的な記事です。もう一つの特集は「業務を変えるコンシューマーIT」と題してゲームなどの技術が業務に取り入れられているという記事です。でも、そんなわけがない(笑)
定型業務と非定型業務の区別すら知らない記者が書かれたのでしょうか。日経コンピューターはぜひ定型業務を軸に追求して欲しいものです。

(P.6)【顧客の儲けをITで支援 将来の全体最適を目指す】
コマツのCIOのインタビュー記事です。コマツはご存じのとおり建設機械にGPSを積む事で「One And Only」のビジネスモデルを構築し誰も真似できないほどの展開を見せています。この事はすごいと思いますが、多少食傷気味です。こんなビジネスが横展開出来るのでしょうか。扇風機にGPSを乗せて拡販してどういうビジネスが出来るのでしょうか。そういう他の業種の方も参考になるような話を読みたいです。

(P.9)【日産、クラウド全面導入の深層 IT部門主導で競争力強化に挑戦】
米マイクロソフトの「Dynamics CRM」と「Windows Azure」を全面採用すると発表されました。確かトヨタも電池関連でAzureの採用を発表していましたからマイクロソフトの食い込みには驚くべきものがあります。

(P.11)【NTTデータがアジャイル開発に本腰】
ウォーター型開発プロセスに基づく開発標準を進めていたが「中小規模の案件はユーザ企業の要求が変化しやすく、対応出来ないケースが多かった」ためアジャイル開発の開発プロセスを1年かけて作ったという記事です。私の経験では、要求が変化しやすいのは大企業です。中小の要求を抑え込めないのはPMが弱いからです。弱いPMならアジャイルにするともっとひどい状況になるでしょう。しかも「情報を入力するとソースコードと設計書を生成する」ツールを作ったそうです。まあ、天下のNTTデータですからアジャイルが出来る要員を連れてきて帳尻を合わせるのだとは思いますが、明らかに先祖がえりしています。

(P.16)【O2O Online to Offline】
昔、10年ほど前には「クリック・アンド・モルタル」と呼ばれ、実店舗の商売とネットサービスとの融合の事でした。今はO2Oと呼ぶそうです。この言葉を知りませんでしたので書いておきます。

(P.24)【経営者が求めるITの真価】
同じ内容を再掲して恥ずかしくないのかなと思いながら読みました。最後に「情報システム部門に求めるもの」という10のまとめがありました。
1:世界中にアンテナを張り最新技術を把握せよ
2:技術レベルで絶対に世の中に遅れをとるな
この2つは上にも出てきたコマツさんの話でしょうが、一般の技術者やIT部門に言う話だとは思えません。残念!

(P.44)【業務を変えるコンシューマIT】
楽天グループが「Facebook」や「twitter」とよく似た機能を持つシステムを業務に使っているという話。salesforce chatterももちろん出てきます。サイボウズの社長が「コンシューマITの進化の速さに、情報システム部門がついて行けない事態になっている」というのは素直な感想でしょう。情報システムに断りなくラインの部門が勝手にクラウドシステムを使い始めるという例が多発しているそうです。
今まで企業をサポートしていたSierという職種はそれに輪をかけてついていけない人が多いです。企業も見極めが必要でしょう。

(P.66)【ITベンダー22社 トップ年頭所感】
こういう所感のパターンは決まっています。昨今の震災だとか不況だとかクラウドだとかの環境を述べてから「3つのキーワード」を挙げる。そのキーワードは自社が解決策を提供出来るという視点から選ばれている。つまり所感でなくCMとしてスペースを使われています。
ところが、セールスフォースだけは唯一「2012年は、イノベーションを日本から発信する年としたい」から始まっていて驚きました。「日本のおもてなしの文化は世界最高水準」など日本の良さを再認識させてもらえる文章でした。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111227/377618/

(P.95)【見えてきた2012年の三つのキーワード】
システム部長会のアンケートで「重点投資分野」は次の順位だったそうです。
1:営業支援(33%) 2:セキュリティ(33%) 3:BCP<事業継続>(30.2%)
営業支援って広いのでどういう意味なのか解説して欲しかったです。

(P.106)【動かないコンピュータ 警察庁】
NECがリリースした「指掌紋自動識別システム」で、掌紋を数値化するサブシステムに誤って指紋用のプログラムを搭載してしまいました。
 2007年 1月 誤ったままリリース完了
  →誰も気づかないまま4年間経過
 2011年 5月 鑑識官の研修中に数値化データの異常に偶然気付いた
  →NECに連絡し、調査依頼
 2011年 6月 1ヶ月の調査後「技術的な限界による誤差
 2011年 7月 人間が検証するとやはりおかしいので再調査依頼
 2011年10月 3ヶ月の調査後、リリースミスが判明
リリース担当者は「何をもってリリース完了とみなすか」という最低限のテスト項目すら認識していなかったのか大いに疑問です。作業のミスが誰にでもある事を前提としたプロセスを作り、こういう事態を防ぐ事は新人でもやっているはずです。もしリリース手順すら作ってなくて本番リリースしていたのなら、再発を防止する事は不可能です。そんな事はないと思いたいです。

以上