「オフィシャル・シークレット」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

2003年、イラクが大量破壊兵器を保持していると糾弾するアメリカがイギリス等他国との結託によってイラク戦争が始まる。その予兆がメディア報道となって国民に不安を抱かせる情勢下で主人公キャサリンは英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)に勤務する。彼女はあるメールから米国がイラク攻撃を正当化する裏工作を英国に促す策略を知る。政権に憤りを感じたキャサリンはそのメール内容をリークする。果たして彼女は反逆者か、それとも愛国者なのか。

 

公務員は政府のためでなく主権者である国民のために働いている。森友学園に関する公文書改ざん問題で自死に至った赤木俊夫さん同様の言葉を言い放つキャサリン。彼女は敢行した内部告発に自問自答する。自身の生活は誰が保証するのか、移民問題にも触れられる民族意識による分断もまた権力の横暴へと導かれていく。信条を貫くことで平和は訪れるのか、平和・自由とは終着の理想郷ではなく信念の継続性であると今作は提示する。

 

日本における公文書のぞんざいな扱いやごはん論法のような論点のすり替えで国民を愚弄する政府に憤慨するが、英国でも不都合な真実を隠ぺいしようとした姑息な陰謀が露呈する。異なるのはこういった権力側の恥部をさらけ出せる映画産業・文化が根付いている社会である。日本では大手報道機関が腐敗しているので権力の監視どころか権力への忖度ばかりが横行する。ならば私たち有権者は声を上げ続ける。政治は彼方の出来事ではなく日常生活に密接な影響をはらむ仕組みである。私には関係ないとタカをくくっていると "時すでに遅し" になってしまう。

 

近年の実話モノの作品ではメーキャップの進歩もあり実在の人物に寄せた風貌で演技しているが、今作の主人公キャサリン・ガン本人と演者キーラ・ナイトレイを見比べるとかなりかけ離れている。というか、全く寄せてない。キーラ・ナイトレイそのままで登場する。それがいけない訳ではないが、GCHQ建物内の作りが甘い撮影セット等から推測するともしや製作資金が乏しかったのか、メーキャップにお金かけられないから、ええい、何も手を加えずそのままで演じちゃえと開き直ったと訝しむ。

 

途中、キャサリンが空港へ自家用車で急行する場面でのサスペンス描写も妙に浮いてる。今作は内部告発→逮捕→起訴といった起伏が少ない地味な構成、派手な銃撃戦や逃走劇も無縁なので無理やり脚色した感が拭えない。"キャサリンの苦悩を描くのもいいけどもうちょっと娯楽要素入れてよ" とプロデューサーから注文されたのか、ギャヴィン・フッド監督の "何を隠そうエンタメ好き" 嗜好なのか、そこんとこ問い詰めたくなる。関係者の方々、裏事情教えてくれないかな。人の不幸ではないけど "秘密" は蜜の味。裏話・裏社会・裏ビデオ "裏" というものに興味を抱く俗物根性ここに極まれり。

 

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