「神の一手」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

物語を構成する要素として、観客を唸らせる "仕掛け" と観客がドン引きしない "脚色" が必須であると常々考える。とことんリアリティーを求めてもどこかに作り手の熱意が介入する、この時点で "脚色" は派生する、いわば "話を盛る" のだが "そんなのありえないよ" と呆れるか、"こりゃ面白そう" と身を乗り出すか、このさじ加減は作り手側で "これ" だと提示しても、結果は "それ" を咀嚼する観客側に委ねられる。これにハマるか否かでこの作品は異なる評価となる。

 

ベタなんだけどツボを押さえた復讐劇。冒頭、主人公・プロ囲碁棋士テソクが兄に誘われた賭け囲碁勝負の罠にはまりどん底に突き落とされる。修練を積んだテソクは兄の仇を取るために這い上がっていく。囲碁の世界に生死を賭ける破天荒なキャラが勢ぞろいする2014年製作の韓国映画。主演のチョン・ウソンの男前っぷりが功を奏して "バカバカしい" 一歩手前をキープしながら "ハードな描写" で荒唐無稽な囲碁ワールドが展開していく。

 

仇敵の懐に入るためにテソクは囲碁対決に挑む。その趣向を凝らした対局ネタが面白い。あまりネタバレしたくないが、最初の復讐対局で "デコピン10発" を賭けるくだりでこの物語はハネる。ここで "仕掛け" と "脚色" が突出する。だが呆れる事なく主人公テソクに共感できるのは、勝負師としての意地が糧となって突き進むテソクの背中に哀しさを感じ取れるからであろう。体裁や保身は無用の無頼漢が宿命を背負う姿に共感する。

 

欲言うならば、アクションネタが正直乏しい。トレーラー荷台の中での格闘やクライマックスのナイフ対決もしかり、もっと小道具を使ったネタを披露してほしい。面白い設定に "ひと捻り" がないのだ。その点ジャッキー映画にはネタが惜しみなく披露される。その違いが歴然。しかしユーモア担当のイカサマ棋士コンスがいい味出してる。ウザいなぁと思わせるも人間味あるキャラとして湿っぽくなりがちな仇討ちに高揚感を加味させている。これはジャッキー映画にも欠かせない重要な要素であろう。

 

なにせ畳み掛けるように展開する痛快娯楽作。社会的テーマは皆無だが、それがなにか?とせせら笑う作り手の自信がうかがえる。随所に見せるサービス精神、映画の楽しさをこれでもかと表現する愛情に拍手喝采、"囲碁なんてわからないよ" と野暮なこと言うなかれ。

「頭で考えるな心で感じろ」(燃えよドラゴンより引用)

ブルース・リーの言葉も良いように解釈したら奥深いなぁと感心するも、斜に構えてみると "こいつ逃げやがったな" と苦虫を噛む。こいつってリーじゃないよ、私のこと。さいなら。

 

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