HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

◆ほぼ毎月、IT勉強宴会 を開催しています。勉強会の内容は毎回詳細なblogにまとめてあります。御用とお急ぎでない方はお立ち寄り下さい。
www.benkyoenkai.org
◆チャンスがあればぜひ実際のIT勉強宴会にもお越しください。文字だけで理解出来るのは10%以下だろうと思います。

特集は<いつの間にか生成AI 業務SaaS大手5社が組み込みへ>です。Salesforceの生成AIについても詳しく出てました。試してみたい方は、ここから無料で試せます。とは言え生成AIが使えるからそのSaaSを選ぶという事はまだなさそうです。

編集長セレクト】(P.06)
>グーグルのCloud Spannerがグラフやベクトル検索に対応 AIアプリを強化
ベクトル検索はLLM用の検索方式。最近のトレンドかも
>NEDOが60億円を投じて「偽情報対策システム」 開発担当は富士通
※新エネルギーの国立法人が何故?しかも富士通とは

IT業界にも人手部族倒産の懸念 ユーザ企業のDX停滞も】(P.08)
2024年上半期(1~6月)の人手不足倒産は182件。主に建設業と物流業でした。ただ、IT業界の人手不足は倒産という形ではなく「受注が出来ない」という形で現れやすいです。人手不足以外の理由を含む倒産はIT業界でも増えています。その真因は人手不足でしょう。

PM経験などがあるシニア層の採用には、定年引上げなど環境の整備、若手の採用にはキャリアパスの整備が重要です。

※社内に教育体制を持つ必要性が増していると感じています

いつの間にか生成AI 業務SaaS大手5社が組み込みへ】(P.10)
1.対話、開発、導入 標準機能で活用支援
大手SaaSベンダーが提供する生成AIの領域は大きく4つあります
(1)AIアシスタント     →自然文入力で回答
(2)標準機能として組み込み →問合せ内容を要約など
(3)新機能の開発支援    →外部LLMへのAPIなど
(4)開発の補助       →アドオン開発の簡素化など
2.顧客対応を円滑に 独自機能開発も支援
セールスフォースの生成AI機能>
・データをマスキングして外部LLMに渡す機能(TrustLayer)
・2024年8月から「DataCloud」でベクトルDB機能
・対話型で生成AIを使った作業(Einstein Copilot)
3.2種類のモデルを併用 業務の流れを最適化
サービスナウの生成AI機能>
・独自開発するLLMを利用可能
・外部LLMとの連携機能も提供
4.ERPで基幹系に浸透 アドオン開発も支援
SAPの生成AI機能>
・外部LLMの対話型AIアシスタント(Joule)
 →業務プロセスの8割で利用可能
 →製品自体の導入を支援
 →ABAPのコード自動生成も可能
・2024年4月ベクトルデータの機能を発表
Oracle FusionCloud ERPの生成AI機能>
・50以上のAI関連機能を組み込み済み
ワークデイの生成AI機能>
・自社開発の独自LLMで生成AI機能を実現
・顧客データで精度を上げる「ラストマイルチューニング」

※各サービスですごい勢いで機能追加しています。Salesforceで電話内容をテキスト化して要約してくれる機能や、お客様に出すメール本文を作成してくれる機能は既に実用的です。

特集インタビュー:米スケールドアジャイル ハリー・コーネマン氏】(P.34)
企業活動にアジャイル開発の考え方を取り入れる「SAFe(Safe,Scaled Agile  Framework)」の導入を支援する会社。2011年創業当初は大規模なチームでアジャイル開発を実施するための方法論だったのですが、事業の俊敏性を高めるフレームワークへと変わってきました。

独自動車部品大手の、ボッシュは2016年ごろから変革を開始し、アジャイル組織に再編しました。社内に優秀な「チェンジエージェント」が存在したことと、経営陣の支援が手厚かったため成功しました。

※このインタビューの前に「アジャイル組織」特集が載っていたのですが、システム開発の話としか読めませんでした。全社の組織論だったとしても、クロスファンクショナルチーム、アメーバ組織、ティール組織、ホラクシー組織などとの違いが理解出来ませんでしたのでスキップしました。

サードパーティークッキー廃止撤回 グーグルが方針転換、利用者の選択式に】(P.70)
米グーグルは2024年7月、「Chrome」でサードパーティクッキーを廃止する方針を撤回し、廃止するか否かをユーザが選択する方式に切り替えると公表しました。
デフォルトが「使わない」なのか「使う」なのかはまだ発表されていません。

※AppleのSafariがサードパーティクッキーを2017年に完全に廃止した時「広告主の収益が60%下がった」と言われていました。実質上広告会社であるGoogleは他の方法を模索していましたが、ついに諦めたようです。

デジタル庁が公開して「認証アプリ」 民業圧迫や個人データリスクに懸念】(P.72)
デジタル庁はAppStoreとGooglePlayに「デジタル認証アプリ」を公開しました。これによりAPIを呼び出すだけで自社のシステムにマイナンバーカードを使った本人認証を組み込めるようになりました。
懸念点は2点あります。
1.認証関連APIの無償提供による民業圧迫
 →公的個人認証サービス事業者が共存できるか
2.認証サービスの利用履歴をデジタル庁が把握できる

※どちらの懸念も気にせず広まって欲しいです。

乱反射:大手18社の2024年4~6月決算 AIの効果で売り和え高は9.5%増に】(P.77)
企業向けIT世界大手18社の2023年第2四半期決算の報告です。データセンター、ソフトウエア、サービス、クラウドの4分野合計について、売上は第1四半期は前年同期比7.0%増と「過去3年で最低の成長」だったのですが、今回は9.5%増と回復しました。AI関連の需要増が原因と分析されています。

<クラウド>  売上(M$) 伸び率(%)
マイクロソフト  36,800  21.5
AWS        26.281  18.7
グーグル     10,347  28.8
セールスフォース   9,133  10.7

※セールスフォースの伸び率は10年前は20%以上でしたがここ数年は10%そこそこで定着しました。

日経XTECH 2024年7~8月の好評記事】(P.80)
>Ankerの屋外カメラ「Eufy Solar Wall Light Cam S120」、配線も充電も不要
これ は欲しい!1万5千円です。
>東京都で約700人分の個人情報が流出、原因は富士通Japan作成の説明会資料
※なんだか頻繁に発生させてますね
>マイナカードで国家資格を証明、2025年度にも84資格が対応予定
※医師、看護師、介護福祉士など

ケーススタディー:menu】(P.82)
マイクロサービス基盤を追加 移行対象を絞り「Go」で書き換え
フードデリバリーのmenuは、元々テイクアウト事業だけを行っていましたが、2020年4月にデリバリー事業に参入しました。コロナ禍で需要が「10倍どころではない」ほどアクセス数が延びたため、2022年始めからプロジェクトスタート。2023年にはインフラの大部分を構築。2023年11月に新基盤上の新機能開発に着手しました。

新システムは従来システムから移行対象の機能を絞り込んで徐々に移行します。その基盤は、次の通りです。
    従来システム  新システム
 言語  PHP     Go
 DB  CloudSQL   TiDB

    (MySQLベース) (MySQL互換)
 環境  仮想マシン  コンテナ(kubernetes)
    (GoogleComputerEngine)


※機能を絞って徐々に移行する運用が秀逸だと感じました。TiDBはキーバリューストアを使ったMySQL互換の分散データベースです。詳しくは、ここ

キーワード:フィジカルインターネット】(P.93)
インターネットの考え方を適用した新しい物流モデルの事です。輸送の途中にハブを設け、貨物規格を統一し、物流事業者間で物流資産を共有して荷物のやりとりをします。

フィジカルインターネット実現には3つの要素が必要です。
1.コンテナ(輸送容器)
2.ハブ(共同の物流拠点)
3.プロトコル(ルール化・標準化)
2024年5月は複数企業がサービスの事業化に向けた検討をスタートしました。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第273回】(P.106)
オープンソースに正しく向き合う 最新技術の開発者と共に成長へ
米メタは、2024年7月23日、大規模言語モデル(LLM)の最新版Llama3.1をオープンソースとして提供しました。学習モデルの規模が4050億パラメータに達するLlama3.1 405Bの性能はオープンAIの最新モデルGPT-4oに匹敵するそうです。

米メタのCEOザッカーバーグ氏はブログでオープンソースで公開する意義を説明しました。
1.なぜ開発者にとって良いのか?
 →独自モデルを訓練、ベンダーロックインされないなど
2.なぜMetaにとって良いのか?
 →クローズドエコシステム(Apple)にロックインされない
3.なぜ世界にとって良いのか
 →少数の企業に力が集中することを防ぎ、より繁栄で安全

他の企業もオープンソースのAIが増えています。
米エヌビディア:創薬企業と創薬向けLLMのnach0を公開
米セールスフォース:学習のためのデータセットMINT-1Tを公開

ザッカーバーグは上記ブログで「一緒に構築しよう」と呼びかけています。

※独自学習させるコストを考えると個人では手を出しにくいです。オープンAIのように無料で使えればメリットは受けやすいでしょう。

以上

特集は<官製デスマーチ 自治体システム標準化、政治主導で暗雲>です。自治体システムに興味がある方は少ないと思います。同時に<日本流ERP導入の正攻法>という特集も載ってました。後者中心に報告します。

編集長セレクト】(P.06)
オープンAIがAI検索機能「SeachGPT」発表 将来的にChatGPTと統合へ
 →申込が始まっています。Googleとガチンコ勝負!
NTTコムがトランスコスモスと業務提携 tsuzumi活用の新サービス開発などを目指す
 →LLMモデルの次期コンタクトセンター。平凡ですね

官製デスマーチ 自治体システム標準化、政治主導で暗雲】(P.10)
全国の自治体は2025年度末までに主要業務20種を標準仕様に準拠させ、その上で政府運営の「ガバメントクラウド」に移行しなければなりません。
※2020年の骨太の方針で示され、同年菅内閣で法制化されました。ここにまとめました。
 2022/03 標準仕様書を作成する
 2026/03 標準化を終えガバメントクラウドに移行する

1.「常識から逸脱」異例の改修の実態
(1)アプリとクラウドの両方がプリンとババロアを重ねている
 ・標準化仕様が2024年になっても改版し続けている
 ・ガバメントクラウドもチューニングを進めて変化している
(2)急に発表された定額減税で少ない人材の取り合い状態
2.改版続けた「仕様書」 迫る移行期限に戸惑い
(1)2022年から現在まで、ほとんどの業務仕様書が3回以上改版
 →例えば「標準フォント」が決まったのは2024年3月
  フォントファイルの提供は2024年9月予定
(2)ITベンダーのSEリソースの逼迫は深刻
 →NECは標準システム構築だけで約1500人のSEを稼働
(3)いまだに続く仕様の不透明さ
2024年6月26日、デジタル庁は55社のパッケージ開発ベンダーを集め「第一回共通機能等課題検討会」を開催しました。主な議題はデータ連携に関連する次の2点
①どのレコードが最新かを判断する「最新フラグ」の設置
②DBの更新履歴に伴い付番する「履歴番号」の設定
 ※全マスタに履歴番号があるのは異様。渡辺さんのブログ

で詳細に解説されてます。

3.コスト上昇は不可避 進め方も利用法も疑問
コスト削減が目的の一つでしたが、先行検証の自治体でコスト増が相次いでいます。また移行が集中するため期限に間に合わない自治体が続出する可能性が高いでしょう。
4.「期限ありき」は限界 岸田政権は目的再考を
なぜ2025年度末期限とするのかという目的を政治主導で示すべきでしょう。たとえば地方公務員の減少に対応するなどの目的が必要でしょう。

※一旦クラウドに全データをアップ出来れば、その後中央から手が出しやすくなるはずです。ぐちゃぐちゃのままで「連携」することだけは避けて欲しいです。

日本流ERP導入の正攻法 Fit to Standardを現実解に】(P.22)
SaaS型ERPの活用が広まるなか、その標準業務プロセスに自社の業務プロセスを合わせる「Fit to Standard」の採用が主流になっています。とはいえ合わない部分をどうするか。

従来のERPの導入は「Fit and Gap」でした。Gapのある部分はアドオンソフトを開発します。「Fit to Standard」では合わない部分は業務プロセス改革で実現することになります。とはいえ「合わない部分の対処法」は各社知恵を絞っています。


UBE三菱セメント>タタがS/4HANA導入支援
 ①SAP Business Technology Platform(BTP)で開発
 ②他社のパッケージ製品を使用
 ③MS Azure上でJava/C#を使って開発
赤城乳業>アドオン開発したSAP ERPからS/4HANAに移行
まずは「SAP Signavio」で自社業務と合わない部分を把握しました。標準機能でカバーしきれない部分は内製化を優先するため次の3ステップとしました。
 ①ASTERIAで連携しローコード(OutSystems)で開発
 ②SAP Analytics Cloudで開発
 ③これらで難しい部分はBTPで開発
ライオン>SAPのクラウド上にオンプレミスS/4HANAを導入
会計と生産は8割が標準に適用しましたが、販売は4割でした。

オンプレミス版ならBAPI(Business Application Programming Interface)での開発が可能です。

標準に合わない時、アドオンは作るのではなく、「探す」
①ERPベンダーの提供するSaaSを検討 →SAP Concurなど
②ERPベンダー以外のSaaSを検討 →Salesforceなど
③PaaSの利用や、アドオンの開発を検討

※9割がSAP S/4HANA特集でした。最後に少しOracle EBSが載っていました。日本のパッケージベンダーにも取材して欲しいと思いました。

活況スポットワーク タイミー追って群雄割拠】(P.34)
スキマ時間に企業や店舗で働く「スポットワーク」が注目されています。アルバイトなどの求求職者と求人企業を仲介し、数時間単位で単発の仕事が出来る。仕事を完了すると報酬が即日支払われます。

そのスポットワーク市場の先駆者はスタートアップのタイミーです。2024年7月26日に東京証券取引所グロース市場に上場を果たしました。2018年8月にサービスを開始し、5年間で登録ワーカー数が5倍の775万人、登録事業者の拠点数が9倍に成長しました。今や大手も参入しています。
 

シェアフル(2019年1月~、656万人)
・タウンワークスキマ(2024年秋予定、リクルート)
LINEスキマニ(2021年3月~、2100万人)
メルカリハロ(2024年4月~、500万人)

フォーカス:タイミー 代表取締役 小川 嶺氏】(P.40)
上場により安心して使えるサービスだと証明したいと考えています。まだ不安を持たれている方も多いです。労働というセンシティブな分野のサービスですので、政府を含むステークホルダーに信頼していただく事も今後の成長のために重要です。

タイミーは潜在的な労働力を掘り起こすサービスを提供しています。本当は働きたいけど、うまく掘り起こせていない労働力を「潜在的労働力」と定義しています。タイミーは潜在的労働力の需要を喚起するサービスです。

2018年のサービス開始時点でマッチング支援のビジネスモデル特許を取得しました。そのため他社は特許侵害にならないように調査する時間が必要になり参入を一定程度遅らせる事が出来たと感じています。

役割が曖昧なマルチタスクで仕事をこなしている限りDXは進みませんし求人も難しいです。そのため求人企業の業務の可視化と切り分けといったBPRの支援にも力を入れています。

またワーカーが良い働きをしたと認められた時の「バッジ機能」に力をいれています。バッジが集まれば正社員の道につなげられる「タイミーキャリアプラス」も始めました。

※学生時代に企業されて6年で上場というスタートアップは久しぶりです。リクルートの江副氏のようです。楽しみにしたいと思います。

マネフォと三井住友カードが提携 個人向け事業、カギは「スピード」】(P.87)
マネーフォワードの個人向け事業を分離して三井住友カードと共同出資会社を設立します。三井住友フィナンシャルサービスが提供する個人向けの総合金融サービス「Olive」も統合します。

新サービスの一例として検討しているのがAIアシスタントによりお金の使い方をアドバイスするサービスだそうです。

「牛角」のレインズが業務連絡を刷新 電子メールからクラウドサービスへ】(P.88)
本部と店舗間の情報共有手段を、電子メールからドリームアーツの「Shopらん」に変更し、月200時間分の集計作業を削減しました。

ドリームアーツは文書管理ワークフローのSmartDBが有名ですが、Shopらんも多くの有名企業に使われているシステムです。

日経XTECH2024年07月の好評記事】(P.94)
マクドナルドのシステム障害、4日目に突入しても全面復旧せず
 →クラウドストライク障害との関連は不明
大規模システム障害で米国が大混乱、「クラウドストライクショック」いまだ収まらず
 →米国では「史上最悪のシステム障害」とも

動かないコンピュータ:米クラウドストライク】(P.102)
2024年7月19日午後1時ごろ(日本時間)、全世界のWindowsコンピュータでブルースクリーンエラーが多発しました。原因は、米セキュリティー大手クラウドストライクが提供するEDR(エンドポイントでの検知)製品「Falcon」の自動更新でした。

影響は全世界で850万台、全体の1%未満ですが、大手企業が導入している製品でしたので影響は甚大でした。
・テスラの工場が生産ラインの停止
・米デルタ航空で6000便以上欠航
・USJのパーク内の物販や飲食のレジが使えなくなる

クラウドストライク社は約1時間後に修正した設定ファイルを再配信しましたが既にブルースクリーンエラーになっている端末には配信されませんでした。

根本原因は配信を小規模の拠点から徐々に始めず、全世界一斉配信したことでしょう。

※Salesforceは年3回メジャーバージョンアップがありますが、社内を最初にバージョンアップし、一か月以上運用してから3回に分けてリリースします。

極言正論:日本のデジタル赤字は5兆円超 実は「少なすぎる」のが問題だ】(P.106)
デジタル赤字、デジタル小作人に関心が集まるようになっています。

デジタル赤字>日本企業がGAFAMといった米国のITベンダーに巨額のクラウドサービスの利用料やソフトウエアのライセンス料などを支払っていること。SAPを持つドイツのようにグローバルで通用するプロダクトを持つITベンダーが存在しないことも赤字の拡大に拍車をかけています。

デジタル小作人>GAFAMのクラウドサービスなどを借りてビジネスにいそしむ日本企業を、地主から土地を借りて農業を営む小作人の例えて言っています。「デジタル地主」であるGAFAMなどの土地(=クラウド)を借りて、デジタルサービスなどを立ち上げても、利益の多くが「地代」として吸い上げられます。

日本ではいまだにオンプレミスの独自システムにこだわる企業が多く、欧米や新興国の企業に比べると、クラウドサービスやERPなどのパッケージソフトの利用は送れています。むしろデジタル赤字が少なすぎる事が問題じゃないでしょうか?

日本企業が独自システムにこだわり続けたことで、国内のITベンダーは顧客の要望を聞いて独自システムを開発する安直な「人月商売」によって楽々と収益を上げる事が出来ました。そのため世界に通用するプロダクトを生み出す必要がなくなったのかも知れません。

※「デジタル小作人」という言葉は面白い表現ですね。

日本企業のDXを阻む 3つの誤解 第2回】(P.112)
<「社員全員でDX」は誤解 推進人材を明確に決める>
日本の多くの企業「DXは全社的な課題だから全社員で取り組むべきだ」と考えています。ところがこの考え方は逆にDXを妨げる原因になります。

全社員を対象にeラーニングを行い新しいITシステムを導入しても、社員によって取組みにばらつきが生じやすくなります。現場の社員に「余計に時間を取られる」などネガティブな反応があると逆効果になります。

現場の業務とDXを接続してリーダーシップを発揮する「DX推進人材」の育成が重要です。

※全員教育を謳っている企業の「その後」を取材して欲しいです。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第272回】(P.118)
<価値を生む「正しいこと」を行う情報システム部門になるために>
さきごろ発行された「データマネジメント知識体系ガイド第二版 改訂新版」から「正しいこと」を行うにはどうするかを検討します。
この本はデータマネジメントプロフェッショナルの国際団体であるDAMAがまとめた700頁近い対処です。通称はDMBOK2(ディンボック・トゥー)と呼びます。

DAMA-DMBOKフレームワーク全体を示すための2つの図があります。


1.DAMAホイール図
データマネージメント知識領域を定義しています。真中の「データガバナンス」が周りの10領域の取組を監督(ガバン)する構成です。この11の知識領域について、3章から13章に解説されています。前回のこのコラムで解説された「データスチュワードシップ」は主にデータガバナンスを担います。
2.環境要因ヘキサゴン図
この11の領域を説明するために、「人・プロセス・技術」の枠組みを用意しています。3章から13章の各章ではそこで取り上げる領域について、「ゴールと原則」を述べ、具体的な作業項目(アクティビティ)を説明し、「ツール」「技法」に触れ、人に関わるガイドライン(「役割と責任」「組織と文化」)を提示して締めくくっています。

「正しいこと」とは何でしょうか?法規制やルールの順守などについてDMBOK2では第2章で「データ取扱倫理」として解説しています。ただこれらを守ったとしても価値を生まなければ、正しかったとは言えません

情報システム部門の側から「本来のデータガバナンスを議論しよう」と働きかける事をこのコラムでは推奨されています。

※前号の「データスチュワードシップ」と、この「DMBOK2」はNPO法人IT勉強宴会で保有しています。読んでみたい方はお声をかけて下さい。

中田敦のGAFA深読み:アマゾンやMSに「隠れ買収」疑惑 AI新興との取り引きで創業者引き抜く】(P.128)
米国では大手IT企業によるAIスタートアップの買収は市場独占などの懸念がありFTC(Federal Trade Commission:連邦取引委員会)が調査するという規制が存在します。それを回避するような案件が報告され、FTCが調査を始めました。
<アマゾン> AIスタートアップの米アデプト
1.共同創業者とチームの一部がアマゾンの研究チームに移籍
 →100名中80名が移籍することが明らかに
2.アデプトのLLMなどのライセンスをアマゾンが購入する
<マイクロソフト>スタートアップの米インフレクションAI
1.共同創業者を引き抜きほぼ全従業員がMSに移籍
2.技術使用料として6億5千万ドル支払う

実質買収でしょうが禁止に値するかは微妙でしょう。

以上

特集は<永遠のJava 「理想のCOBOL」として盤石の地位築く>です。無料で使えるJavaディストリビューションの話かと思ったらなんと90%はOracleJavaの話でした。

SUNをOracleが買収していきなり有償化したのは、昨今のVMwareのライセンス高騰問題のさきがけのような事件でした。Oracleは最近「アルバイトも含む従業員数に応じた課金」という使わない人からもライセンス料を取るという暴挙に出ました。企業としての信用を毀損する振る舞いです。
今後Oracleの公告が増えるのか楽しみにしておきます。

編集長セレクト】(P.06)
NTT東西が紙の「タウンページ」を廃止へ 130年の歴史に幕
※ピーク時の半数の2600万部発行していたのにびっくり
三井住友銀行が新勘定系システム移行を2025年1月開始 2026年度中に完了予定
※NECメインフレーム、500億円予定。みずほは4000億円超

永遠のJava 「理想のCOBOL」として盤石の地位築く】(P.10)
どれだけ便利であってもOracleJavaを採用するリスクが高いと思いますので目次だけ紹介します。
1.システム開発では盤石 悪いイメージが足かせ
<JavaはCOBOLから引き継いだ「保守的なイメージ」という問題>
2.記法の簡略化を推進 初心者に優しい言語に
<Javaは初心者が学び始めるハードルが高いので簡素化>
3.着々と進む機能強化 AI開発を見据える
<AI開発向けライブラリーをJavaから使いやすくする改良>
4.突然の高額請求のワナ ライセンスに注意
<ライセンスによっては高額な利用料を要求される>
・2023年1月に登場したOracle Java SE Universal Subscriptionでは、一時雇用も含む従業員数に応じた課金だけになりました。単価は1人当たり月額15ドルです。
(単純計算すると、1万人で年間2.7億円ほどになります)
 

※Oracle JDK以外のJDKは同じOpenJDKをビルドしていますので基本的に機能は同じです。SalesforceはOracleが有償化した瞬間、Zulu推奨に変わりました。Javaも色々あります

混迷の定額減税 企業や自治体の負担増、問われる政策効果】(P.26)
減税はすでに始まっているのに詳細な解説。今更感はありますが、私自身ようやく理解出来ましたので詳細に載せます。
1.家族構成で変わる額 企業事務に重い負担
・4万円x扶養数が減税されます。減税額を明記します
(1)国が徴収する所得税から3万円x扶養数を減税
 1)2024年6月~12月の給与支払で完了させます
 2)6月に賞与がある場合は早く支払う方から減税する
 3)減税しきれない時は12月に「年調減税
(2)地方自治体の財源である住民税から1万円x扶養数を減税
 1)税額を自治体が計算して企業に通知する(通常通り)
 2)企業はその額を住民税として徴収する
2.約3ヶ月で突貫対応 ITベンダーの苦闘
<給与パッケージは3ヶ月程度で新機能追加>
3.減税なのに現金給付 規模に戸惑う自治体
対象者の2024年の所得税から減税額分を引ききれない場合は「調整給付」として現金を給付します。その事務作業は地方自治体が行います。
減税対象の納税者6000万人の約4割の2300万人いると推計されています。仮の値を2024年7月か8月に通知する予定ですが、正しい調整給付の金額は2025年5月か6月に決定する予定です。なお2024年に過大に給付されたとしても2025年の計算で返金する必要はありません。
4.企業を襲う対応費 政策効果を算定せよ
<果たして妥当な経済対策だったのか、効果を検証すべき>

※今回の減税は官僚にも党にも根回しせず岸田内閣が突然指示しました。4月末で終了したガソリン補助金も6月末に官僚にも党にも根回しなしで8月から3ヶ月再開しました。日本は民主主義ではなくなったのでしょうか?

大手ITの生成AI競走 次は「オンデバイス」】(P.38)
大手プラットフォーマーの生成AIについての新施策のトレンドは、クラウドを使わずにデバイスローカルで動く「オンデバイス生成AI」でした。

クラウドLLM:数百億~数千億パラメータ
オープンソースLLM:70億~130億パラメータ
オンデバイスSLM:30億パラメータ(SLM=SmallLanguageModel)

GoogleのSLM:スマホ「Pixel」に搭載、

 Chromeのパソコン版にも組み込み予定
MicrosoftのSLM:Copilot+PCで実現済み
AppleのSLM:iPhoneおよびMACの上位モデル

※ローカルデバイスで反応出来るとレスポンスが圧倒的に有利ですので、どういう応用が出来るのか楽しみです。

インタビュー:米データロボット CEO デバンジャン・サハ氏】(P.44)
データ分析プラットフォームを手掛け、より簡単にAIを業務に使えるようにする会社です。2012年に米国で創業し2021年から日本で事業を開始しています。

データロボットのプラットフォームは大きく2種類のAIで構成されています。
<予測AI>商品の需要や顧客の行動などを予測する
<生成AI>予測AIから得られたデータから文書を生成する

例えば、病院であれば、患者が退院する場合
<予測AI>再入院する確率やその原因などを予測
<生成AI>再入院を避けるために気を付けるべき点を通知

日本では今後、データセンターを東京に設置することで顧客は国外にデータを持ち出すことなく当社のサービスを利用できるようになりました。また安価で導入しやすい中小企業向けサービスを開始しました。日本は文章の出力の時、言語表現を業界に合わせるニーズが非常に高いです。

※これで12年もビジネスされているのに驚きました。プリファードネットワークスは2014年設立でした。

日本オラクルが「続VMware」宣言 レガシーマイグレーションを強化】(P.68)
日本オラクルは事業戦略説明会を開きました。その中で建機大手の日立建機がVMawreの仮想環境上に構築したオンプレミス環境のサーバ群を、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)のVMware支援サービスに移行した事例を紹介しました。
三澤社長は、「脱VMware」はさほど簡単ではないので「続VMware」をしっかり支援すると言い切りました。

※利用者が広がったタイミングで一気にライセンス費用を上げるという同様の事をしている両者ですので多少心配です。

動かないコンピュータ:堺市、川崎市、さいたま市など】(P.84)
<定額減税の処理で不具合相次ぐ 短い準備期間で検証不足が明るみに>
地方自治体の定額減税処理で誤りが発生しました。
◆日本電子計算の「WizLIFE」パッケージ
 →県民税を切り上げ処理すべきところ四捨五入していた
◆富士通Japanの「MICJET税務情報」
 →プログラムミス+運用ミスでご記載発生

※NTTデータ子会社の日本電子計算も、富士通Japanも過去に自治体関連で信じがたいトラブルを起こしています。そのパッケージをいまだに使っていることが信じられません。他にどれだけのメーカーのパッケージがあり今回不具合を発生させたのかどうかを報告して欲しいと思いました。

極言正論:注目集めた「プロセスオフィス」 DXをタコツボ化させない勘所】(P.88)
欧米企業には普通にあるのに日本企業に欠けているためDXが上手くいかない組織があります。それは「プロセスオフィス」です。全社的に業務プロセスを見える化して把握・分析し、その改善や変革などを図る専門部門です。

「極言暴論」のコラムで取り上げたところ、大きな反響がありました。企業にとって変革は一時的な試みではなく環境変化に応じて常に最適化する必要があります。そのため欧米企業は常設の「変革担当」の専門部門を設けているのでしょう。

ところが日本では業務改革を一時的なプロジェクトとして実施してきました。そのため「変革の専門家」が居ませんでした。

工場などの現場で継続的に「カイゼン活動」をする組織はあります。ところがこれらは部門単位の取り組みです。言うなら「タコツボ・カイゼン」です。全社的な業務プロセスの変革を行う常設組織が必要でしょう。

※当ブログでも前号の<好評記事>の中で取り上げました。プロジェクトとは「期限のある活動」ですから常設組織が必要なのは盲点でしょう。それが次のコラムの「データスチュワード」だったりデータアーキテクト(DA)なのかも知れません。DBAでは駄目です。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第271回】(P.102)
データマネジメントのコンサルタント、デビット・プロトキン氏の著書「データスチュワードシップ データマネジメント&ガバナンスの実践ガイド」(\9,900)の紹介です。

例えば、「見込客」「リード」「商談」「顧客」といった「ビジネスエレメント」について、用語が定義されていますか、状態が変化する判断ポイントが明確になっているでしょうか?
事業にとって重要なビジネスエレメントを見定め、ビジネスルールも含めて定義し、情報システム部門と協力してデータを集める「ビジネスデータスチュワード」を事業ごとに任命します。

事業部門も情報システム部門も、データに関して何らかの要望がある時、必ずビジネスデータスチュワードに相談します。その上でデータスチュワードが意思決定します。こういう事が出来る人はすでにいると著者は指摘します。「疑問に答えてもらうにはあの人に聞けばよい」という人物がいるでしょう。この役割と責任を正式にしたものがデータスチュワードです。

ただ、日本の企業で事業部門の社員をこの役割に任命する実践するハードルは高いだろうと谷島氏は指摘します。データの定義なら情報システム部門の仕事だろうといわれかねないでしょう。3つの案が書かれています。
1.ガバナンスやコンプライアンスに関連付ける
2.業務改革の活動に絡める
3.AIやビジネスインテリジェンスのプロジェクトに含める

※1つ前の木村氏のコラムでいう「プロセスオフィス」にこの役割も担ってもらってはどうかと思いました。

以上

特集は<タイパ高める 「超圧縮」仕事術>です。タイパはタイムパフォーマンス、時間対効果の略だと思いますが定義が書かれてませんでした。常識語なんですね。在宅を含め時間管理が難しくなっていますのでノウハウを整理する意味はあるでしょう。

編集長セレクト】(P.06)
「事実は法廷調査の中で明らかに」富士通時田社長が英郵便局の冤罪事件を陳謝
 →株式総会で社長り直接英国政府と議論しているとのこと
ソフトバンクGが2024年8月に医療系新会社を始動 「必ず広げる決意」と孫正義氏
 →AIで治療法を提示する新会社「SB TEMPUS」年内始動予定

ITが危ない:「サポート詐欺」が急速に悪質化 一度に100万円の被害も】(P.08)
<偽のセキュリティ警告でユーザをだます>
全国の消費者生活センターなどに2023年は約7500件の相談があり、約1500件で金銭を支払ってしまったそうです。

1.わなページへのリンクをクリックする
→偽の警告画面がWebブラウザーのタブの1つとして表示される
2.警告画面のどこかをクリックすると全画面表示に切り替わる
→閉じるボタンも表示されず「Alt」+「F4」でも脱出できない
3.「マルウェアに感染。すぐサポートに電話してください
 →電話番号が表示される。電話するとPCを乗っ取られる
4.インターネットバンキングで支払を要求される
 →PCが乗っ取られているので100円を100万円に変えられ送金

★体験サイトはここ。ESC長押しして終了してください。

タイパ高める 「超圧縮」仕事術】(P.10)
1.さらばダラダラ在宅 5つの要諦で脱却へ
(1) 可視化を徹底する(最重要)
(2) 作業時間をあらかじめ見積もる
 →どんなタスクがあり、どの程度かかるか
(3) 無駄な作業を撲滅する
 →自分用のFAQを作成
(4) 360度のコミュニケーションを心がける
(5) アラートは早く上げる
2.週3日副業のゆとり 繰り返し作業撲滅で
日本オラクルの宮本 拓也氏
<一度こなした仕事は何かの形で必ず残す>
3.子供と毎日夕食を 「作業設計」術で実現
アクセンチュアの海老沼 蒼生氏
<手を動かす前の「作業設計」を重視しています>
4.業務を滞らせない 「ふわっと依頼」対応
日立製作所の佐藤 緑氏
<心がけているのは「仕事を減らす仕事をする」こと>
<コミュニケーションの失敗による無駄の削減に努めています>
5.仕事を1人で抱えない 未了タスク引継ぎ術
日本IBM 小倉 亜樹子氏
<確認事項は関係会社とのチャットや通話ですぐ片づけます>
<メンバが失敗を相談しやすいようコマメに会話しています>

作業タスクに分割し工数見積もりしてから作業するという癖を若い人にどうやってつけるか。在宅では難しいでしょう。

今こそ脱「安月給」 IT技術の給与をどう上げる】(P.28)
人材派遣会社のフューマンリソシアが発表したレポートによると
・日本のITエンジニアの平均年収は世界72か国中26位
中国は日本の年収を上回った
・日本の給与の伸び率が低く、課長クラスでベトナムに抜かれる
NPO法人CeFIL副理事長/DBIC共同代表 西野弘氏
ITエンジニアは3カテゴリーにわかれます。①10%ITゼネコン②10%スタートアップ③80%大手の下請け。運用も行うため自動化が進まない。米国のデータセンターでは全て集中管理でほとんど無人
NPO法人CIO Lounge理事長 矢島 孝應氏
ITエンジニアの給与が低いのはユーザ企業内の情報システム部門の処遇が低いため。
①ユーザの優秀なITエンジニアがITベンダーに引き抜かれた
②その企業はシステムを自力でまかなえなくなった
③ITベンダーやコンサルタントにシステム構築を丸投げする
まずは情報システム担当役員をつくりボードメンバーの意識を変える必要がある

ユーザ企業内の情報システム部門の処遇を高めることに我々ITベンダーも努力すべきでしょう。

メガファーマに挑む 創薬AI「DAIIA」の実力】(P.38)
産学連携による創薬AIの開発プロジェクトが進んでいます。
・研究機関:理化学研究所、京都大学、名古屋大学など
・製薬企業:エーザイ、小野薬品工業など17社
・ITベンダー:NEC、AI創薬ベンチャーのElixなど

製薬企業17社の機密情報を学習データとして使い、2025年度からは事業化の準備予定です。

 

産学連携でまともに立ち上るような気がしないのは私だけ?

インタビュー:米アマゾン ウェブ サービス ハイミ・バレス氏】(P.46)
AWS日本代表になり100日間。2027年までに2兆円超を日本市場に投資します。
2024年3月に長崎忠雄前社長が急に退任しオープンAI日本法人に転職されました。そこで急遽抜擢され、シンガポールから2週間に1度は来日しています。

生成AIについて、今日はまだ「day1(初日)」であり長期的な取り組みになります。

AWSが東京リージョンでClaude 3 アンソロピックのLLM活用を推進】(P.54)
AWS Summit Japan(2024年6月20日~21日)の基調講演で次の発表がありました。
・東京リージョンで2024年7月から米アンソロピックのLLMである「Claude 3」が使えるようになります。
・生成AIアシスタント「Amazon Q」で次の2つがアップデートを発表しました
①社内のドキュメントなどを参照して回答する「Amazon Q Business」の日本語版
②クラウド移行を支援する「ITX」に生成AIの活動を前提としたサービスを追加

また生成AIはすでに多くのアプリケーションの一部として動いており、多くの人が意識することなく利用する技術になりつつあることを示唆しました。

マイクロソフトのCopilot+PC発売 注目機能リコールは間に合わず】(P.56)
PCベンダー各社が予定通り、2024年6月18日に「Copilot+PC」を発売しました。
1.コクリエイター:ペイントアプリで書いたイラストに日本語の文章で指示を与えると生成AIが絵を描き替える
2.ライブキャプション:多言語の音声をリアルタイムで英語に翻訳する
3.Windows Studioエフェクト:カメラ映像を加工する

発表した際に主要機能として上げていた「リコール(Recall)」は発売時点で提供されませんでした。リコールはメールなど端末で過去に作業した内容を自然言語で検索出来る機能です。プライバシーの安全性に懸念を抱く声が高まり「一般に提供を開始する時期は未定」としました。

 

アップルもオープンAIと組んで同様の機能を実装する予定だと発表されています。安全性は担保出来るのでしょうか?

日経XTECH 2024年6~7月の好評記事】(P.60)
「私にしか出来ない仕事」、月100時間残業の社員の異動で分かったこと
 →交代後は残業なし。当人は次の部署でも月100時間残業
「欧米企業に普通にある部門」がない日本企業、それじゃDXなんてできるわけないぞ
→木村さんのコラム。プロセスオフィス、社内コンサルです
重力を用いて超高層を「電池」に
 →夜間余剰電力でブロックを引き上げ、落下で発電

動かないコンピュータ:KADOKAWA】(P.68)
ランサム攻撃で「ニコニコ」停止 身代金を支払うもデータ復旧できず
出版会社大手のKADOKAWAが大規模なサイバー攻撃を受け、子会社のドワンゴが運営する「ニコニコ動画」などがサービス停止に追い込まれました。
検知:2024/06/08 AM3:30
公開:2024/06/14 YouTubeで説明 →7月末復旧予定
声明:2025/06/27 ハッカー集団BlackSuitが犯行声明
 →同社提示の金額が少なかったと不満表明
<乗っ取られた対象>
・KADOKAWA Connectedが運営するデータセンター「DC6」で運用する、約300台のサーバで構成するNicoSphereが暗号化
・ドワンゴのシステム認証基盤(AD)が乗っ取られパソコンにマルウエア配布
<コーポレートガバナンス上の問題>
問題1:KADOKAWAが攻撃者に300万ドルの身代金を支払った
→少なすぎると追加で800万ドル要求された
→ロシア拠点なので外為法に抵触する可能性
問題2:KADOKAWAグループ内でセキュリティー対策に差
→KADOKAWA本社はEDR(エンドポイント検知)導入済で無事
ドアンゴはEDR未導入で被害を受けた

この記事の著者は「動かないコンピュータ取材班」でした。BY Nameにするのは支障があったのでしょうか

新連載:日本企業のDXを阻む 3つの誤解 第1回】(P.78)
<「デジタル導入がDX」は誤解 社員の自主性に頼らない仕組みを>
組織人事コンサルティング会社のリンクアンドモチベーション 旭 裕太氏の連載です。タイトルどおり「3つの誤解」について3回連載で1つずつ解説されるようです。

初回の誤解は「DXとは、業務にデジタル技術を取り入れることである」という誤解です。DXの本質は「トランスフォーメーション」です。「デジタル」は手段にすぎません。ところが現実にはデジタルツールやITシステムの導入にばかりこだわり手段が目的化している企業が多くあります。その理由の一端は進め方にあります。

DXの一般的な進め方は、①インプット(学習など) ②スループット(問題の課題化) ③アウトプット(解決策の実行) です。これだとインプット(学習)の時点で手段が先行してしまいます。

そこで、最初は①スループット(問題の課題化)として、その課題を解決するために②インプット(学習)を持ってくることをお薦めします。これにより自社に本来必要な手段が明確になりDXを効果的に進める事ができます。

仰ることはわかります。最近社員教育に無駄とも思われるほどの投資をすることが「良いことだ」という記事が続いていました。必要な技術だけを勉強させないと企業の体力が減るでしょう。ただし、デジタル抜きで問題がわかり課題化出来るのかは疑問

社長の疑問に答える IT専門家の対話術】(P.86)
12の行動でリーダーシップ 強いシステム部門をつくる
2000年に初版を発行したロングセラー「SEを極める50の鉄則」が日経文庫に収められました。

SEを極める50の鉄則 (日経文庫)

筆者の馬場史郎氏は「リーダーシップを身に付けるための12の行動」を説明しています。コラムでは12全部紹介されていますが、ここでは3つだけ紹介します。

1.独りでぶらっとお客様を訪問する
→この本の通奏低音になっている行動です
2.仕事の価値観を徹底指導する
→日常の行動指針を提示する。馬場氏の行動指針
 例:「・・をどうしましょうかはやめよう」
3.部下の報告書に必ず適切なコメントを書く
→全報告書、全メモ、全メールにかならず適切なコメントを書く

ブログ筆者は若いころこの本に出会い目を開かされました。今でも通用する名著だと思います

優秀な営業は「ぶらっと訪問」を行っていました。見ていると、訪問された側が「来てくれてありがたい」と感じる関係を作っていました。裏情報や一般には知られていない事例を紹介するなどお客様に無駄な時間だと思わせていませんでした。

このコラムにもいくつかの言葉が出ています。

以上

特集は<日清食品、「デジタル武装」の全貌>です。前々回の大塚商会に続く企業探訪ですね。表紙の謎肉いっぱいのカップヌードルが美味しそうです。

編集長セレクト】(P.06)
NECが大阪万博に顔認証システム導入 入場や決済の利便性向上狙う
 →対象は万博の通期パス、夏パスの購入者
Salesforceが2024年8月末までにベクトルDBを国内提供 生成AIは10月にベータ版
 →ベクトルDBは生成AIの基礎となるDB構造だそうです
KADOKAWAを襲ったサイバー攻撃 経理機能と出版の製造・物流機能の復旧を最優先に
 →この記事にはありませんが暴露情報も流れだしてます

ITが危ない:「先生、つながらへん!」学校の回線に深刻な格差】(P.08)
文部科学省は2024年4月、公立小中学校のアクセス回線の下り帯域について、学校の規模ごとに帯域の目安を示しました。大規模校で推奨帯域を満たす学校の割合(%)は

  400人規模で5%、800人~規模で3%でした。

授業の資料配布などにTeamsを使っています。「Teamsを開いてもらうタイミングでクラスの30人全員が同時につながることはない」状況だそうです。

多くはフレッツ光の帯域保証なし(ベストエフォート)型で月額1万5千円程度です。帯域保証が出来る専用線だと月額20~50万円と跳ね上がります。

こういう基盤選定を学校に任せる事が間違いでしょう。すべてデジタル庁が責任を持つ運用にすべきだと思います。というかまずはTEAMSを辞めれば?と思います。

日清食品、「デジタル武装」の全貌】(P.10)
1.5つの策を急速推進 ネット系CIOが指揮
<ネット起業出身のCIOを中心に、矢継ぎ早のデジタル化>
2019年入社の成田 敏博CIOが矢継ぎ早の改革で成果を上げています。
経歴=>1999/03:アクセンチュア,、2012/12:DeNA、
     2019/01:メルカリ、2019/12:日清食品HD

5つの策とは、①サイバーセキュリティ②グローバルITガバナンス③業務部門のデジタル活用視点④先進ネットワーク/モバイルの活用⑤データドリブン経営 です。


2030年までに即席麺事業に次ぐ第2の柱を育てたり、海外事業の割合を伸ばすなどの計画を公表しています。この数年でデジタル化に次々と実績を上げています①生成AIをいち早く導入 ②ノーコード/ローコード開発ツールで350趙のアプリを内製 ③RPAなどを活用 ④メインフレームの撤廃を完了

2.施策を現場に浸透 秘訣は独自の方法論
<日清食品HDは独自の方法論を編み出し、ITツールの浸透を図る>
デジタル化推進室はツールを提供するだけでなく、特定の部門に入り込んで成果を上げ、そのノウハウを横展開しています。スモールサクセス・クイックウインと言っています。
日清流DXの「虎の巻」としてテクノロジーの導入を成功させる方法論を「8つの重点領域・39カ条のチェックリスト」としてまとめ活用しています。

3.データ経営へDB統合 生成AI活用を高度化
<約3年かけて、全社統合データベース(DB)を構築した>
業務や部門ごとに集まったデータをクラウド型DWH「Snowflake」に集めました。集める時には、登録にばらつきがある商品名を名寄せするなど工夫しました。

4.個と組織でIT教育 新卒育て現場に排出
<デジタル教育プログラム 全7領域38講座を設け社員教育>
従業員向けデジタル教育プログラム「NISSIN DIGITAL ACADEMY」を開始しました。この、「個」のデジタルリテラシー向上策とは別に、「組織」としての向上作として「デジタル人材のインキュベーション」を進めています。デジタル部門で新卒人材を受け入れてデジタル活用のプロに育て、現場に輩出することです。

日本IBM出身CIO 「突破力」で活躍】(P.32)
ユーザ企業において日本IBM出身のCIOやCDOが増えています。

CIO一覧
<IBMの強味>
・IBMでは顧客の経営課題を分析し、解決策を探りキーパーソンへ説明し納得してもらう一連の営業ノウハウが社内でプロセス化されており、しみついています
・米IBMの初代社長、トーマス・ワトソン・シニア氏は「教育に飽和点はない」と主張し、人材育成がDNAになっています。
・1993年に、米IBMにルイス・ガースナー会長兼CEOがきて、顧客中心主義を徹底し「顧客視点で考えろ」と叩き込みました。

IIJや NTTコムなどがクラウド値上げ VMware製品ライセンス変更の余波】(P.50)
仮想化市場で正解一のシェアを誇るVMwareが2023年11月、米ブロードコムに買収されました。製品ライセンス変更によりライセンス費用が10倍になるなどの被害が世界中で広がっている事はここ数回報告しました。

そのVMwareを使っている日本企業も相次ぎ値上げを始めたというニュースです。NTTコム、IIJ、NSSOLが値上げ済みまたは予定。富士通とソフトバンクは回答を拒否していますがユーザに値上げを打診中だそうです。
日本企業のライセンスの中でVMwareライセンスが占める割合は小さかったのですがそのライセンスが10倍になると(他の原価は変わらないとしても)ライセンスd価格が2~3倍になります

ブロードコム社の株価は最高値を更新したそうです。

アップルが生成AI戦略を発表 デバイス横断で使える体験を前面に】(P.52)
<個人データを組合せ「パーソナライズ」実現>
米アップルは2024年6月10日の年次開発者会議「WWDC」で生成AI戦略を発表しました。アップルの自社技術に加え、米オープンAIのChatGPTも無料で利用出来ます。

面白いのは、生成AIで帰ってきた答えを返答するのではなく、スマホやMAC内のデータを検索して「パーソナライズ」された回答を作成することです。
例えば「母のフライト到着はいつ?」と尋ねると、メールなどから母親のフライト日時を検索し、Web検索でフライトの運行情報を参照して到着の予定時刻を回答してくれます。

英語版ベータが今秋から。多言語対応は2025年を予定しています。

SAPの2027年問題まで3年 「SaaS型ERPへの移行が最善」】(P.53)
独SAPは2024年6月4,5日に米国で年次第回「SAP Sapphire」を開催しAI組み込みについて話しました。SAP S/4HANAの構成にはCloud版とオンプレミス版がありますが、オンプレミス版ではAIは利用できないそうです。

2027年にオンプレミス版の「SAP ERP」のサポートが終了し、延長サポートは有料になります。追加費用を抑えるにはSAP S/4HANAへの移行が必要です。その時オンプレミスを選ぶとAIが使えない事になります。

IT Japan Award 2024が決定 TOPPANの基幹刷新がグランプリ】(P.56)
日経コンピュータが優れたIT事例を表彰する「IT Japan Award 2024」を発表しました。また特集されると思いますのでここでは軽く紹介します。
◆グランプリ◆TOPPAN HD 日経コン2024.02.22
 SAPで基幹系をモダナイ。値耳に水の会社再編で稼働前倒し
◆準グランプリ◆旭化成 日経コン2024.03.07
 4万人で挑む旭化成のDX
◆特別賞◆ダイキン工業、東京ガス、安田倉庫、Quemix
 量子コンピュータのベンチャーであるQuemixを選出されたことにびっくり。日経コン2024.01.11にありました。ブログ筆者が所属するテラスカイの子会社です。

日経XTECH 2024年6月の好評記事】(P.60)
定額減税なのに約2300万人に現金給付、コロナ給付金以来の規模に戸惑う自治体
 →複雑な計算方式が2023年10月末に急に決定。混乱必至
グリコもユニ・チャームも苦渋、トラブル相次ぐERP導入に潜む大きな理解不足
 →おむつの出荷遅延もデロイト+SAPが原因だったそうです

ケーススタディー:SBI証券】(P.62)
国内証券取引システムをAWSへ 新NISAのアクセス急増に対処
2023年9月に「ゼロ革命」を打ち出し、国内株式売買手数料を無料化しました。2024年1月に新NISAが始まり口座数が急増しました。ゼロ革命前に秒間14~16万トランザクションだった負荷が、2024年には16~18万程度に増加しました。

従来オンプレミス環境で運用していたサーバー群を約1年半かけて2024年4月にAWSに移行したと発表しました。これで想定を上回る大量の注文が押し寄せそうなどスパイクが予想出来る場合は簡単にキャパシティー拡張出来るようになりました。

Amazon RDS for Oracleのテストを行う中で、オンプレミス環境では変更出来ていた設定がクラウドでは設定できないことに気づきテストをやり直すなどしましたが、何とか予定通り本番稼働できました。

挑戦者:足立 安比古氏 Sinumy CEO】(P.66)
駅の改札を手ぶらで通る 「実現不可能」を技術で覆す
Bluetoothを使って「ハンズフリー認証」を実現するSinumy(シナミー)。大阪市に本社を置くベンチャー企業です。
研究している中、2018年に「Bluetoothにより認証は不可能」という論文が発表されました。ところが論文の中の矛盾点に気づき「論理的には可能なはず」と研究を進めました。「この技術は交通だけでなく、店舗決済やドアの会場、イベントなどあらゆる分野に適応できる」と出資を募りながら開発されています。

 

無線イヤフォンを使いだしてから、Bluetoothは常時ONにしていますのでそれで認証出来るなら有難いです。

新連載:企業がはまる 5つの「AIリスク」 第1回】(P.74)
企業はAIにまつわるリスクをどう理解しどう回避、軽減するべきなのか。日本IBMが発刊している「AIリスク教本 攻めのディフェンスで危機回避&ビジネス加速」の一部を編集部が再構成して掲載する連載だそうです。

こういうパターンは「間違いだらけの 設計レビュー」でも採用されています。編集者は大変だと思いますが、お手軽に連載できるのでしょう。

5つのリスクは次の通り
説明可能性:なぜその結論を下したかの説明
公平性:バイアス(偏見)がない
堅牢性:セキュリティーや信頼性の観点
透明性:学習データの収集やモデルの開発方法を開示
データの権利/プレイバシーの尊重

自ら生成AIを学習させモデルを作ろうとする企業向けの連載のようですが、さてどの程度おられるのでしょうか?

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第269回】(P.86)
答えは40年前の法則にあり 無視する組織は必ず失敗する
システム開発方法論「PRIDE」を作ったミルト・ブライス氏が情報活用やシステム開発について語った数々の明言は「ブライスの法則」としてまとめられました。

次男ティム・ブライス氏が父の仕事を手伝いつつ書き留め、ポスターに仕上げクリスマスのプレゼントとして父に送りました。その後、顧客に配布するようになったそうです。

PRIDEを使うコンサルタントを経て名古屋経済大学の教授を務めた中西昌武氏は1981年版のポスターで初めてブライスの法則に触れました。続いてPRIDEを日本に持ち込んだ日本システミックスが同社のニュースレターで1983年の3月と5月、2回にわたりブライスの法則を訳して掲載しました。

41年経ちましたがどの法則も現在に通用します。コラムでは14個解説されていましたが、ここでは2つだけ紹介します。
◆情報=データ+処理
→これはPRIDEでも中心になる考え方でしょう。情報は人間を動かせるものでありデータを処理することで生まれます。どのような情報が欲しいのかを明確にすればそれを得るためのデータや処理、ITシステムを設計出来ます。
◆プロジェクトの見積エラーはヌケに起因するものが多く、誤差によるものは少ない。見積り忘れこそ、プロジェクトをトラブルに導くのである
→抜け漏れを防ぐためにはデータ管理でありサブシステム分割が重要でしょう。

ブライスの法則をもっと知りたい方は
情報はデータではない、だから「情報責任」は経営者にある
ブライスの法則をつまみに盛り上がりましょう<第80回IT勉強宴会>
→ここにブライスの法則(英語)をリンクしてあります

以上