HATのブログ

HATのブログ

IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

◆ほぼ毎月、IT勉強宴会 を開催しています。勉強会の内容は毎回詳細なblogにまとめてあります。御用とお急ぎでない方はお立ち寄り下さい。
www.benkyoenkai.org
◆チャンスがあればぜひ実際のIT勉強宴会にもお越しください。文字だけで理解出来るのは10%以下だろうと思います。

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです
 

特集は<Google DeepMindの正体 AIに人型ロボ、先端研究を社会へ>です。GoogleのAIブランド「Gemini」は双子座を意味します。2023年に組織が統合したディープマインドとグーグル・ブレインに由来するそうです。内輪ネタだったのか・・・

ITが危ない:AI特需でメモリー価格急騰「3ヶ月で約6倍」】(P.08)
PCは約2割値上げの観測も
AI特需によるメモリーの需給逼迫が原因とみられる価格高騰が発生しています。2025年9月頃に比べ12月には6倍近く値上がりした製品もあるそうです。メモリーチップは3社で世界シェアの約9割を占めるとされます。
 ・韓国 => サムソン電子、SKハイニックス
 ・米国 => マイクロンテクノロジー

PCメーカー各社は値上げは未定としていますが、4月ごろには20%程度上昇すると見られています。個人向けの高性能なパーツはすでに気軽に変えないほど高騰しています。「1年ほどは様子を見たほうが良い」との事です。

※中国からの輸出禁止が影響している部品もあります。

Google DeepMindの正体 AIに人型ロボ、先端研究を社会へ】(P.12)
1.息吹き返したグーグル オープンAIを苦境に
AI競争で劣勢に立たされていた米グーグルが息を吹き返しました。2025年11月に「Gemini 3 Pro」を公開すると、米オープンAIのサム・アルトマンは社内にコードレッド(緊急事態)を宣言したとTV番組で認めました。多くの指標で「GPT-5.1」を上回っていたためです。

2026年1月の調査結果(米シミラーウェブ)では、1年前に86.7%だったChatGPTのシェアは64.5%に急減しました。Geminiは5.7%から21.5%に急伸しました。

グーグルの急伸を支えるのが3年前(2023)に2つの組織が統合して発足した組織、Google DeepMind(GDM)です。ChatGPTが2022年11月に登場して危機感を持ったグーグルは、世界レベルのAIチーム、ディープマインドとグーグル・ブレインを統合して発足しました。

2.AlphaFoldの衝撃 人類の利益を追求
2018年にタンパク質の立体構造予測AI「AlphaFold」が出て科学会に衝撃を与えました。タンパク質の立体構造の予測精度がそれまで40%程度たったものを60%まで引き上げたためです。2020年11月、膨大なデータで強化した「AlphaFold2」の予測精度は驚異的でした。2024年5月には様々な分子が結合した状態での立体構造予測を可能にする「AphaFold3」を発表しました。この研究チームは2024年のノーベル化学賞を受賞しました。

AlphaFoldは、科学会に3つの恩恵をもたらしました。
①科学の民主化(一般公開することで誰でも使える)
②研究スピードの向上(数年が数分に)
③コストの削減(数千ドルの計算が1分に)

3.フィジカルAIで攻勢 人型ロボの頭脳に革新
韓国 現代自動車 傘下の米ボストン・ダイナミクスがヒューマノイド「Atlas」の試作機を2026年1月のCES2026で公開しました。2028年には現代自動車の米国工場で実際に稼働させる計画です。このAtlasには、GDMが開発したロボット向け基盤モデル「Gemini Robotics」を搭載しています。GeminiをベースとしたVLA(ision-Language-Action)モデルとして、視覚・言語・行動の3要素を統合し、世界のルール(法則)を学習します。ロボットを使って靴紐を結んだり、シャツをハンガーに掛けたりする作業に成功しています。

4.気象業界の「黒船」に 企業との連携で成果
日本のウェザーニュースとGDMはパートナー契約を結びました。台風の進路予測の精度を評価すると、これまでスーパーコンピュータを用いて各国の気象機関が構築してきた物理モデルを、GDMのAIモデルがはるかにしのぎました。「気象業界では黒船が来た」と言われています。

GDMのAIモデルも、降水量や風の予想では物理モデルに比べて精度が低いなど苦手な分野もありますが、GDMの研究開発の成果が社会に実装された一例です。

5.社会実装チーム組成 AI責任者が語る道程
旧ディープマインドで初代COO(最高執行責任者)を務め、2026年1月にはGDMの最高AI準備責任者に就任した ライラ・イブラヒム氏にこれまでの経緯を聞きました・
①我々のミッションは「人類に利益をもたらす責任あるAI(人工知能)を構築すること」です。全ての製品、研究はこの考え方を中心に設計されています。
②Geminiを製品として提供する一方で、「Gemma」というオープンモデル群を公開しています。
③私の管轄組織の中には、倫理や責任に関する研究者チームがあります。どのように責任をもって社会に展開するかを検討します。

④AI技術を社会に迅速かつ安全に届け、実社会でのインパクト創出を担う専門チームを構築しました。

※SNSの論調でもGoogle覇権という意見をよく見ます。個人的には日本のベンチャーが出てきてほしいです。

緊急点検、ランサム対策】(P.26)
専門家直伝、今すぐやるべき10項目
アサヒグループやアスクルなどランサム被害が社会問題になっています。アサヒGHDは「ゼロ・トラスト・セキュリティーの構築」を実施、アスクルは「EDR(エンドポイント・ディテクション・アンド・レスポンス)導入を含む検知体制の構築などを行いました。これらには時間や費用が必要です。本格的な対策の前段階としてすぐにできて対策効果が高い「緊急点検10項目」をまとめました。
■管理者アカウントに関する点検
①「最小限の法則」を守っているか
 必要な人に、必要な時にだけ権限を与える
②パスワードポリシーを設けているか
 15文字以上など
③既存のセキュリティ機能を有効にしているか
 Windowsが標準搭載するDefenderを有効にしているか?
■侵入口となる「AS(アタックサーフェス)」に関する点検
④「アタックサーフェス」を把握しているか
 サイバー攻撃の糸口になる得る全てのIT資産と経路

 →グループ企業、関連会社、在宅の自宅なども
⑤2要素認証を導入しているか
⑥脆弱性発見時の対応体制を構築しているか
■バックアップデータの管理に関する点検
⑦バックアップデータは「イミュータブル」か
 データを変更も削除も出来ない状態のこと
⑧「エアギャップ」を設けて保存しているか
 対象のデータをネットワークから物理・論理的に隔離する
⑨「保管期間」を適切に設定しているか
 侵入前のバックアップが必要。1ヶ月以上前のことも
⑩復旧手順を確立しているか
 複数システムが連携する環境でリストア手順を確認する

※ネットに晒しているIT資産の棚卸しは特に重要ですね

インタビュー:情報システム学会 会長 伊藤 重隆氏】(P.44)
世の中の仕組みは「情報システム」 AI時代こそ人間中心の考え方を
情報システム学会(ISSJ)は、世の中の仕組みを「情報システム」として見るところから始まりました。その仕組の改善や発展の研究が必要だという思いで学会を立ち上げました。
※伊藤氏は2005年の学会創設の発起人でもあり、2013-2019年まで会長をされました。2025年に会長を再任されました。

ITの専門家でない方も巻き込んで活動しています。情報システムは全社のものです。この考えの下、欧米のCEOは積極的に関わるのが普通です。日本のCEOも先頭に立って理想を追い求めて欲しいと思います。

2025年で学会は創立20周年を迎えました。今はAI利用が多くなると思いますが、最終的に判断するのは人間です。これを忘れないようにしたいです。

※IT勉強宴会とも多少関係している学会です。似た名前の学会に、情報処理学会があります。こちらはITだけの学会です。

消費税減税に必須のシステム改修 現場負担の重さを懸念】(P.48)
高市早苗首相が大勝し、「食品に限定して2年間の消費税減税」が現実味を帯びてきました。詳細がまだ決まっていませんが、現時点の対応方針を調べました。
■レジシステム:Airレジ:システム側の改修は半年から1年以内
■会計システム
 フリー:修正なく対応可能
 弥生:開発の難易度が読めない

なお、製品機能として対応可能でも、カスタム仕様で利用している顧客には個別対応が必要なケースもあります。また現場の理解不足で問い合わせが殺到する懸念もあります。

※軽減税率0%なら良いのですが非課税だと改修規模が跳ね上がるでしょう。早く方針を決めるべきです。

SHIFTがAI駆使しモダナイ事業強化 大手と競合、2027年に40億円規模へ】(P.50)
ソフトウエアテスト大手のSHIFTが、AIを活用した基幹システムのモダナイゼーション(近代化)事業を強化し始めました。
1.既存プログラムをAIで解析し、設計書を制作する
2.設計書に基づいて生成AIを活用してシステムを開発する。

AI駆動開発には、米コグニションAIの「Devin」を主に使用します。ソフトウェアテストなどの下流工程の受託から、徐々に設計やコンサルティングなどの上流工程まで手掛けています。2015年8月期に32億円だった売上を10年後の2025年8月には1298億円まで延ばしました。
 

このモダナイゼーションサービスでは2027年までに40億円規模の売上を目指しています。

毎年45%増で売上が増えている驚異的な成長の会社です。社員数がそれだけ採用し続ける事が出来るのも驚きです。

EAフレームワーク「TOGAF 10」 日本語版が2026年4月に公開】(P.53)
EAはビジネス(戦略やプロセス)とデータ、アプリケーション、技術の4つの観点から企業や組織の全体像を捉える仕組みの事です。EAの実行手順をまとめたフレームワークの1つが、The Open Groupの策定した「TOGAF(The Open Group Architecture Framework)」です。最新版TOGAF10の日本語版が2026年4月に公開されます。

TOGAF10ではEAの取り組みを「アジャイル」に進められるように変更されました。

※TOGAFはデータモデルを重視されないため個人的には使いにくいと感じています。

乱反射:日立がストレージ事業を売却か サービス事業への移行が鮮明に】(P.56)
米ブルームバーグが2026年1月30日に「日立製作所がストレージ事業売却を検討」と報じ、日経新聞も報道しました。日立株は前日比6%高となりました。

日立はデジタル技術で課題を解決する、ルマーダ(Lumada)中心のサービ業への転換を急いでいます。そのためと思えます。
 

※売却報道で株価が上がったのなら市場は歓迎しているのでしょうか。Lumadaには期待しています。

ケーススタディー:IDOM(旧ガリバーインターナショナル)】(P.58)
中古車販売会社のIDOMが顧客接点管理にSalesforceを利用し、年数十万件の商談を一元管理し、成約率の向上を狙います。

2024年5月に開発を開始し、同年10月にプロトタイプ版を稼働しました。大型店や小型店など数店で実証を始め、最終的には数十店で3ヶ月の実証を行いました。2025年1月から確定版の開発に着手し、2025年12月20日、全200店で稼働を開始しました。200店の業務削減効果は月間2000時間を見込みます

店舗で接客を受けた顧客は、その場で購入に至る「成約」、検討を続ける「継続検討」、購入しない「不成約」に分類します。継続検討のお客様にフォローする仕組みも構築しました。今後はAIエージェントが最適な車両を自動で提案する機能などを検討しています。

※プロトタイプ構築に5ヶ月かけるのはSalesforceのCRMとしては長いです。確定版構築の12ヶ月も普通ではないほど長いです。基幹システムとの連携があったのかなと想像しています。

新連載:生成AI全社導入を支える 戦略的アーキテクチュア 第1回】(P.84)
場当たり的なAI導入の末路 戦略欠如で陥る3つの落とし穴
※野村総合研究所の山本文弥氏の連載です。
AIを単なるツールではなく、持続的なビジネス価値を生み出す「戦略的資産」にするためのアプローチを解説します。

今回は3つの落とし穴について
■落とし穴1:PoC止まり
壁1:ビジネスインパクトの壁
 直接的なビジネスインパクトやROI(投資対効果)を示せない
壁2:品質と信用の壁
 AIの回答精度が100%でない以上、公的な業務に利用する懸念
壁3:運用・ガバナンスの壁
 継続的なメンテナンスが必要だが押し付け合う
■落とし穴2:野良AIの乱立
 部門ごとにAIを利用し、重複投資/ガバナンスの問題
■落とし穴3:コスト増
 効果を定量的に示す仕組みがなく、コストだけが増えていく

これらの落とし穴を回避するために必要な戦略的AIアーキテクチャを次回以降で解説します。

※PoCから脱出出来ない問題は全世界的に深刻になっています。

 導入に成功した企業が発信しないと説得力に欠けます。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第312回】(P.88)
ビジネスアーキテクトは再定義 その役割をIT部門がまず担う
IPAは、2025年12月1日「ビジネスアーキテクチュア人材の役割定義」を公開しました。3年前に「デジタルスキル標準」で示した「ビジネスアーキテクト」の役割を見直した資料です。

ビジネスアーキテクトの役割を3つに分けました。
1.狭義のビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクチャー(事業構造)を最適化し、これを実現する変革のロードマップを立案する
2.ビジネスアナリスト
業務・組織・システムの分析を行い、要求の整理とエンジニアへの伝達。さらに改革活動に参加し関係者の利害を調整する。
3.プロダクトマネージャー
特定のプロダクト・サービスの責任者としてチームの運営を担う。製品(サービス)を出すことも事業変革に含める。

資料には知識体系も挙げてあります。
ビシネスアーキテクトBIZBOKTOGAF
ビジネスアナリストBABOKPMI GuideISO/IEC/IEEE29148

※元資料を見ると、PMの知識体系は「存在しない」となってます。PMBOKを挙げないのは見識だと思います。素晴らしい。

以上

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです

特集は<アパの知られざるIT ホテル業界、異端のテクノロジー巧者>です。APAホテルはマスコミに露出している印象ですが、テクノロジーに関する取材は受けてなかったそうです。スクープ級の様々な話が飛び出します。

イノベーションウオッチ:アナ雪のロボはアニメに学ぶ】(P.06)
久しぶりにこの連載を取り上げます。論文人気ランキング6位に登場した<オラフ:物理世界でアニメーション>は、オラフのロボットをどう機械学習させたかという論文です。ウォルト・デズニーの研究部門が、フィジカルAIとしてアニメのキャラクターの動きをどう学習させたかのでしょう。 
・3Dアニメの動作から物理シミュレーションを強化学習
・足音について接地衝撃の大きさを報酬関数とする
・過熱をさけるため温度上昇にペナルティー
 

※この点も含めて動画で解説されています。この動画をご覧ください。4分半ありますが大変おもしろいです。充分オラフです。素晴らしいですね。

アパの知られざるIT ホテル業界、異端のテクノロジー巧者】(P.12)
「テクノロジーに関する取材はほとんど受けてこなかった」アパホテルが、IT活用を徹底する同社の戦略を語ってくれました。

1.営業利益率は36% 一人勝ち支えるDX
1971年の創業以来53期連続で黒字を維持。しかも営業利益率は驚異の36%を達成しています。一般的なホテル企業の営業利益率が5〜10%程度とされ高収益企業と言われる東横インでも17%ほどです。

1994年に妻の夫美子氏がアパホテル社長に就任後すぐにIT利用に舵を切りました。航空業界で普及していた「イールドマネジメントシステム」を研究し、需要予測に基づき価格と販売量を同定に調整する手法を確立。数十億円規模を投じてホテル経営に同手法を取り入れました。
1室当たりの平均売上高を示す「RevPAR(レブパー)」の最大化を経営の最重要事項とし、予約状況に応じて価格を段階的に引き上げています。

2.チャックインは1秒 顧客目線でアプリ回収
(1)アパトリプルワンシステム
①1秒チェックイン:QRでカードキーと領収書が即座に発行
②1ステップ予約:お気に入り登録から画面遷移なしに予約可能
③1秒チェックアウト:カードキーをポストに投函するだけ
(2)客室のテレビに搭載した「ADI(APA Digital Information)」
館内案内や大浴場、コインランドリーの利用状況などをテレビ画面で確認できる。チェックインの時に利用者の言語を判断し、宿泊客が部屋に入るとその言語で表示される
(3)宿泊客専用アプリ「APA Stay Here」
アプリからチェックアウト時間の延長や貸出備品の予約、食事のオーダーなどが出来る。このアプリにはAIを用いたコンシェルジュのチャットボットを搭載している。

IT事業部はわずか10人。全員がホテル勤務から異動してきたメンバです。徹底的に顧客目線で「幹」となるシステム企画を行い、実装などの「枝葉」はアウトソースします。

3.稼働率は「100%超」 返却ポストで効率経営
東京都の宿泊施設の稼働率は2024年で75.1%です。アパホテルの稼働率は100%を優に超えています。これはデイユースなど1日に「2回転」する部屋が一定数存在するためです。
このデイユースを効率的に受けるためにテクノロジーを軸に高効率を確立しています。
①1秒チェックアウトでカードキーの投入を検知した瞬間、空室となった部屋番号を清掃スタッフのスマホへ通知。7時にチェックアウトした部屋の清掃が1時間で終わるなら、8時からデーユースを予約可能とします。この「エクスプレスチェックアウトポスト」の仕組みを特許取得しています。
②独自の基幹システム「APA@ONE」が進化
 ・急な修理が必要な部屋を「アサインブロック」
 ・ダイナミックプライシング。1日に6回価格変更も


4.「不稼働客室」ゼロへ 年1.7万件を即修繕
故障などで使えない客室が1室でも出来ると稼働率に影響します。そこで、製造業向けのPDM(製品データ管理)パッケージソフトをベースに独自のカスタマイズを施してホテル向けに最適化し独自の建築支援システム「ADA(APA Digital Archive)」を2014年から運用しています。全国から寄せられる修繕依頼書の申請から承認・発注・完了確認、支払までを行います。稼働状況を監視するだけでなく一定時間を超えた機器を「壊れる前に交換」したり、故障率の高い機器を次回は使わないなど判断しています。

※ここまで徹底的にIT武装されているとは知りませんでした

決算調査で判明 大規模システム開発の崖】(P.30) 
※元日経コンピュータ編集長の中村建助氏が決算調査からシステム開発の失敗を「推測する」という特集です。同氏は昨年、「サイバー被害を推測する」という連載を掲載していました。その続編のような特集です。

1.大ガス減損137億円 再構築で想定を断念
大阪ガス 2025年に137億円の減損損失
SAPのS/4HANAによる再構築を進めていましたが、断念
 →2021年にアクセンチュアとスタートしたと推測
2.双日、日通など5社 損失100億円超続発
双日 2023年に109億円の減損損失
SAP S/4HANA導入を中止。子会社の双日テックイノベーション、アビームコンサルティングが関係していたと推測。海外の導入は進んだが、国内の基幹システム再構築でつまづいたらしい。
日本通運 2022年に154億円の減損損失
新・国際空港貨物基幹のオープン系への移行を開発断念
 →アクセンチュアと訴訟継続中
三井住友信託銀行 2023年に159億円の減損損失
海外拠点勘定系システムの変更で損失計上
 →米オラクルの「FLEXCUBE」採用を中断
住友重機械工業 2023年に115億円の減損損失
基幹システムの開発中止
3.楽天、一体型で頓挫 滋賀銀、中止も和解金
・楽天 2024年に97億+59億=155億円の減損損失
生損保一体型基幹システムに見直し。システムだけだと「100億円を超える損失ではない」らしい
 →シンプレスHDが開発。2024年に中止と推測
・滋賀銀行 2024年に115億円、2025年に31億円の減損損失
2025年3月期には受取和解金80億円を特別利益に計上
日立の「OpenStage」を導入作業。2回サービスインを延ばしたが中止を決断しました。2025年9月、BIPROGYに開発を依頼したと発表しました。
4.1億円超損失は70社 5年で累計1200億
 2020年以降の上場企業など4000社以上の有価証券報告書2万件以上を分析し、システム開発の損失を調査しました。会計上の方針でシステム開発関連以外の損失が含まれることもありますが全額をシステム開発に伴うものとみなしました。システムは稼働したが関連事業の収益性に問題があり、減損に踏み切ったと判断したケースは対象外としました。全社構造改革などに伴って損失を計上した場合や、毎年継続してシステムの価値を見直して現存損失を計上している企業も除きました。

基幹系などのシステム開発を巡り何らかの問題を抱え、決算で1億円以上の損失を計上した企業は70社を超えていました。
ニトリは2021年に基幹システムと物流システムの開発プロジェクトを中止し67億円の損失を計上していました。外部パッケージを基礎としたシステム導入が当社独自のビジネスモデルと総合しにくく、プロジェクトを中止したそうです。その後内製化による再構築を進めています

※興味深いですが、ちょっと覗き見のような後ろめたいような記事です。失敗も堂々と議論して将来の失敗PJを1つでも減らせる文化を作りたいものです。罪を憎んで人を憎まずという取材は難しいのでしょう

KDDI系が「仕様駆動開発」を導入 AIが仕様書とソースコードを生成】(P.56)
KDDIのグループ会社でシステム開発を手掛ける、KDDIアジャイル開発センター(KAG)が「仕様駆動開発」と呼ばれるシステム開発手法を2025年9月に導入しました。
1.実現したい内容をプロンプト(指示文)に入力する
2.AIが構造化された仕様書を生成する
①要件定義書(実現したい機能や価値)
②設計書(使用技術やアーキテクチャ)
③実装計画(具体的な開発タスク)
3.それを入力に「Claude Code」で実装する

当初はAWSの「Kiro」で試しましたが、Claude Codeと相性が良い国産のオープンソース「cc-sdd」を使用しています。

これにより、従来は「設計2割・開発8割」だった業務内容が「設計8割・開発2割」となり、かつ手戻りがほとんどなく、障害もほとんど発生していません。

※2025年12月でAI駆動開発は大きく進化しました。昨年9月だと少し早すぎますので今はまた変わっているでしょう。

乱反射:6で終わる年に変化が起きる 2026年、何が登場するのか】(P.61)
西暦の下1桁が6の時大きなうねりがIT業界に訪れています。
1976年:IBMフル互換機の登場 富士通が互換機を日揮に出荷
1986年:ダウンサイジング   UNIXのC/S構成大流行
1996年:ネットワークコンピュータ シンクライアント発売
2006年:クラウドコンピューティング クラウドの用語誕生
2016年:DX(デジタル変革) IDCが2016年にDXを定義

さて、2026年に登場するキーワードは何でしょう?

※AI,MCP,Agentなどは既に古い印象。新しい概念が出るのでしょう。

CIOが挑む:古河電気工業 CDO/CIO 杉井 貴明氏】(P.68)
製造業の「基幹」はMES 工場データをAI-Readyに
古河電気工業は、銅線や光ファイバーなどの素材系製造業です。特定の顧客に対してオーダーメード型で製品を提供するB2Bビジネスが中心です。DXの中心は販売やマーケティングよりも製造の変革にあります。

基幹システムは独SAPのERPを2020年度に会計、2021年度に販売を稼働させました。しかし製造業にとって本当に「基幹」と言えるのは、向上の現場で作業指示や段取りの調整などを行うMES(製造実行システム)の方です。今は工場ごとにばらばらでデータは分断していますが、2027年度までにグループ標準のMESを作り横展開します。

業務とデータの標準化を進め、データをAIが理解して活用出来る形、すなわち「AI-Ready」で残します。これまでは「使わないデータは取得しない」という姿勢でしたが、将来の価値を見越してデータを残すという発想が重要になります。例えば検査工程について、不合格品なら結果を残しますが、合格品も結果を残すことで、品質のばらつきをAIが予測出来るようになるかも知れません。

※ちゃんとクレンジングしたデータを残してほしいです。

極言正論:生成AIで開発生産性が50%向上 SIerの事業モデルは瓦解する】(P.73)
生成AIで開発生産性は劇的に向上します。
SIerは数年以内にビジネスモデルの転換が不可欠です。例えば
①コンサルティングをベースにしたDX支援
②自社開発のクラウドサービス
③AI関連サービス
顧客企業もSIerとのこれまでの商慣行を改める必要があります。人月料金にこだわり値下げを要求し続けると相手にしてくれるSIerは居なくなるでしょう。

※スクラッチで作っている企業よりも開発基盤クラウドやローコードツールを作っている企業は切実でしょう。設定を完全に自動化出来る製品をどこが最初に出すか競争しているはずです。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第311回】(P.90)
情報処理技術者試験が刷新 事業部門をどう巻き込むか
情報処理技術者試験の体系が2027年度から大きく改訂されます。経済産業省によれば、IT関連の国家試験をこれほど多数の人が受けるのは日本だけだとのことです。日本でITを使って業務をこなす事業部門にとっての、共通認識・共通言語になり得ます。

組織としてどう取り組むとよいのか考えてみましょう。
<全員向け>
ITパスポート試験:全社員に合格を義務付け
<利用者向け>
情報セキュリティマネジメント試験
データマネジメント試験(仮称):データを活用可能とする
<ITプロフェッショナル向け>
基本情報技術者試験
プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)
 →マネジメント・監査/データ・AI/システム

従来のような特定の深い専門スキルの試験ではなくなりそうです。応用情報技術者試験を包含する方針は、2028年度以降の実施に向けて継続検討されます。この全貌が見えるまでは、民間の資格試験を先行させても良いでしょう。

※民間試験は、ほとんどが「暗記」で通るものが多いので実際の業務には役立ちません。情報処理試験は理解を求める試験ですのでレベルを下げず続けてほしいと思います。
 

以上

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです

特集は<さらば電信電話 新生NTTの逆襲>です。2025年7月1日に社名を「日本電信電話」から「NTT」に変更しNTTデータGを完全子会社にした事をきっかけとした特集です。興味ある点だけをさらっと紹介します。

さらば電信電話 新生NTTの逆襲】(P.10)
1.民営化40年で大勝負 ITを書くに世界へ挑む
2025年7月1日に社名を「日本電信電話」から「NTT」に変更、9月30日にNTTデータグループを完全子会社しました。その前、2020年12月にはNTTドコモを完全子会社にしていました。

ビジネス主体が、固定回線→移動回線→DXを核にグローバル展開と変化しているための統合です。米国のシリコンバレーにAI活用の新会社「NTT DATA AIVista」を2025年12月1日付けで設立しました。CEOには米エヌビディアやAWSなどで要職を歴任した、ブラティン・サハ氏を招きました。AIエージェント関連ビジネスの推進役となります。


2.データGが成長の柱 AIと光量子に期待
NTT社長 島田明氏
1985年の民営化直後は固定通信が90%の売上でした。直近ではデータセンター含むSIの売上が4割に拡大しています。分離・分割の歴史をたどりましたが、40年の節目に悲願達成し一体化し各社のロゴも一新しました。

2030年に100万量子ビットの光量子コンピュータの実現を目指しています。

3.「攻撃的MF」で輝く AI時代の勝者目指す
NTTデータグループ 社長 佐々木 裕氏
近い将来、「プライベートAI」の時代が来ると思います。独自LLMの「tsuzumi2」でそれを支援出来ます。NTTグループの中で、サッカーで言えばトップ下の攻撃的MFの存在、日本代表だった香川選手のように成りたいです。スルーパスなどで味方のゴールを演出することも出来るし、ドリブルで自ら切り込んで特典を挙げることも出来るような存在です。

4.光技術の強みを駆使 まずは「光電融合」
IOWN(アイオン)が新たな段階に入り、2026年度にいよいよPEC-2の光電融合スイッチの商用化に踏み出します。
 ※Photonics-Electronics Convergence(PEC)
NTTはIOWNを段階的に実現していく計画を打ち出しています。
・大容量で低遅延の光ネットワークは実現済み。
以降はPEC(光電融合技術)を用い、光技術を
PEC-2:コンピューティングのボード間
PEC-3:パッケージ間
PEC-4:パッケージ内部
に順次提要していきます。PEC-3は2028年度に商用サンプルを出す予定です。

グローバルでの競合は、米ブロードコムと米エヌビディアです。とは言え2社とも「IOWN Global Forum」に参加していますのでパートナーとして強調しています。IOWNをデファクトスタンダードに出来るかがポイントです。

5.NTTをどう評価? 競合各社に聞く
NTTデータGの完全子会社に対する意見
SIer:投資規模が変わるなら脅威
有識者:企業間競争が起きにくく、コスト増
通信事業者:公正競争の観点で大きな問題

※私は1984年にデータセンタを持つ会社に就職しましたので、NTT民営化で沸き立っていた時代を知っています。電信電話公社として税金でインフラを作り独占営業していたのですから、40年経ったとは言え一般企業と同じではないでしょう。技術は広く公開して欲しいです。

AI駆動開発を支援 最新ツールの実力】(P.44) 
ソフトウエア開発の全行程でAIを活用する「AI駆動開発」が普及し始めています。AI駆動開発を取り入れたクリエーションラインの荒井CTOによると、AI駆動開発のツールを大きく3つに分類出来るとのことです。

バイブコーディング:開発者が作りたい仕様を自然言語で説明しAIがそれを実装します。ソースコードを意識せずに開発します。
 →米「Replit」、米「bolt.new」、スウェーデン「Lovable
エージェンティックコーディング:AI駆動開発の主流。AIにソースコードの作成を指示して実行します。バイブコーディングとは違い開発者がソースコードをレビューするなど、コードに対して責任を持ちます。
 →米「Devin]
仕様駆動開発:AIを活用しながら詳細な仕様書を作成し、それに基づいてコードを生成する。
 →AWSの「Kiro

<エージェンティックコーディング>
「Devin」の操作画面は、チャット画面・シェル画面・コードエディター・内蔵ブラウザなどを備えてあります。SlackやGitHubからも指示を出せます。
IDEに搭載したタイプ:米「🇯🇵Cursor」、米「Windsurf
 →GoogleがWindsurfの社員を引き抜き「Antigravity」提供
  見た目などWindsurfに似ている
CLI環境で稼働するタイプ:米「🇯🇵Claude Code」、米オープンAI「Codex CLI」、米Google「🇯🇵Gemini CLI」、中アリババ「Qwen Code
<バイブコーディング>
アプリの実装から公開、URLの発行まで自然言語で直感的なGUIで進めることが出来ます。エージェンティックコーディングとは違い、ソースをレビューせずそのまま受け入れながら開発を行うことが一般的です。
<仕様駆動開発>
バイブコーディングでは仕様書が残らないため大規模開発には向きません。仕様駆動開発ではまずAIを活用して仕様書を作成し、その仕様書に基づいてソースコードを生成します。AWS「Kiro」で実際に行うと、まず requirements.md(要件定義)を出し、そこに要件を増やすなど確定します。それを承認するとファイル構造などを記述した「design.md」を作成します。それを承認すると、実装計画を示した「task.md」が作成され具体的な作業手順が並びます。このタスク項目の横にあるボタンを押すと実装されます。

フォーカス:米ウインドサーフ CEO ジェフ・ワン氏】(P.52)
エンジニアがプロジェクトのコードベースを迅速に理解出来るようにする機能がWindsurfの大きな強みです。「DeepWiki」でコードベースをWikiの文章にまとめます。「Codemaps」でソースコードの構造を分析し、図として可視化します。

米政府に提供するため必要になる、セキュリティー基準の「FedRAMP」を満たすように設計しています。他のAI駆動開発ツールではFedRAMPを満たしているツールはないでしょう。また営業やマーケティング、カスタマーサポートなどで構成するGo to Market(GTM:市場開拓)チームを強化してきました。毎年約10倍の成長率を維持しています。グローバルの大企業を中心に1000社以上で、ユーザ数は100万人です。

2025年7月に、AI駆動開発ツール「Devin」を提供する米コグニションAIのグループになりました。当初Windsurfを米オープンAIが買収するつもりでしたが、破綻になったあと米グーグルがCEO含むエンジニアチームを引き抜きました。そのためWindsurfにはエンジニアを増強したいという強い思いがありました。逆にコグニションAIは技術力は十分にありましたがGTMチームを構築したいという要望を持っていました。今回の買収でお互いが求めていたものを満たすことが出来ました。興味深いことにDevinとWindsurfの両方を使う顧客は、売上ベースで5%しかいません。

※Salesforceに5年11ヶ月おられて、私と1年ほど(日米の差はありますが)重なっていました。少し親近感を感じました。

情報処理技術者試験の大幅刷新案 2027年度に「応用」「高度」試験を再編】(P.72)
経済産業省は2025年12月、情報処理技術者試験の見直し案を発表しました。2027年度から新試験を開始する予定です。
1.非エンジニア対象に「データマネジメント試験」創設
2.ITパスポート試験を見直し、システム開発内容は縮小
3.応用と高度を再編し3領域に再編(仮称)
  「マネジメント・監査」「データ・AI」「システム」
4.CBT(コンピュータベースドテスティング)の採用

※意味はないけど受けてみようかな・・・

エヌビディアが自動運転向けAI基盤 LG電子は家事を手伝えるロボット】(P.73)
2026年1月6〜9日に「CES 2026」が開催されました。
米エヌビディア自動運転向けのAI開発基盤「Alpamayo」を発表しました。100億パラメータのAIモデルもオープンソースの一部として公開します。独メルセデス・ベンツが採用し2026年前半に米国で公道を走行する予定です。
韓国LG電子:フィジカルAIを搭載した「LG CLOiD」を発表しました。家電と連携することで様々な家事を担います

自治体システム標準化の遅延拡大 5000システム超に、3ヶ月で3割増】(P.75)
デジタル庁は2025年12月23日、標準準拠システムへの移行が期限より遅れる地方自治体のシステム数が、2025年10月末時点で5000システムを超える見込みと発表しました。
 3万4692システムのうち5009システム(14.5%)
 1788団体のうち、743団体(41.6%)

全国の自治体は、原則2025年度末までに住民基本台帳や戸籍といった計20の基幹業務システムを一斉に標準準拠システムに移行するよう法律で義務付けられています。開発ベンダーの一社であるTKCは12月22日現在で160団体の標準化システムとガバナンスクラウドへの移行を完了したと発表しました。

AIを使って落とし物を自動抽出 駅やタクシー内など横断検索が可能に】(P.77)
遺失物管理サービスの「落とし物クラウドfind」を提供するファインドが、同サービス導入企業の落とし物を横断的に検索出来るシステムを発表しました。当初は京急、モノレール、日本交通などで横断検索が可能になります。年間200万件の落とし物を扱うJR東日本も2026年4月に導入する予定です。1年に100社弱、3年で500社への導入を目指します。

利用者は各事業者のWebサイトの落とし物窓口から「find chat」を利用し、落とし物の写真や画像からAIが自動で特徴を抽出します。チャットを通じたやりとりで自分の落とし物かを探せます。落とし物を管理する事業者は自社管轄下のものしか閲覧出来ません。横断検索はファインドのオペレータが検索し返信します。

ケーススタディ:イオンフィナンシャルサービス】(P.80)
イオングループの中で金融事業を担うイオンFSGは、1000超のサーバーで稼働していた、100超のクラウド移行を2段階で行っています。元のシステムは開発ベンダーが別々のため異なる基盤で動いていました。

1段階目:2018年から4年かけサーバーなどの物理マシンを統合した「オンプレミス統合基盤」へ移行

 →運用基盤を統合しました
2段目:2023年から物理マシンを「クラウド基盤」へ移行
 →2025年12月時点で75%以上の移行を完了。2028年完了予定

クラウドは「AWS」「Azure」「GCP]の3つのクラウドサービスで、「クラウドロックイン」されないようにしています。クラウドにすることで、イオングループ全体でシステムを共有しやすくなりました。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第310回】(P.106)
始めた改革をどう続けるか テーマ設定と成果計測がカギ
前号のこのコラムでは、「ITやAIによって事業や組織を変えるためには、『型』と『心構え』が大切」と説明されました。何とか始めた改革を続けるためにどういう点が重要でしょうか?

そのヒントを見つけるため、一般社団法人CRM協議会が実施する「CRMベストプラクティス賞」を取り上げます。2004年から表彰し続けています。4年連続受賞すると「継続賞」が送られます。2025年には9企業2自治体が受賞し、そのうち5組が継続性を獲得されました。

続けられる理由を2点挙げます。
1.経営者から現場までわかりやすい改革テーマを選んでいる
2.成果や進み具合をデータとして計測すること

※「計測出来ないものは改善できない」という言葉はドラッガーもデミングも言ってます。問題解決には「何を問題視し、何を測るか」を定義することが不可欠です。それが改革の第一歩ででしょう。
 

以上

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです

特集は<「1億総AI人材」への道 日本、AI国力向上の処方箋>です。特集は高校生の世代では遜色ないのに企業では圧倒的に敗者になっている日本の中で何とかしようとしている企業の話でした。企業の参考になるとは思いにくいです。

ITが危ない:内部不正が招く情報漏洩危機 「正規アクセス権」が盲点に】(P.08)
「不正のトライアングル」の3要因踏まえ対策を
2025年はランサムウエア攻撃による情報漏洩が多く発生しました。実際には外部ではなく内部不正による漏洩リスクが高まっています。


内部不正が防ぎにくい最大の理由は、正規のアクセス権が悪用され、検知しづらい点にあります。IPAは、米犯罪学者のドナルド・クレッシー氏が提唱する理論「不正のトライアングル」を基に3要因が高まる時に起こると整理します。
1.動機・プレッシャー:お金が必要、転職に有利など
2.機会:誰も管理していない。いつでも持ち出せる。
3.正当化:自分勝手な理由付けや倫理観の欠如
対策はこの3要因を低減・抑制する観点で設計しましょう。

※日頃から職場でコミュニケーションすることの方が重要だと思います。

「1億総AI人材」への道 日本、AI国力向上の処方箋】(P.12)
1.AI五輪で高校生が金 活用人材の活用を
2025年8月に中国・北京で開催された第2回国際人工知能オリンピック(IOAI2025)で、日本から4人が参加し、全員がメダルを獲得しました。金1名、銀1名、銅2名でした。
世界的なAIコンペティション「Kaggle」の競技部門である「Kaggle Grandmaster」を持つ人の数は、日本と米国が世界1,2位を争います。

ところがオランダの人材会社の調査によると、主要15カ国の中で「AIを実務で使っている」「AIスキル研修」「会社がAI活用に必要なスキルを与えてくれている」の3指標全てが最下位でした。AI人材を育成するためには次の3点が重要です。

①トップのコミット ②環境整備 ③文化の醸成


2.DeNA会長の大号令 全社員をAI人材に
DeNA創業者の南場智子会長は2025年2月の自社イベントで「DeNAはAIにオールインする」と宣言しました。現状3000人で手掛ける既存事業を半数の人員で運営できる体制にし、浮いた人的リソースを新規事業に振り向ける計画を打ち出しました。この方針のもと、AIの社内浸透を図っています。
ソフトバンクGも2025年7月の自社イベントで、孫正義会長や宮川潤一社長が全社を挙げたAI活用を宣言しました。2万人の全社員に対して、1人100個のAIエージェントを開発することを課しました。オープンAIが用意するカスタムAIエージェント機能「GPTs」を利用しほぼ全員が達成しました。
三節UFJ FGの亀澤宏規社長が「AIネーティブな組織を目指す」というトップメッセージのもと、AIの全社浸透を急ピッチで進めています。全社員15万人を対象にAI浸透運動「Hello,AI @MUFG」を開始しました。

3.社食にAI考案ランチ 興味換気へ知恵絞る
ダイキン工業は2023年7月に国内の社員1.4万人がAIを使える環境を整えました。認知度向上のため、2024年冬に1ヶ月、社員食堂でAIが考案したメニューを週替りでランチ提供しました;
住友商事は2024年4月、海外グループ会社を含む約9000人の社員が生成AIの一斉利用を開始。現在既に9割が使っています。
リコーは2024年末に米LangGeniusが提供するAIアプリ開発ツール「Dify」を社内導入しました。グループ会社を含め国内の全従業員3万人に提供し活用事例発表会やコミュニティを開いています。

4.モデルケースは高専 産官学挙げて育成を
「1億総AI人材」に向けて教育段階から適切なAI教育が必要です。社会人向けAI教育に向けて、経産省は「デジタルスキル標準(DSS)」の見直しを進めています。経産省がオブザーバを務めるデジタルリテラシー協議会は、次の資格検定の合格数に応じて「DX推進パスポート」のデジタルバッチを提供しています。①IPAの「ITパスポート試験」②JDLAの「G検定」③DSSの「データサイエンティスト検定」

※AIを使って売上があがるか利益が上がるか実績が出ない限り中小企業は本気にならないでしょう。既得権益国家の悲哀かも知れません。

現地レポート AWS re:Invent 2025:AIモデルに新機軸】(P.28)
2025年12月1日から5日間にわたり米国ラスベガスでAWSの年次イベントが開催されました。
※11/30-12/4と書いてあるページもありました。どっち?


AIの新モデル「Amazon Nova 2」を発表するとともに、顧客が自社データで再学習させられる「Amazon Nova Forge」を出しました。「開発中のモデル」を開発する権利をサービスとして提供したと言えます。
再学習するとベースとなるAIモデルの性能が大幅に低下する「破滅的忘却(Catastrophic Forgetting)」の問題があります。それを克服するためAWSが提供する学習データを自社データに混ぜる機能も提供します。

AIエージェントが「PoCの監獄」から抜け出し本番対応出来るため、「Amazon Bedrock Agent Core」に新機能が発表されました。
1.Policy in AgentCore:タスク実行のルールを定める
 →返金額の上限でブロックするなど
2.AgentCore Evaluations:行動を評価/可視化
 →評価のスコアリングや指標を設定し低下でアラーム
3.AgentCore Memory episodic functionality:文脈記憶
 →文脈に基づいた記憶によって推論を可能にする

フィジカルAI(物理AI)のセッションもありました。機械やロボットに組み込まれたAIです。スタートアップ企業6社の展示もありました。

ワーナー・ボーガスCTOはクロージングキーノートでこう述べました。現代はAIやロボット工学など技術革新が同時に起きている特別な時代です。科学者たちが挑戦と失敗を繰り返したルネサンスの時代を例に「ルネサンスデベロッパー」になってほしいと5つのメッセージを送りました。
①好奇心を持つこと②システム思考で物事を捉えること③コミュニケーション能力④自身が作るもののオーナーであること⑤幅広い知識

※AmazonがフィジカルAIに目を向けているのは面白い。物理ECシステムに端を発しているAmazonだけがその権利がありそうです。最後のルネサンスデベロッパーという視点も大変参考になりました。

ワンタイムPWは限界 今知るべき弱点と対策】(P.40)
2025年に入り、多要素認証の安全性に対する信頼を揺るがしいかねない事案が発生しました。証券口座が乗っ取られ、株式を不正売買される被害です。

5月に不正売買の被害が発生した証券会社を中心に多要素認証を必須化しました。ところが不正アクセスを防ぎきれませんでした。多くの証券会社が採用したワンタイムパスワードを組み合わせる多要素認証だと「リアルタイムフィッシング」で破られる恐れがあるためでした。

リアルタイムフィッシングの手口はこうです。
1.攻撃者は偽のフィッシング詐欺サイトを作成する
2.正規ユーザが詐欺サイトででパスワードを入力する
3.攻撃者は直ちに正規サイトでログイン操作を行う
4.正規サイトは正規ユーザのスマホにワンタイムPWDを送る
5.正規サイトは攻撃者にワンタイムPWD入力を要求する
6.詐欺サイトは正規ユーザにワンタイムPWD入力を要求する
7.正規ユーザが入力すると攻撃者は正規サイトにログインする
正規サイトで悪用する手順は自動化されていることが多く、すぐに悪用される。

これを防ぐため「スーパーワンタイムパスワード」を楽天証券が採用しました。これはワンタイムPWDの代わりに絵文字を認証情報として利用するため文字のように悪用されにくい事が特徴です。ところがこれも突破されたと10月10日に公表しました。

今のところ最良の方法は「パスキー認証(FIDO2)」です。スマホに認証情報を保持し、指紋認証でログインする方法です。

※最近さまざまなサイトでパスキー認証が普及してきました。スマホを紛失した時にどうなるか多少不安です。

新春特別インタビュー:IT大手5社2026年の事業展望】(P.46)
日本IBM、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所の社長が見開き2ページでそれぞれ事業展開を語っています。気になった発言
日本IBM:富士通と電子カルテ普及で協業を発表
NEC:海外の専門性の高い企業の買収で海外を強化
日立フィジカルAIはエージェンティックAIの3倍の市場。2030年には20兆円に達する。日立にアドバンテージがある分野

※AWSでも出てきた「フィジカルAI」ですが、市場規模3倍にはびっくり。世界で勝負出来るのは日立だけでしょう。

アンソロピックがMCPを寄贈 オープンAIらとAI新団体を設立】(P.59)
2025年12月9日、AIエージェント技術の標準化団体「Agentic AI Foundation(AAIF)」が設立されました。設立発起人は、オープンAI、米ブロック(旧スクエア)、米アンソロピックの3社です。Google,AWS,Microsoftも加わったため世界的な標準規格を決める組織となる公算が大きいです。


目玉は、アンソロピックが「MCP(モデル・コンテキスト・プログラム」を寄贈したことです。コードなどの管理を中立的な組織であるLinux財団に移管します。

伴走型セキュリティーサービス続々 「顧問」として企業を支える】(P.64)
2025年10月から11月にかけて数社がセキュリティの「伴走」「かかりつけ医」を掲げるサイバーセキュリティサービスを発表しました。NTT西日本グループ、ラック、IIJ、三井物産セキュアディレクションなどです。

理由は2つと考えられます。まず顧客の経営層への訴求力を高めるためです。もう一つはランサム攻撃で甚大な被害が出ている中、「外から物申すのではなく、一緒に走るという思いを表現する」ためです。

高度化するサイバー攻撃に対応するためには対処療法ではなくより上流から、IT戦略ひいては経営戦略のレベルからサイバーセキュリティを考える必要があります。そのための伴走支援という位置づけです。

※顧問料を払って定期的にセキュリティ状態を確認してもらうのは良い方法かも知れません。

乱反射:富士通の英国郵便局問題に新展開 英警察が「法人故殺罪」で訴追検討か】(P.66)
英国郵便局が使うホライゾンITシステムを巡る刑事捜査に関し、英警察当局は従来の偽証罪や司法妨害罪に加え、「法人故殺罪(corporate manslaughter)」の訴追を検討していると被害者に伝えました。この事件は富士通の子会社が開発し1999年から運用しているホライゾンITのバグのために、236人が刑務所に送られ少なくとも13件の自殺の一因となりました。調査委員会に対し、59人の元委託郵便局長が自ら命を経つことを考えたと証言しました。

法人故殺罪は、法人が起こした死亡事案に対して、法人の注意義務違反など一定の構成要件を満たすと認められた場合に上限のない罰金を課すことが出来る法律です。

富士通が警察の情報システム(法執行機関ネットワーク)も手掛けているため自体を複雑化させています。

動かないコンピュータ:デジタル庁】(P.76)
2025年10月30日、「iPhonoのマイナンバーカード」と「Androidスマホ用電子証明書」の新規発行が出来ない障害がほぼ同時期に起きたと発表しました。
 iPhone障害:10/30 8:50〜10/31 18:50
 Android障害:10/30 7:40〜10/30内に復旧
ところが障害の原因の詳細は発表しません。障害が発生した箇所も概要しか発表しません。

※デジタル庁にはそれなりに優秀な技術者が居るはずですので原因と根本的対策を発表するべきです。

キーワード:フィジカルAI】(P.80)
フィジカルAIとは、仮想世界ではなく、現実世界で動く製品やデバイスに搭載されるAIです。複雑な環境に対応する判断や実行の支援を期待されています。

例えば自動運転車やロボットなどセンサーやカメラから膨大なデータを取り込み学習出来ます。米エヌビディアはフィジカルAIの開発基盤「NVIDIA Cosmos」を2025年に提供しています。ソフトバンクGは2025年10月にスイスABBからロボティクス部門を8187億円で買収しました。ABBのろボティスクス部門は産業用ロボットの4強メーカーの1つです。他にファナック、安川電機、ドイツKUKAがあります。

※今号でフィジカルAIが3回も出てきました。AWS、日立、そしてNVIDIAです。NVIDIAはオープンソースの自動運転基盤を発表しました。ベンツやウーバーが採用に関心を持っています。

新連載:AIエージェント連携へ備え 新共通プロトコル「MCP」 第1回】(P.82)
AIエージェントの導入がPoCまでは上手く行きますが本番環境に移行しようとすると「接続」という壁に頭を抱えるケースが多くあります。その解決法として、「MCP」を解説します。

まずは大手企業で発生している典型問題
ケース1:AIエージェントを既存システムと接続しようとすると20年前に構築された基幹システムがSOAP接続しか出来ない
ケース2:接続したいシステムは、部門ごとに異なるベンダーが開発し認証方法がバラバラ
ケース3:セキュリティ部門のレビューを通すために無駄な投資が必要になった

MCPサーバーがハブとなって接続問題を解決するでしょう。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第309回】(P.90)
2026年こそ改革を始める そのために必須の型と心構え
ITやAIによって事業や組織を変えるためにどうすればよいか。
:ITを使って事業を改革していく時の進め方
 →改革の当事者が「これなら出来る」と納得出来た型
心構えマインドセット
 →ガートナーの2026年に向けて獲得すべきマインドセット

4分野10点が書かれています。「江戸ダッシュ問題」とは、江戸を新しくしたつもりが「江戸’」にしかなっていないという意味です。「時代の変化を踏まえ適切な言葉を使う」は「出来るのか」「事例はあるのか」など「〜なのか」という他人事の言葉を止め自分事の言葉を使うという事です。

 

中田敦のGAFA深読み:AIにオフィス業務を任せられるか 参考になる2つのベンチマーク】(P.104)

「AIエージェント」は、実際の業務に活用出来るのかを測るベンチマークの整備が米国で始まりました。

◆オープンAIが2025年9月25日に発表した「GDPval

44種の専門分野に関して、AIエージェントにドキュメントを作らせます。成果物の出来栄えを専門家が作った成果物と比較して「勝率」がベンチマークとなります。9月時点のスコアは

 GPT-4o:12.4%、GPT-5:38.8%、Claude Opus4.1:47.6%
ところが2025年12月11日に発表したGPT-5.2で、70.9%に急上昇しました。業務文書作成能力は「人間以上」といえるでしょう。

◆米データブリックスが2025年12月9日に発表した「OfficeQA

RAG(検索拡張生成)の能力を測ります。米財務省が公開している9万ページほどの文書を使用し、事前学習した知識では答えられない経済統計などに関する専門的な質問を246件行います。複数の文書を見ないと答えられないだけでなく、統計数値があとから発行された文書で訂正されることもあり誤差が出ます。

 GPT-5.1:43.5%、Claude Opus4.5:37.4%

 

※「GDPval」は恣意的評価になりやすそう。「OfficeQA」のほうが客観的判断が出来そうです。

以上

日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです

特集は<徹底予測2026 AI駆動がIT業界に構造変化を迫る>です。次号は恐らく恒例の<新春IT大予測2026>ですのでその前座としての特集のようです。

ITが危ない:労基法改正議論のインパクト SIerは生産性向上が急務】(P.08)
労働基準法(労基法)は戦後直後に施行され、1987年に週48時間から40時間への大改正が行われました。約40年ぶりの大改正が議論されています。早ければ2027年施行と言われています。議論されている内容はIT技術者に大きく影響します。研究会報告書から方針を見ます。
1.13日を超える連続勤務を禁止する
 (現状では最長48日間の連続勤務が可能)
2.勤務間インターバルとして11時間を確保する
3.つながらない権利を配慮する(勤務外でのメールや電話)
※若い頃は徹夜して仕事を覚えていました。ますます若者を育てるのが難しくなります。

徹底予測2026 AI駆動がITに構造変化を迫る】(P.10) 
ITインフラ、システム開発、ITベンダー、セキュリティの4分野で2026年に訪れるであろうAIによる変化を徹底予測します。
1.国産振興へ ソブリンAI 業界特化型に活路
2026年は国産のソブリンAIが出てくるでしょう。ソブリンAIとは生成AIの開発や利用において、国としてモデルやデータ、インフラを主権的に管理することを指します。日本の生活やビジネスの文脈を知らない生成AIでは、文化的バイアスがかかる恐れがあるため日本のソブリンAIが求められます。

2025年9月、AIに特化した法律「AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が施行されました。それを受け「AI基本計画」で政府がAIの開発や利用を協力に推し進める事が表明されました。ソブリンAIでは「国産」モデルを使う方針となっています。具体的にどれにするかは今後決まります。2026年はもう1段進み、実際の企業におけるユースケースを打ち出せるかが鍵になります。

2.開発作業は全自動へ 技術者の価値も再編
2026年は、全行程でAIがフル稼働し始める節目の年となります。それに応じてエンジニアの役割が変わってくるでしょう。エンジニアが生きる道は次の3種類です。
(1) システムのマクロな設計能力を持ったエンジニア
 →複雑な設計判断や組織内の調整を担当
(2) AIの運用に特化したエンジニア
 →AIモデルやAIエージェントを運用
(3) レガシーシステムに詳しいシステムエンジニア
 →既存資産や業務知識。暗黙知をドキュメント化

3.SIerに変革迫るAI 脱・人月型が急務に
2026年は、システム開発における生成AIの利用はPoCを終えて実用に入り、現実的な課題が見えてくるでしょう。労働集約型(人月型)から知識集約型(パッケージや提案型)に変わり事業モデルの転換を進める年になるでしょう。

4.ランサムはAI駆動に バイブハッキング台頭
2025年はサイバー攻撃が多発しました。2026年もサイバー攻撃の増加傾向は変わらないでしょう。攻撃者が生成AIを本格使用するVibe Hackingも増えます。守るのも大変になるでしょう。

※なんだか暗い話が多くて残念です。もっと明るい話が聞きたいです。

【ITインフラテクノロジーAWARD2026 基盤技術はAI-Readyに】(P.28)
日経クロステック/日経コンピュータが、有識者5名を招き選考する毎年吉例のAWARD。有識者は、NRIの石田氏、ULSの漆原氏、NIIの佐藤氏、Publickeyの新野氏、博報堂の森正氏
※漆原氏はいつの間にかウルシステムから離れてるのですね

1位:MCP(モデル・コンテキスト・プロトコル)
 →生成AIと、既存のシステムを連携する接続規約
2位:ビジネスレジデンス
 →サイバー攻撃や災害などから回復する力
3位:AI-Readyモダナイゼーション
 →AIによるデータ処理を前提としたモダナイゼーション

有識者の個人的注目技術について、NRI石田氏は<カラムファースト・データ・モデル>を選ばれました。これは従来のデータモデルと違い少数の列を持つ複数のテーブルに分散する手法。データの更新や削除も認めず、常にインサート処理とします。

※AWARD2022でも石田氏の造語「DOA2.0」を取り上げました。これもイミュータブル構造です。好きなのでしょう。

セールスフォースがAI機能を強化 決定論的処理とLLM推論を両立】(P.61)
AIエージェントを業務プロセスへ自然に組み込む
セールスフォースは2025年11月20日、「Agentforce 360」の日本での提供開始を発表しました。Agentforceは2024年9月に発表したAI Agentです。次々と進化してきました。
今回「Agent Script」を発表し2025年12月にベータ版の提供を開始する予定です。AIエージェントへの指示文を、自然文で書くのではなくスクリプトで書けるようになります。これにより同じ入力に対して同じ結果を出力することが出来ます。これを決定論と呼びます。

※LLMの課題は、同じ入力でも毎回回答が変わることです。そういうAIの業務(非決定論)と、必ず同じ回答を出したい業務(決定論)があり操作を分けることが出来るようになります。

プライバシー強化技術「PETs」普及へ 新団体設立、「オールジャパンで連携」】(P.63)
Petsとは、プライバシー強化技術(Privacy Enhancing Technologies)です。個人のプライバシーや組織のデータを保護する技術の総称です。例えばこういう技術があります
匿名加工技術:特定の個人を識別出来る符号を削除して復元不可
秘密計算:データを秘匿したまま結合して相関関係などを分析
 

これらをAIの学習データに用いる事が広がっています。Petsを普及させるため、日本総合研究所が発起人となり「PETs社会実装推進コンソーシアム」が発足しました。社会実装に向けたアクションプランを議論します。

動かないコンピュータ:美濃工業】(P.74)
全ファイルサーバーがランサム被害 消し忘れアカウントからVPN侵入
美濃工業は岐阜県中川市にある従業員1000名程度の自動車部品メーカーです。米ロサンゼルス拠点に出張中の社員が

 現地時間10月3日(金) AM9:25

に本社のサーバーにアクセスしたところ、目的のファイルが見当たらず代わりに脅迫文書(ランサムノート)を見つけました。すぐに

 日本時間10月4日(土) AM2:30頃

に上司に電話を入れ2:49にネットワークを切断しました。

調査したところ、社内の全ファイルサーバとプリントサーバ、一部のパソコンでデータが暗号化されていました。情報管理部は土日の間にバックアップからファイルサーバを復活。プリンターを直接サーバにつなぐことで製品を出荷できる状態まで復旧しました。火曜日には通常業務に戻せました。

侵入経路はVPN装置でした。臨時で作成した「temp1」というIDを消し忘れており簡単なパスワードだったため推測されたと見ています。10月1日に侵入し、ActiveDirectory(AD)の管理者アカウントもリスト型攻撃で突破されていました。

今回はたまたま米国出張中の社員が発見したため土日で復旧出来ましたが、通常なら月曜日まで気づきません。被害はもっと大きくなっていた可能性があります。また時系列まで含め詳細な情報を公開された事も話題になりました。

※被害を最小限に防げたこと、即時詳細に外部発信したことを含め素晴らしい対応だと思いました。危機管理マニュアルがしっかりしていたのでしょう。

ビジネスメタデータ マネジメント入門 第2回】(P.82)
※第2回も取り上げる連載は珍しいです。面白いです。

ビジネスメタデータの意義を例え話で説明します。冷蔵庫をデータベースだとします。冷蔵庫の中に様々な食材があります。そこに第三者が来て冷蔵庫を開け適切な夕食を作れるでしょうか?


例えば家族の中に食事制限をしている人が居るか、好き嫌いは何かなど、家族なら知っている情報でも第三者は知りません。つまり冷蔵庫(DB)を使いこなすためには、<データを実際に活用するための文脈や条件・制約についてわかるようにする>必要があります。これがビジネスメタデータです。

ビジネスメタデータには4つに分類出来ます
<基本>データの意味・識別:定義、名称、意味、分類など
    利用制約・対象:利用可否や品質など
<応用>ビジネスコンテキスト:活用文脈・背景・理由
    ライフサイクル:収集、蓄積、クレンジングの証跡

ビジネスメタデータをどう管理するかも課題です。特定の生成AIに蓄積してしまうと新しい技術が出てきた時どうするのか。どこか1箇所にまとめておき、それぞれの生成AIから使えるようにするなど工夫が必要です。

※データカタログが広がりつつありますがコンテキストまでいれるためには、どう使うか、つまりユースケースも必要です。


社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第308回】(P.90)
「2030 次世代AI 日本の勝ち筋(佐藤一郎著)」が2025年11月に発刊されました。

2030 次世代AI 日本の勝ち筋

4〜5年先に次のAIがどうなっており、それを使ってどう勝つかを論じています。

佐藤一郎氏は国立情報学研究所(NII)の教授であり著名なコンピュータ・サイエンスの学者です。専門技術について出来る限り平易に解説されています。最先端の話も簡潔にまとめています。
その反面、少し深く知りたいと思う話題もあります。関心を持った箇所について他の文献を探すのが良いのでしょう。

この本で言う「日本の勝ち筋」をコラム筆者はこうまとめます。
<特定のドメイン(業務)に特化したAIの開発に力を入れると共に、「そのAIを活かした業務の仕方そのものを」輸出する>
AIエージェントに適切な情報を提供するためにデータベースの整備も重要です。

※佐藤氏は毎年WARDの選者に選ばれています。

以上