「アリー/スター誕生」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

ブラッドリー・クーパーの映画愛が随所にみなぎる初監督作品。ここぞとみせる長回しやカットバックは一流スタッフの手腕も遺憾なく発揮されていて見事。主人公アリーとジャックの存在感もハンパないが、サム・エリオット演じるボビー(ジャックのマネジャー)が実においしい役どころで彼の初登場場面の長回しや終盤、療養所から自宅へジャックを送迎した帰り車をバックさせる際の熱い目頭にグッとくる。彼が出ているシーンにギュッと映画手法が詰まっている。

 

この物語は王道。なにせ4度目のリメイク。名もなき人物が世に出て成功しその代償に何かを失う。この骨組みはある程度出来上がっている、その起承転結の中で如何に心に響かせることができるか、ましてや今回は音楽が主体なのでクライマックスの楽曲はかなり重要である。確かに音楽は良い。しかしカタルシスが乏しい。それは何故か。主人公アリーの心情がイマイチ理解できなかったのだ。

 

マネジャーにスカウトされて晴れて芸能界デビューするアリー。ダンサーを従えてのステージ練習に違和感を覚えるアリー。初ステージは直前に独断でダンサーを引っ込めて一人でパフォーマンスするアリー。ここまでは理解出来る。しかし。クライマックスになると抵抗なく髪の毛染めてるわ、ダンサーもウェルカムしてるわ、ヘンテコな衣装着てるわ、おいおい、思いっきり芸能界のしきたりに割り切って仕事しとるやんけ。そこでピアノソロで熱唱されても、こちとらグングン熱冷めていくのでカタルシスなどお呼びでない。

 

そしてジャック。あんたの気持ちはよく分かるよ。一目惚れしたアリーの輝きは名声の代償として次第に失われていくよね。それを互いに腹割ってトコトン話できない、あんたの心の弱さからアルコールに手を出してしまうよね。でもね。ジャック。アリーのマネジャーからイヤキチ言われたくらいで自害するんじゃないって。そこまで己を追い詰めるなよ。アル中から立ち直って見せたじゃん。家庭を持つことに目標掲げて精進してたじゃん。世間のバッシングも経てメンタルそんなに弱くねぇ筈じゃん。と承服できない事態にああこれも人生なのか、そんな観客側の葛藤の中、最後の楽曲、ジャックの遺作が披露される。そこであろうことかジャックとアリー二人が輝いていた過去のステージ場面がフラッシュバックする。うむ思い出に浸るのはいい。でもねアリー。ジャックのアリーに対する憂いに気づいているのかい。このままショービジネスに身を挺していくのかい。そうか、この物語は夢をビジネスを通して叶えていく、その代償は全て飲み込んでいく逞しさを描いているのだ。

 

すまぬクーパー。私ゃあんたが好きだ。Not男色家。「ハングオーバー!」以降あんたの活躍はずっと見守っているし、今回の初監督作にも注目していたよ。メイキング情報でのボイストレーニングの逸話も感嘆したよ。でもね。このアリーとジャックの行動には疑問、脚本を練り直して欲しかった。あんた映画に対して真面目だよ、それは先述したボビーの出演シーンで十二分に伝わってくる。だから次回作機会あれば監督してください、必ず拝見させていただきます。

 

楽器を何一つ奏でることができない私はクーパーに憧れてギター練習しようかなあ、なんて身の丈合わぬことを口走ると家族からいくら練習しても吉本新喜劇松浦真也にも及ばないよ、とたしなめられる。ちゃんちゃん。

 

 

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