「クライ・マッチョ」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

名優クリント・イーストウッドの監督50周年記念で監督第40作。現在91歳のクリント翁は今作では主演までやってのける。ファンのひとりとして、いつ遺作になってもおかしくない功績を見守るように劇場に足を運ぶ。

 

ラブロマンスあり、少年との絆あり、そしてピアノの旋律までも往年のイーストウッド監督作を彷彿させて楽しませてくれます。これはクリント座長率いるイーストウッド一座の巡業公演を観劇しているようで、座長を見守る脇役陣の温和な眼差しが悪役からも感じ取れる。だって対決シーンで悪役は散々恫喝するけど90歳過ぎのお爺ちゃんのパンチ来るの待ってるし、老体から放った拳でそないに吹っ飛ぶ訳ねぇだろ、とツッコミ入れ…それは野暮、心の中で(andコロナ感染防止で)ヨッ待ってました!と合いの手を入れる。

 

ただファンサービスありきの脚本の出来はあまりよろしくなく、クライマックスにおける主人公マイクと少年ラフォとの間で生じる確執が、突如現れたパトロール警官によってうやむやにされてしまい、んんん?そこ大事なのにあっさりスルーされてしまう。暗い過去を引きずった老人と一縷の希望を新天地に託す少年の絆が単なるメキシコ縦断ガイドに落ち着いてしまうのはどうもしこりが残る。

 

とはいえ、ここぞイーストウッド一座の見せどころ。撮影・美術・衣装・編集の技巧で上手い具合に仕上がってる。特筆すべきはやはり編集の妙。担当のジョエル・コックスは長年一座を支えた功労者。過去作「許されざる者」劇中で娼婦たちが論争するシーンが印象深く、撮影しかり編集巧いなぁと思ってたらオスカー受賞したので納得した記憶がある。ここまでくると、クリント座長を支えるスタッフからの信頼も伝わってホンワカする。

 

日本に限らず映画監督が製作資金に窮乏する記事を見聞きする。稀有な存在、クリント座長を持ち上げる訳ではないが、彼の人間性も含めた映画製作環境が微笑ましい。比較すべきではないだろうが、とどのつまり人徳ではなかろうか。東京五輪にまつわる映像制作やドラマ版新聞記者の制作過程において、関係者や世間に不誠実な態度を取る人々からクリントのような "徳" は感じ取れない。ゆえに不徳な輩がつくる映像はどこを切っても胡乱な仕上がりであり嘆かわしい。

 

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