「トレイン・ミッション」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

これは上質のサスペンス。原題 "The Commuter"(通勤者)だとあまりに地味な印象だが、冒頭の主人公が10年間日課として通勤する様子を四季をめぐって編集される映像がたまらなくカッコよく無駄なナレーションなくその意味が伝わってくる演出に引き込まれていく。ジャウム・コレット=セラ監督の前作「ロスト・バケーション」に続くシチュエーションスリラーとして今回は通勤列車の中で主人公マイケルに次から次へとピンチが訪れる。しかもその一つひとつが半端ない。私ならば出発駅のホームでケータイ無くした時点でかなり凹む。マイケルみたいに気を取り直して座席について読書するなんてありえない。こりゃかなり小心者なのだと自戒する。

 

滑走する列車という密室で不条理に襲いかかるミッションをクリアしないと家族の命が危ないという設定。マイケル役のリーアム・ニーソン、近年はアクションスリラーの顔といってもいい、さもしい中年男のさみしい背中に思わず応援したくなる、頑張れリーアム!またも家族に危険が及んでいるぞ!と手に汗握るのだ。そんなリーアムとジャウム監督はこの作品で4度目のタッグ。互いに仲がいいのか、こりゃ売れると製作会社からの要望なのか、個人的には過去作よりもこの作品が一番完成度が高いと感じる。それは伏線や頓智、そしてツッコミ処の満載の脚本の職人技であろう、ピンチと謎解きを通して物語が進行していくので主人公の行動に注視してしまう映像は密室という列車の中だけでなく外側までも縦横無尽に移動していく緊迫感から娯楽を熟知していると感嘆する。

 

またキャスティングの妙を挙げると、主人公と顔見知りである乗客演じるジョナサン・バンクスが真っ先に疑わしい人物と思わせるのはTVドラマ「ブレイキング・バッド」で黒幕の右腕役だった印象が拭えないことが起因となり、それがあっさりと舞台から降りる意外性はしてやられたり、なのだ。また謎の女ジョアンナ役のヴェラ・ファーミガと主人公マイケルの元部下パトリック・ウィルソンはお互いに「死霊館」シリーズに夫婦役で出てるから悪い奴ちゃうで、という固定観念を植え付けることでまんまと引っかかってしまうのは私があまりに浅はかなのか、そうなのだ。

 

それにしても序盤からの謎解きで乗客全員が怪しく見えてくる。ちょっと待て。乗客一人ひとりをガン見するわ、しだいに顔の傷や服装の綻びが増えてくるあんた!リーアムが一番怪しいんだよ!なんて "絶叫上映" がとても似合いますね。と旬なワードをお届けします。

 

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ジャウム・コレット=セラ監督の前作もシチュエーションスリラーであり、海という広大な舞台から逃れることが出来ない主人公を描いている。私が主人公ならばパニックに陥ってあっさりとサメの餌食という面白みに欠けるオチとなる。

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そや、謎の女ジョアンナ役のヴェラ・ファーミガはここでガッツリ活躍してるやん。この作品はやったもん勝ちのオチがあまりに恐ろしいスリラー、ジャウム・コレット=セラ監督の出世作。必見。

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