2011年製作のノルウェー・ドイツのサスペンス作品。企業に優秀な人材をスカウトする職業・ヘッドハンターの主人公ロジャーは絵画泥棒という裏の顔を持つ。彼が巻き込まれた危機は予想しない顛末へと陥っていく。現在、AmazonPrimeで視聴可能。
社会的テーマとは無縁の娯楽犯罪サスペンス。終始これでもかと主人公がピンチに苛まれトンチで切り抜けるピカレスク活劇の醍醐味。張り巡らせた伏線がしかと回収される終盤は爽快感へと誘う。音楽が少々ダサいけど、ラスト小躍りしたくなる演出で見事帳消し。残酷さを前面に出さない "痛い" 描写、想定をほんの少し超える "難局" が矢継ぎ早にのしかかる構成、作り手のセンスが伝わってくる。
持論である "傑作に必須のユーモア" が随所にちりばめている点を評価。"エロ"(相棒の全裸サバイバルゲーム)"虚栄心"(刑事の事件の手柄独り占め)"断髪"(頭血だらけ)どれも俗物根性の滑稽さが滲み出ている。実は誠実な人物は一人もいないし、カッコよくキメるラストも胡乱に満ちた野郎に転換される。小悪党の分際で…!と観客がツッコミ入れるのが正解であろう。
終始場面転換するのだが、観客側は混乱することなく、すぐさま現在どこにいるかどこに向かうのか了解する。これは登場人物の行動があらかじめ明確に示しているからである。これは技巧として卓越しており、導入部の主人公の犯罪ポリシーも物語の進行上欠かせない要素となる。
ノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム監督はこの作品が当たって「イミテーション・ゲーム」「パッセンジャー」とハリウッドに進出。AppleTV+オリジナルドラマ「ジェイコブを守るため」全8話の監督担当と知って、観たいドラマがひとつ増えたので秋の夜長に楽しみます。って、もう11月もうすぐ立冬。早い早い、しんかんせんははやい。
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