「パラサイト 半地下の家族」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

半地下家族とセレブ家族、貧富・格差社会を痛烈に批判する物語は前半の半地下家族がセレブ豪邸へと寄生していく展開が痛快で面白い。セレブ嫁の浮かれっぷりが絶妙で物語に引き込まれていく。ただ元家政婦が舞い戻って来るくだり以降どうも合点いかぬ。一番まずいのは半地下家族の母親がセレブ豪邸で地下室から這い上がって来る元家政婦を蹴り飛ばした場面、これはブラックユーモアであるが元家政婦は重傷を負う。笑えない。劇場では笑っているお客さんはいたのでこれはそれでいいんだとやり過ごすも元家政婦は絶命する。私は途端に冷めてしまう。これでもまだこの物語に乗れるか否か、賛否分かれるところであろう。

 

話を戻すと、元家政婦の逆襲、ここから半地下家族に少しずつ綻びが出て崩壊へと向かうべきなのに、豪雨→帰宅→浸水→脱出→避難所→誕生日会→凶行という展開なので後半の首謀者 "元家政婦の夫" が暴走するベクトルが印象強く、主題となる "ヒエラルキーの批判" や "人間の愚かさ" が薄まっている。セレブ家族が雨天によってキャンプを切り上げて帰宅すると、半地下家族が慌ててリビングのテーブル下に身を隠す場面ももう一捻りピンチが欲しい。セレブ坊やが半地下家族を翻弄しきれてない。

 

釈然としないのが半地下家族の息子の挿話。彼は策士、それは冒頭のピザ店の内職ミスに対する言い訳やセレブ娘の家庭教師初日の心理テクニックからうかがえる。そんな息子はセレブ娘の日記を盗み読みしてるけどその伏線が活かしきれていない、突然のセレブ家族の帰宅で日記を元の場所に戻す危機一髪が関の山、セレブ娘とのキスもそれ以上の発展は無い、息子にはその火遊びは思惑があったはず、策に溺れるしっぺ返しを期待するも想定外による重傷を負って活躍の場を失ってしまう。もっと息子メインで転がっていかないとラストの父親への手紙に感銘できない。

 

冒頭のピザ店の内職。ピザ店から指摘される4分の1の確率は4人家族なので全て父親のミス、そんな不甲斐ない父親であるが周りは非難しない温かい家族である。しかし終盤、自尊心を傷つけられた父親はセレブ旦那を刺して逃亡する。ちょっと待て。瀕死の重傷の我が娘を助けないのか?この理解できぬ行動は、おそらくパニックに陥った父親が帰巣本能で地下に潜ったのだという解釈へ至るが、結束固い家族を見捨てて世間との隔絶を選択した父親は何故息子にコンタクトを取ろうとしているのか?家族との再生を望むならばいくらでもそこから抜け出す隙はあるはず。あまりに身勝手な世帯主の奇行がイマイチ理解できない。

 

本当に物語設定良かったのに…

 

集中豪雨のシーン、便器から逆流する汚物を尻目にスマホ見る半地下家族の娘の姿は名場面だし、浸水する家から脱出して避難所にたどり着くくだり、人間の知恵は所詮自然の力には遠く及ばない暗喩である故に父親の「計画なんてするもんじゃない…」が名台詞として活きてくる。

 

ポン・ジュノ監督の良い面と悪い面が如実に現れた作品だが、数々の賞を獲って日本でもヒットしているのは喜ばしい事、韓国映画に縁がない人は入門として楽しめる作品です。韓国映画界は日本と比べると実力の差ははっきりしている。どちらの国もピンキリの作品群だが、魅力ある作品は海の向こうの方がはるかに多い。過去の事言ってないよ、クロサワとかオヅ、ミゾグチの名を挙げないでね。

 

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