『自然治癒はハチミツから』(鉱脈社発行)のもう一人の著者有馬ようこ氏がすすめていた“ハチミツを選ぶ基準”が気になり、うちのハチミツ(弟経営)と照らし合わせてみました。
■ハチミツを選ぶ基準
1ミツバチに餌として砂糖水やコーンシロップで作るブドウ糖果糖液糖といった甘味料を与えていないハチミツ。
ミツバチに餌をあげない専業養蜂家は日本にいないでしょう。むしろ、花のない季節に餌をあげないなんて可哀想と思ってしまいます。ただ、ブドウ糖果糖液糖を与えている養蜂仲間は知りませんし、噂も聞いたことがありません。
うちでは砂糖水を餌として、蜜源植物が枯渇する晩秋〜冬の越冬期に与えています。冬でも蜜源が豊富な土地が日本にあるとは思えません。夏の百花蜜を採らなければ、越冬用にできるかもしれませんが、養蜂家にとって夏蜜も大切な収入源です。
では、飼料用の砂糖水が、収穫するハチミツに混じるのかについて検証してみます。
南房総で過ごす越冬期は、全体の蜂数も少なく、まだ巣箱は1階建の一段(巣板8枚以内)です。餌の砂糖水は蜂数の少ない1段箱の時に与えます。
桜が咲く頃、蜂は急激に増えてきますから、1階建だった巣箱に、空の巣板を8枚入れた箱を乗せて二階建てにします。もう蜜に困りませんから、砂糖水は食べさせません。山形に戻り、花粉交配をさせるためにさくらんぼやりんご畑に入ります。
この時、下段の巣には使われていない砂糖のハチミツが残っているかもしれませんが、上段の空の巣には新しい蜜が溜まっていきます。
さくらんぼとりんごの畑で花粉交配を終えると、奥山に蜂を移動し、メインのトチの花が咲く直前に、さくらんぼやりんご畑で溜まった上段のハチミツを収穫します。するとまた上段の採蜜専門の巣は空になります。まもなくトチのハチミツが溜まり始めます。
まさに、昨日までこの仕事を手伝ってきました。明日からはいよいよトチのハチミツの収穫が始まります。
ですから、収穫するハチミツに砂糖水が混じることは、まずないのです。万一、極わずかに混じったとしても、普段大量に砂糖を摂取しているのに、そんな育成用の砂糖水に目くじらを立てるようなお客様には買っていただかなくていいなと思ってしまいます。
2 非加熱であること
糖度を上げるために水分を蒸発させる加熱、濾過するための過熱、あるいは酵母菌を殺す加熱はしていません。
ちなみに、酵母が生きているか死んでいるかは、簡単な実験でわかります。ペットボトルにほんの少しのハチミツと同量の水を混ぜて放置すると発酵してパンパンに膨らみます。
うちでは、瓶詰めするタンクに入れる前に、サーモを使って秋まではミツバチの体温と同じ35度。冬場は結晶を溶かさなければならないので45度に温めて瓶詰めしています。温めないと硬くて保存している一斗缶からなかなか出てきませんし、結晶しているハチミツは溶かさないと取り出すことは不可能です。 そしてなにより、硬くてゆっくり出てくるので、瓶詰めにとても時間がかかります。
非加熱で販売するとなると、収穫したハチミツを室温の高い夏の間にすべて瓶詰めしなければなりません。しかし、夏とはいえ、倉庫のハチミツは冷えていますから想像しただけで困難です。趣味の養蜂家が採蜜してすぐに瓶詰めするならともかく、専業者には難しいです。
ただ、崎谷氏は”40度以下で保管”としているので、うちのような秋までの”35度加熱での瓶詰め”なら問題ないと思います。結晶して45度加熱もわずか5度高いだけです。それほど質が低下するとは考えにくいです。
このような「非加熱」ではなく「非過熱」なら専業者も対応できるので現実的と言えます。
ただ、問題は趣味で養蜂をしている小規模のハチミツ屋さんです。安全なサーモ式の加熱装置がない養蜂家は、直接ガスの火にかけて加熱している方もいます。一斗缶の入る大きな寸胴鍋で湯煎される方もいますが、いずれ湯煎では40度にキープするのは困難です。
→ 加熱ハチミツの詳細はこちら
3 抗生剤を使用していないこと
一切使用していません。なにしろ、経営している弟のモットーは、ミツバチの免疫力を下げない養蜂で、ダニや病気に強いミツバチを育てることに努めています。これには私も大賛成ですし誇りでもあります。
4 花粉が入っているかどうかはっきりしているもの
花粉には環境に浮遊しているさまざまな物質が付着するので、大気汚染、環境汚染のある地域のものだと汚染物質も一緒に取り込んでしまう。
ハチミツには花粉が含まれていてあたりまえです。それが栄養源でもあります。花粉の入っていないハチミツなんて、機械精製でもしなければ無理でしょう。
ただ、養蜂場は日本最大の原生自然を誇る朝日連峰の山奥ですから、大気汚染物質が花粉に付着する確率は低いでしょう。
5 採蜜源の環境や土壌が汚染されていないこと
農薬が散布されている田畑の近く(3km以内)ではないか。放射能、PM2.5、硫黄酸化物、窒素酸化物を排出するような工場が近くにないか。汚染水の排出がある環境ではないか。
さくらんぼやりんごの花粉交配時に収穫したハチミツは、国の残留基準値内とはいえ、農薬が残留していることは否めません。化学物質過敏症の方は買わないほうがいいでしょう。
しかし、メインの「トチ」や「キハダ」や夏の「百花蜜」の収穫は、朝日連峰の原生林にも近い山奥です。一部、近くにわずかな人が住んでいる限界集落のような所もありますが、田んぼも畑も家庭用のとても小さいものです。トチやキハダの蜜を出す量はとても多いので、そのような畑になにかの花が咲いたとしてもミツバチは見向きもしないでしょう。「ニセアカシア」は外来種なので割と人里に多いですが、 やはり蜜をたくさん出すのでミツバチは集中しますから、他の蜜は入りにくいので安心です。
※ミツバチは、限定訪花性と蜜源のありかを教えあう尻振りダンスで、
その日もっとも蜜を出す木に集中して訪花する習性があるのです。
福島第一原発からも10ヶ所の蜂場は150〜200km離れています。
→ 農薬残留ハチミツについてはこちら
6 ハチミツの濾過のプロセスができるだけ自然であること
蜂の死骸やゴミなどが混じっているので取り除く。理想の濾過は、目の粗いザルを使って濾す→目の細かいザルで濾す→二重にしたチーズクロスで濾す。この方法は気が遠くなるほど時間がかかる。
採蜜時に遠心分離機に飛び込んできたミツバチが入ることは認めますが、ゴミが混じっている表記はいい表現ではないですね。混じっているのは蜜蓋を切った巣のかけら程度でしょう。乳児ボツリヌス症が起きてからは、特に面倒なほど衛生面には気をつけています。
採蜜の現場で、専用の二重の金網濾過器を通して一斗缶に詰めて持ち帰ります。この段階で目に見える巣のかけらなどの不純物は全て取り除けます。そして、瓶詰めするタンクに入れる時に、もう一度さらにとても細かいメッシュの金網を通します。もう不純物はほとんどないので、この濾過も全く時間はかかりません。専業養蜂家はみんなこのやり方です。
7 プラスチック容器に入っていないこと
石油から作られるプラスティック容器はBPAという物質が使用されている。この物質がハチミツに移行する。環境ホルモンを体内に取り込むことになる。
実家では、ガラス瓶のほかに、耐熱食品用のポリ容器にも入れて販売しています。発送時に割れる心配がないのと、ぎゅっと絞り出して使えるので人気なのです。環境ホルモンが移行するなら、ガラス瓶のものをお買い求めいただくのが良いでしょうね。
以上を踏まえて
私がオススメするハチミツを購入する時に気をつけたいことは
・直接養蜂家を訪ねて購入する
・瓶詰めに何度まで上げているか訊ねる
・サーモ式の加熱装置を使っているか訊ねる
その上で、
・果樹系のハチミツではなく山で採れたハチミツを選ぶ
トチ・キハダなど
・もしくは、ミツバチに他の蜜を集めさせないニセアカシア
・百花蜜を買う時は、蜂場近くに田畑がないことを訊ねる
・ガラス瓶に入ったものを選ぶ
心配なら
・発酵するか実験する
非加熱ハチミツが欲しいなら
・高く買うので、40度以上は加熱しないで瓶詰めして欲しいことを頼んでみる
・これからは、そういうハチミツが売れるようになることを伝える
・なるべく収穫したてで、気温が高く、結晶も始まっていない、夏の間に購入する
以上、参考まで。
ハチミツの大量摂取(大さじ8杯以上)を始めて一週間。まだ何も目立った体の変化はありませんが、ハチミツ収穫の重労働な毎日に、糖質が代謝されてエネルギーとなり筋肉がモリモリ動いていると思うと嬉しくなります。また、ご報告いたします。
追記(2020.8)
ハチミツの大量摂取(大さじ8杯以上)を続けた結果、残念ながらアレルギー性鼻炎(花粉症)が再発し中止しました。現在は1日大さじ1〜2杯にしています。
→ 『自然治癒はハチミツから』を読みました
→ マヌカハニーを勧めない理由『自然治癒はハチミツから』