日経コンピュータ2024.08.22 | HATのブログ

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IT関係のニュースを中心に記事を掲載します。日経コンピュータで重要だと感じた記事とコメントを2010年9月1日号から書いています。
このブログは個人的なものです。ここで述べていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には一切の関係はありません。

特集は<いつの間にか生成AI 業務SaaS大手5社が組み込みへ>です。Salesforceの生成AIについても詳しく出てました。試してみたい方は、ここから無料で試せます。とは言え生成AIが使えるからそのSaaSを選ぶという事はまだなさそうです。

編集長セレクト】(P.06)
>グーグルのCloud Spannerがグラフやベクトル検索に対応 AIアプリを強化
ベクトル検索はLLM用の検索方式。最近のトレンドかも
>NEDOが60億円を投じて「偽情報対策システム」 開発担当は富士通
※新エネルギーの国立法人が何故?しかも富士通とは

IT業界にも人手部族倒産の懸念 ユーザ企業のDX停滞も】(P.08)
2024年上半期(1~6月)の人手不足倒産は182件。主に建設業と物流業でした。ただ、IT業界の人手不足は倒産という形ではなく「受注が出来ない」という形で現れやすいです。人手不足以外の理由を含む倒産はIT業界でも増えています。その真因は人手不足でしょう。

PM経験などがあるシニア層の採用には、定年引上げなど環境の整備、若手の採用にはキャリアパスの整備が重要です。

※社内に教育体制を持つ必要性が増していると感じています

いつの間にか生成AI 業務SaaS大手5社が組み込みへ】(P.10)
1.対話、開発、導入 標準機能で活用支援
大手SaaSベンダーが提供する生成AIの領域は大きく4つあります
(1)AIアシスタント     →自然文入力で回答
(2)標準機能として組み込み →問合せ内容を要約など
(3)新機能の開発支援    →外部LLMへのAPIなど
(4)開発の補助       →アドオン開発の簡素化など
2.顧客対応を円滑に 独自機能開発も支援
セールスフォースの生成AI機能>
・データをマスキングして外部LLMに渡す機能(TrustLayer)
・2024年8月から「DataCloud」でベクトルDB機能
・対話型で生成AIを使った作業(Einstein Copilot)
3.2種類のモデルを併用 業務の流れを最適化
サービスナウの生成AI機能>
・独自開発するLLMを利用可能
・外部LLMとの連携機能も提供
4.ERPで基幹系に浸透 アドオン開発も支援
SAPの生成AI機能>
・外部LLMの対話型AIアシスタント(Joule)
 →業務プロセスの8割で利用可能
 →製品自体の導入を支援
 →ABAPのコード自動生成も可能
・2024年4月ベクトルデータの機能を発表
Oracle FusionCloud ERPの生成AI機能>
・50以上のAI関連機能を組み込み済み
ワークデイの生成AI機能>
・自社開発の独自LLMで生成AI機能を実現
・顧客データで精度を上げる「ラストマイルチューニング」

※各サービスですごい勢いで機能追加しています。Salesforceで電話内容をテキスト化して要約してくれる機能や、お客様に出すメール本文を作成してくれる機能は既に実用的です。

特集インタビュー:米スケールドアジャイル ハリー・コーネマン氏】(P.34)
企業活動にアジャイル開発の考え方を取り入れる「SAFe(Safe,Scaled Agile  Framework)」の導入を支援する会社。2011年創業当初は大規模なチームでアジャイル開発を実施するための方法論だったのですが、事業の俊敏性を高めるフレームワークへと変わってきました。

独自動車部品大手の、ボッシュは2016年ごろから変革を開始し、アジャイル組織に再編しました。社内に優秀な「チェンジエージェント」が存在したことと、経営陣の支援が手厚かったため成功しました。

※このインタビューの前に「アジャイル組織」特集が載っていたのですが、システム開発の話としか読めませんでした。全社の組織論だったとしても、クロスファンクショナルチーム、アメーバ組織、ティール組織、ホラクシー組織などとの違いが理解出来ませんでしたのでスキップしました。

サードパーティークッキー廃止撤回 グーグルが方針転換、利用者の選択式に】(P.70)
米グーグルは2024年7月、「Chrome」でサードパーティクッキーを廃止する方針を撤回し、廃止するか否かをユーザが選択する方式に切り替えると公表しました。
デフォルトが「使わない」なのか「使う」なのかはまだ発表されていません。

※AppleのSafariがサードパーティクッキーを2017年に完全に廃止した時「広告主の収益が60%下がった」と言われていました。実質上広告会社であるGoogleは他の方法を模索していましたが、ついに諦めたようです。

デジタル庁が公開して「認証アプリ」 民業圧迫や個人データリスクに懸念】(P.72)
デジタル庁はAppStoreとGooglePlayに「デジタル認証アプリ」を公開しました。これによりAPIを呼び出すだけで自社のシステムにマイナンバーカードを使った本人認証を組み込めるようになりました。
懸念点は2点あります。
1.認証関連APIの無償提供による民業圧迫
 →公的個人認証サービス事業者が共存できるか
2.認証サービスの利用履歴をデジタル庁が把握できる

※どちらの懸念も気にせず広まって欲しいです。

乱反射:大手18社の2024年4~6月決算 AIの効果で売り和え高は9.5%増に】(P.77)
企業向けIT世界大手18社の2023年第2四半期決算の報告です。データセンター、ソフトウエア、サービス、クラウドの4分野合計について、売上は第1四半期は前年同期比7.0%増と「過去3年で最低の成長」だったのですが、今回は9.5%増と回復しました。AI関連の需要増が原因と分析されています。

<クラウド>  売上(M$) 伸び率(%)
マイクロソフト  36,800  21.5
AWS        26.281  18.7
グーグル     10,347  28.8
セールスフォース   9,133  10.7

※セールスフォースの伸び率は10年前は20%以上でしたがここ数年は10%そこそこで定着しました。

日経XTECH 2024年7~8月の好評記事】(P.80)
>Ankerの屋外カメラ「Eufy Solar Wall Light Cam S120」、配線も充電も不要
これ は欲しい!1万5千円です。
>東京都で約700人分の個人情報が流出、原因は富士通Japan作成の説明会資料
※なんだか頻繁に発生させてますね
>マイナカードで国家資格を証明、2025年度にも84資格が対応予定
※医師、看護師、介護福祉士など

ケーススタディー:menu】(P.82)
マイクロサービス基盤を追加 移行対象を絞り「Go」で書き換え
フードデリバリーのmenuは、元々テイクアウト事業だけを行っていましたが、2020年4月にデリバリー事業に参入しました。コロナ禍で需要が「10倍どころではない」ほどアクセス数が延びたため、2022年始めからプロジェクトスタート。2023年にはインフラの大部分を構築。2023年11月に新基盤上の新機能開発に着手しました。

新システムは従来システムから移行対象の機能を絞り込んで徐々に移行します。その基盤は、次の通りです。
    従来システム  新システム
 言語  PHP     Go
 DB  CloudSQL   TiDB

    (MySQLベース) (MySQL互換)
 環境  仮想マシン  コンテナ(kubernetes)
    (GoogleComputerEngine)


※機能を絞って徐々に移行する運用が秀逸だと感じました。TiDBはキーバリューストアを使ったMySQL互換の分散データベースです。詳しくは、ここ

キーワード:フィジカルインターネット】(P.93)
インターネットの考え方を適用した新しい物流モデルの事です。輸送の途中にハブを設け、貨物規格を統一し、物流事業者間で物流資産を共有して荷物のやりとりをします。

フィジカルインターネット実現には3つの要素が必要です。
1.コンテナ(輸送容器)
2.ハブ(共同の物流拠点)
3.プロトコル(ルール化・標準化)
2024年5月は複数企業がサービスの事業化に向けた検討をスタートしました。

社長の疑問に答える IT専門家の対話術 第273回】(P.106)
オープンソースに正しく向き合う 最新技術の開発者と共に成長へ
米メタは、2024年7月23日、大規模言語モデル(LLM)の最新版Llama3.1をオープンソースとして提供しました。学習モデルの規模が4050億パラメータに達するLlama3.1 405Bの性能はオープンAIの最新モデルGPT-4oに匹敵するそうです。

米メタのCEOザッカーバーグ氏はブログでオープンソースで公開する意義を説明しました。
1.なぜ開発者にとって良いのか?
 →独自モデルを訓練、ベンダーロックインされないなど
2.なぜMetaにとって良いのか?
 →クローズドエコシステム(Apple)にロックインされない
3.なぜ世界にとって良いのか
 →少数の企業に力が集中することを防ぎ、より繁栄で安全

他の企業もオープンソースのAIが増えています。
米エヌビディア:創薬企業と創薬向けLLMのnach0を公開
米セールスフォース:学習のためのデータセットMINT-1Tを公開

ザッカーバーグは上記ブログで「一緒に構築しよう」と呼びかけています。

※独自学習させるコストを考えると個人では手を出しにくいです。オープンAIのように無料で使えればメリットは受けやすいでしょう。

以上