「母の残像」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

有名な戦場カメラマンである母親が突然の交通事故によって命を落とす。残された父親と二人の息子はそれぞれの喪失感を抱え込んでしまい関係がぎくしゃくする。悲劇に見舞われた家族のあり方を時間軸を交錯させながら描いていく。「私は最悪。」で注目されているヨアキム・トリアー監督の2015年製作作品。AmazonPrimeにて配信中。

 

紛争は国家や民族、宗教の違いで起きる惨状である。家族という最小の共同体における感情の衝突もまた紛争であり、互いの信頼を失ってしまう不自由が生活の破綻へと向かっていく。そこから逃避するか、修復へと挑むのか、勇気と慎みの交錯で真意がつかめぬもどかしさに心の弱さ、愛おしさを感じ取る。

 

物語構成として、語り部が家族それぞれに移りゆく。群像として事実を様々な視点で描く脚本の妙が冴えている。サントラのセンスも良く、寂寥な空気が漂う情景が各人の心情へと刺さりこんでいく。時に倫理に背く家族の人びとは、決して相手を傷つけたいと思っていない。ここにも心の弱さが見えてくる。その弱さは "罪" なのか、誰がそれを裁くのか、そうではなく "許す" 姿勢こそ大切なのだと問いかけてくる。

 

ヨアキム・トリアー監督いいね。最新作は「私は最悪。」でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞した主演のレナーテ・レインスヴェと再タッグを組む「Sentimental Value(原題)」(意味:思い出の品)なんだよね。予告映像はまだ公表されていないけど、日本公開するかな、するよね。ノーラン監督の新作もやっとこさ日本公開発表されたし、決まるまでヒヤヒヤもんだよね。

 

-----------------


ここまで読んで下さってありがとうございます。ブログランキングに参加しています。

もしよろしければ、↓下をクリックしてください。よろしくお願いします。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村