「ザ・プレイリスト」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

現在の音楽ストリーミングサービスに変革をもたらしたSpotifyの創業者や協力者の足跡は、ありがちな成功談の域を超えて新興企業の功罪を辛辣に描いていく。全6話。Netflixにて配信中。

 

上記のポスターにあるように、各話中心人物が移り変わり語り部として物語が進行する。途中、対峙する場面が重なっていき時間軸が繰り返されるクロサワの「羅生門」と同じ仕掛けである。古典的フォーマットだが躍動感を見せてこの先どうなるのか、やきもきしてしまう。それが最終話、想定外の時間軸を用意している。(ネタバレしません)これは、やったモン勝ちであろう。

 

実話モノとして描かれる内容は決して事実ではない、作り手の主観が必ず介入し客観性の不在に留意しなければならない。これはドキュメンタリー作品においても同様で、編集によって作り手の主観は必然的に内在する。作り手の指示があれば、それはヤラセなので問題外、これは映画「裸のムラ」で言及しているが、今作「ザ・プレイリスト」は虚実の境界を客観性の不在として訴えかけることで成立している。それが各登場人物の証言で構成された仕組みである。

 

ひとりの人物は様々な人の見方によって異なる印象を抱かれるのは当然である。誰が本当で誰が嘘を言っているのかではなく、人は善悪や優しさ厳しさの二元論で成り立っていないのだ。起業家でいえばスティーブ・ジョブズは "革命児" "独裁者" 様々な賛否を呼ぶが、ひとりの人物である。このドラマの核は人物伝で喝采するのではなく、音楽ストリーミングサービスの隠と陽を未解決の問題として提示する。私たちは便利と安価(もしくは無料)という恩恵の陰で犠牲となっている弱者の存在が可視化されないことを看過している。そして庶民側であった起業者が、権力者と成り上がり保守へと転じてしまう切なさが謳われる。

 

果たしてこの音楽産業はどこへ向かうのか。文化を育む分野にも格差が露呈している現状を見据えて私たちも考えなければならない。様々なサービスは心地よさを認識するが、その陰で囁かれる不快な現実はいずれ自身に影響する。虫の良い話には疑ってかかれ。そんな私はマイナカードを作らない。マイナちゃんには罪はないけどね。そう言えば、来年の干支は卯年だからマイナちゃん飛躍するのか?みなさん良いお年をお迎えくださいピョン。

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