「TOKYO VICE」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

米国人ジェイク(アンセル・エルゴート)は日本語のみの筆記試験という難関を突破して明調新聞社に就職する。新米記者の担当は警察回り、事件を警察関係者から聞き出して記事として採用されるか否か、同僚たちと切磋琢磨する日々から、ある反社会的勢力との関わりを持つようになる。全8話。

 

外国人記者から見たニッポンという閉鎖社会を捉えるテーマが良い。それが前半のガイジン差別で垣間見せる。そして警察広報の域を出ない新聞社デスクの指針が、ジェイクの憤る日々となって日本という島国に提言している。なるほど、かなり踏み込んだ社会派ドラマになると思いきや、後半はヤクザと犯罪という裏社会のノワールサスペンスという範疇におさまってしまい物足りなさを感じる。

 

ならば、関西から乗り込んでくる戸澤組組長をもっと複雑なキャラにすべきだし、ジェイクと微妙な距離感でつながる千原組組員の佐藤(笠松将)と白人ホステス・サマンサ(レイチェル・ケラー)の恋愛模様は不要にも思える。端的に言うと、SEXシーンが面白く描けていない。もっと人間の滑稽さを滲み出してこそ、日常に潜む暴力・犯罪の怖さが浮かび上がってくるのではないか。

 

不都合な事実に対する沈黙、抗うことの無力感、常に世間の目を気にするこの国特有のアイデンティティーはムラ社会・同調圧力という閉塞感に苛まれ、そこに果敢にメスを入れる調査報道の大切さを主軸に据えるべきであろう。

 

湿っぽい街としたTOKYOの情景が印象深い。常時アスファルトの道が濡れているのは照明効果の小技であろうが、警察署内の蛍光灯の配置や千原組事務所内のレイアウトなど美術陣の功績がうかがえる。そして笠松将の存在感は見所であり、彼の活躍はもっと見たくなる。4月から始まるシーズン2に期待します。

 

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