「闇の列車、光の旅」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

原題 "SIN NOMBRE"(スペイン語)の意味は "名もなき人"。移民問題は国家間・格差社会と密接に繋がっており、基本的人権の行方を問われている。

 

夢見る希望を抱いて隣国へ密入国を試みる人々。絶望の局面から逃亡へと余儀無くされる若者。そして忠誠によって命を疎かにする愚かさ。彼らは何を拠りどころにして生き抜くのか、登場人物の一人ひとりの心情がヒシと伝わってくる演出が見事。彼らを法規的・道徳的観点から判断する結末ではない。この病んだ社会をどう捉えるか、看過しても蔓延した病は治癒されない。社会を変えるのは私たちなのだ。

 

ポスターにも映し出される列車の上に乗って無賃移動する人々。撮影ももちろんCGではなくリアルに乗っているであろうから大変な工程に違いない。オールロケで撮影されたホンジュラスやメキシコの町並みは殺伐とした空気をよどませている。そんな社会の中、見えざる抑圧が暴力へと転じていく人間の弱さ、後戻りできない若者の鬱屈した心情が伝わってくる。

 

フクナガ監督は長回しショットを挿入する。今作もギャングのアジトとなる集団生活の猥雑さを捉えている。この "長回し" の特色を活かした緊張感がみなぎっている。

 

この作品が長編映画デビューとなるキャリー・フクナガ監督。

上写真の左にいる長身のイケメン。父親が日系アメリカ人三世のフクナガ監督は影響を受けた日本人監督として今村昌平の名前を挙げている。今村昌平は私も大好きな監督なので妙な親近感を抱くけれども、

やっぱカッコよすぎなので、グンと遥か彼方の存在になってしまう。期待する「007」の新作も遠い距離からなかなか縮まらない。公開日まであと何日だろうか。指折り数えるのもやめたよ。コロナのバカ。

 

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