日経コンは2週間に1度、年に52週÷2=26冊出る雑誌です。2010年から全号精読して記事をザッピングしています。
※はブログ筆者のコメントです
特集は<Google DeepMindの正体 AIに人型ロボ、先端研究を社会へ>です。GoogleのAIブランド「Gemini」は双子座を意味します。2023年に組織が統合したディープマインドとグーグル・ブレインに由来するそうです。内輪ネタだったのか・・・
【ITが危ない:AI特需でメモリー価格急騰「3ヶ月で約6倍」】(P.08)
<PCは約2割値上げの観測も>
AI特需によるメモリーの需給逼迫が原因とみられる価格高騰が発生しています。2025年9月頃に比べ12月には6倍近く値上がりした製品もあるそうです。メモリーチップは3社で世界シェアの約9割を占めるとされます。
・韓国 => サムソン電子、SKハイニックス
・米国 => マイクロンテクノロジー
PCメーカー各社は値上げは未定としていますが、4月ごろには20%程度上昇すると見られています。個人向けの高性能なパーツはすでに気軽に変えないほど高騰しています。「1年ほどは様子を見たほうが良い」との事です。
※中国からの輸出禁止が影響している部品もあります。
【Google DeepMindの正体 AIに人型ロボ、先端研究を社会へ】(P.12)
1.息吹き返したグーグル オープンAIを苦境に
AI競争で劣勢に立たされていた米グーグルが息を吹き返しました。2025年11月に「Gemini 3 Pro」を公開すると、米オープンAIのサム・アルトマンは社内にコードレッド(緊急事態)を宣言したとTV番組で認めました。多くの指標で「GPT-5.1」を上回っていたためです。
2026年1月の調査結果(米シミラーウェブ)では、1年前に86.7%だったChatGPTのシェアは64.5%に急減しました。Geminiは5.7%から21.5%に急伸しました。
グーグルの急伸を支えるのが3年前(2023)に2つの組織が統合して発足した組織、Google DeepMind(GDM)です。ChatGPTが2022年11月に登場して危機感を持ったグーグルは、世界レベルのAIチーム、ディープマインドとグーグル・ブレインを統合して発足しました。
2.AlphaFoldの衝撃 人類の利益を追求
2018年にタンパク質の立体構造予測AI「AlphaFold」が出て科学会に衝撃を与えました。タンパク質の立体構造の予測精度がそれまで40%程度たったものを60%まで引き上げたためです。2020年11月、膨大なデータで強化した「AlphaFold2」の予測精度は驚異的でした。2024年5月には様々な分子が結合した状態での立体構造予測を可能にする「AphaFold3」を発表しました。この研究チームは2024年のノーベル化学賞を受賞しました。
AlphaFoldは、科学会に3つの恩恵をもたらしました。
①科学の民主化(一般公開することで誰でも使える)
②研究スピードの向上(数年が数分に)
③コストの削減(数千ドルの計算が1分に)
3.フィジカルAIで攻勢 人型ロボの頭脳に革新
韓国 現代自動車 傘下の米ボストン・ダイナミクスがヒューマノイド「Atlas」の試作機を2026年1月のCES2026で公開しました。2028年には現代自動車の米国工場で実際に稼働させる計画です。このAtlasには、GDMが開発したロボット向け基盤モデル「Gemini Robotics」を搭載しています。GeminiをベースとしたVLA(ision-Language-Action)モデルとして、視覚・言語・行動の3要素を統合し、世界のルール(法則)を学習します。ロボットを使って靴紐を結んだり、シャツをハンガーに掛けたりする作業に成功しています。
4.気象業界の「黒船」に 企業との連携で成果
日本のウェザーニュースとGDMはパートナー契約を結びました。台風の進路予測の精度を評価すると、これまでスーパーコンピュータを用いて各国の気象機関が構築してきた物理モデルを、GDMのAIモデルがはるかにしのぎました。「気象業界では黒船が来た」と言われています。
GDMのAIモデルも、降水量や風の予想では物理モデルに比べて精度が低いなど苦手な分野もありますが、GDMの研究開発の成果が社会に実装された一例です。
5.社会実装チーム組成 AI責任者が語る道程
旧ディープマインドで初代COO(最高執行責任者)を務め、2026年1月にはGDMの最高AI準備責任者に就任した ライラ・イブラヒム氏にこれまでの経緯を聞きました・
①我々のミッションは「人類に利益をもたらす責任あるAI(人工知能)を構築すること」です。全ての製品、研究はこの考え方を中心に設計されています。
②Geminiを製品として提供する一方で、「Gemma」というオープンモデル群を公開しています。
③私の管轄組織の中には、倫理や責任に関する研究者チームがあります。どのように責任をもって社会に展開するかを検討します。
④AI技術を社会に迅速かつ安全に届け、実社会でのインパクト創出を担う専門チームを構築しました。
※SNSの論調でもGoogle覇権という意見をよく見ます。個人的には日本のベンチャーが出てきてほしいです。
【緊急点検、ランサム対策】(P.26)
<専門家直伝、今すぐやるべき10項目>
アサヒグループやアスクルなどランサム被害が社会問題になっています。アサヒGHDは「ゼロ・トラスト・セキュリティーの構築」を実施、アスクルは「EDR(エンドポイント・ディテクション・アンド・レスポンス)導入を含む検知体制の構築などを行いました。これらには時間や費用が必要です。本格的な対策の前段階としてすぐにできて対策効果が高い「緊急点検10項目」をまとめました。
■管理者アカウントに関する点検
①「最小限の法則」を守っているか
必要な人に、必要な時にだけ権限を与える
②パスワードポリシーを設けているか
15文字以上など
③既存のセキュリティ機能を有効にしているか
Windowsが標準搭載するDefenderを有効にしているか?
■侵入口となる「AS(アタックサーフェス)」に関する点検
④「アタックサーフェス」を把握しているか
サイバー攻撃の糸口になる得る全てのIT資産と経路
→グループ企業、関連会社、在宅の自宅なども
⑤2要素認証を導入しているか
⑥脆弱性発見時の対応体制を構築しているか
■バックアップデータの管理に関する点検
⑦バックアップデータは「イミュータブル」か
データを変更も削除も出来ない状態のこと
⑧「エアギャップ」を設けて保存しているか
対象のデータをネットワークから物理・論理的に隔離する
⑨「保管期間」を適切に設定しているか
侵入前のバックアップが必要。1ヶ月以上前のことも
⑩復旧手順を確立しているか
複数システムが連携する環境でリストア手順を確認する
※ネットに晒しているIT資産の棚卸しは特に重要ですね
【インタビュー:情報システム学会 会長 伊藤 重隆氏】(P.44)
<世の中の仕組みは「情報システム」 AI時代こそ人間中心の考え方を>
情報システム学会(ISSJ)は、世の中の仕組みを「情報システム」として見るところから始まりました。その仕組の改善や発展の研究が必要だという思いで学会を立ち上げました。
※伊藤氏は2005年の学会創設の発起人でもあり、2013-2019年まで会長をされました。2025年に会長を再任されました。
ITの専門家でない方も巻き込んで活動しています。情報システムは全社のものです。この考えの下、欧米のCEOは積極的に関わるのが普通です。日本のCEOも先頭に立って理想を追い求めて欲しいと思います。
2025年で学会は創立20周年を迎えました。今はAI利用が多くなると思いますが、最終的に判断するのは人間です。これを忘れないようにしたいです。
※IT勉強宴会とも多少関係している学会です。似た名前の学会に、情報処理学会があります。こちらはITだけの学会です。
【消費税減税に必須のシステム改修 現場負担の重さを懸念】(P.48)
高市早苗首相が大勝し、「食品に限定して2年間の消費税減税」が現実味を帯びてきました。詳細がまだ決まっていませんが、現時点の対応方針を調べました。
■レジシステム:Airレジ:システム側の改修は半年から1年以内
■会計システム
フリー:修正なく対応可能
弥生:開発の難易度が読めない
なお、製品機能として対応可能でも、カスタム仕様で利用している顧客には個別対応が必要なケースもあります。また現場の理解不足で問い合わせが殺到する懸念もあります。
※軽減税率0%なら良いのですが非課税だと改修規模が跳ね上がるでしょう。早く方針を決めるべきです。
【SHIFTがAI駆使しモダナイ事業強化 大手と競合、2027年に40億円規模へ】(P.50)
ソフトウエアテスト大手のSHIFTが、AIを活用した基幹システムのモダナイゼーション(近代化)事業を強化し始めました。
1.既存プログラムをAIで解析し、設計書を制作する
2.設計書に基づいて生成AIを活用してシステムを開発する。
AI駆動開発には、米コグニションAIの「Devin」を主に使用します。ソフトウェアテストなどの下流工程の受託から、徐々に設計やコンサルティングなどの上流工程まで手掛けています。2015年8月期に32億円だった売上を10年後の2025年8月には1298億円まで延ばしました。
このモダナイゼーションサービスでは2027年までに40億円規模の売上を目指しています。
※毎年45%増で売上が増えている驚異的な成長の会社です。社員数がそれだけ採用し続ける事が出来るのも驚きです。
【EAフレームワーク「TOGAF 10」 日本語版が2026年4月に公開】(P.53)
EAはビジネス(戦略やプロセス)とデータ、アプリケーション、技術の4つの観点から企業や組織の全体像を捉える仕組みの事です。EAの実行手順をまとめたフレームワークの1つが、The Open Groupの策定した「TOGAF(The Open Group Architecture Framework)」です。最新版TOGAF10の日本語版が2026年4月に公開されます。
TOGAF10ではEAの取り組みを「アジャイル」に進められるように変更されました。
※TOGAFはデータモデルを重視されないため個人的には使いにくいと感じています。
【乱反射:日立がストレージ事業を売却か サービス事業への移行が鮮明に】(P.56)
米ブルームバーグが2026年1月30日に「日立製作所がストレージ事業売却を検討」と報じ、日経新聞も報道しました。日立株は前日比6%高となりました。
日立はデジタル技術で課題を解決する、ルマーダ(Lumada)中心のサービ業への転換を急いでいます。そのためと思えます。
※売却報道で株価が上がったのなら市場は歓迎しているのでしょうか。Lumadaには期待しています。
【ケーススタディー:IDOM(旧ガリバーインターナショナル)】(P.58)
中古車販売会社のIDOMが顧客接点管理にSalesforceを利用し、年数十万件の商談を一元管理し、成約率の向上を狙います。
2024年5月に開発を開始し、同年10月にプロトタイプ版を稼働しました。大型店や小型店など数店で実証を始め、最終的には数十店で3ヶ月の実証を行いました。2025年1月から確定版の開発に着手し、2025年12月20日、全200店で稼働を開始しました。200店の業務削減効果は月間2000時間を見込みます。
店舗で接客を受けた顧客は、その場で購入に至る「成約」、検討を続ける「継続検討」、購入しない「不成約」に分類します。継続検討のお客様にフォローする仕組みも構築しました。今後はAIエージェントが最適な車両を自動で提案する機能などを検討しています。
※プロトタイプ構築に5ヶ月かけるのはSalesforceのCRMとしては長いです。確定版構築の12ヶ月も普通ではないほど長いです。基幹システムとの連携があったのかなと想像しています。
【新連載:生成AI全社導入を支える 戦略的アーキテクチュア 第1回】(P.84)
<場当たり的なAI導入の末路 戦略欠如で陥る3つの落とし穴>
※野村総合研究所の山本文弥氏の連載です。
AIを単なるツールではなく、持続的なビジネス価値を生み出す「戦略的資産」にするためのアプローチを解説します。
今回は3つの落とし穴について
■落とし穴1:PoC止まり
壁1:ビジネスインパクトの壁
直接的なビジネスインパクトやROI(投資対効果)を示せない
壁2:品質と信用の壁
AIの回答精度が100%でない以上、公的な業務に利用する懸念
壁3:運用・ガバナンスの壁
継続的なメンテナンスが必要だが押し付け合う
■落とし穴2:野良AIの乱立
部門ごとにAIを利用し、重複投資/ガバナンスの問題
■落とし穴3:コスト増
効果を定量的に示す仕組みがなく、コストだけが増えていく
これらの落とし穴を回避するために必要な戦略的AIアーキテクチャを次回以降で解説します。
※PoCから脱出出来ない問題は全世界的に深刻になっています。
導入に成功した企業が発信しないと説得力に欠けます。
【社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第312回】(P.88)
<ビジネスアーキテクトは再定義 その役割をIT部門がまず担う>
IPAは、2025年12月1日「ビジネスアーキテクチュア人材の役割定義」を公開しました。3年前に「デジタルスキル標準」で示した「ビジネスアーキテクト」の役割を見直した資料です。
ビジネスアーキテクトの役割を3つに分けました。
1.狭義のビジネスアーキテクト
ビジネスアーキテクチャー(事業構造)を最適化し、これを実現する変革のロードマップを立案する
2.ビジネスアナリスト
業務・組織・システムの分析を行い、要求の整理とエンジニアへの伝達。さらに改革活動に参加し関係者の利害を調整する。
3.プロダクトマネージャー
特定のプロダクト・サービスの責任者としてチームの運営を担う。製品(サービス)を出すことも事業変革に含める。
資料には知識体系も挙げてあります。
ビシネスアーキテクト:BIZBOK、TOGAF
ビジネスアナリスト:BABOK、PMI Guide、ISO/IEC/IEEE29148
※元資料を見ると、PMの知識体系は「存在しない」となってます。PMBOKを挙げないのは見識だと思います。素晴らしい。
以上
