「明日への地図を探して」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

将来の進路で父親とギクシャクする青年マークは奔放な毎日を過ごす…実はこの毎日が同じ日、日付が変わると同じ朝を迎えてしまうタイムループから抜け出せない。友人のヘンリーに相談しても同じ日に戻ってしまうので初めから出直し、打開策は見当たらず半ば諦めモード、そこにマークと同様タイムループに囚われた女の子マーガレットに遭遇する。ふたりは次第に距離を縮めていくも彼女は夜に受信するメールになぜか毎回動揺する…2021年製作。AmazonPrimeにて配信中。

 

タイムループにロマンスコメディ要素を加味する青春モノとくりゃ、"小手先ネタ" や "脳天気オチ" に帰着する浅薄な内容かと思いきや、良い意味で裏切ってくれる。繰り返される時間に運命(必然)は存在するのか、別離(悲しみ)を永遠に遠ざける事は出来るのか、"現実を避ける or 受け入れる" 葛藤の中で人は成長する。そこに "生死" を核心に据える構成が巧い。"視点が変わる" 仕掛けも功を奏して物語が加速する。まさに脚本の妙である。

 

ただ選曲や時折見せる長回しショットのあざとさに賛否というか、好き嫌いに別れてしまう今作の演出を受け入れられるか否か。私は賛であり好きであり受け入れる。なぜか。ルーティンは決して不変ではなく無常であり、繰り返し(タイムループ)という修正は決して改善ではない、過去という時間の積み重ねで現実という自我は存在することにマークとマーガレットは気づく。ふたりの心に命(生死)の尊厳が築かれていく。かなりポップな進行でありながらも、この正統派テーマで訴えてくるのだ。これが受け入れる理由、さらに主演ふたりの演技力がこのポップさとチャラさの紙一重を補っている。

 

すぐに邪推してしまう私の悪癖で、様々な場面でどこからCGなのかと勘ぐってしまう。しかしここにもテーマは潜んでいる。出来事は偶然か必然か、言葉によって区別しようとする思考は人しか認識しない、できない。人の手(映像技法)によって加えられた出来事はその区別が曖昧になる。昨今のAI技術もまさにそれ。大切なのは "その対象" を見定める私たち、真偽も重要だが、そこに他者への優しさが伴っているか、かたちあるもの見えるものではない "不確かなもの" への追求に真実が存在する。このようにかなり奥深い解釈ができるのも練り込まれたプロットの功績だと感じ入る。

 

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