「アトミック・ブロンド」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

スパイ映画として王道の「007」シリーズはそこはかとなくユーモアとお色気と小道具に彩られた果てない娯楽作として楽しませてくれる。「アトミック・ブロンド」は同じスパイ映画であるも異なる趣向へのアプローチを見事に成立させているのは主演シャーリーズ・セロンの魅力が多大なる貢献を成しており後に本人の格闘トレーニングをネットで知りどこまでがスタントなのかと惑わせるアクションを要所で魅せてくれる。

 

この物語の構造は巧みに仕組まれており主人公の素性はイギリス秘密情報部MI6(007と同じ組織)から雇われたスパイ、ロレーン・ブロートンという肩書き以外全く明かさない。用意周到なのか、行き当たりばったりなのか、ブレる事なくミッションをこなしていく行動から何を考えているのか分からない彼女の周りで対抗や裏切りがとめどなく繰り広げられる。しかもベルリンの壁崩壊という歴史の影で…んんん、この物語の構造って似たようなコミックがあるよね、そう大衆理容や純喫茶に常備されている名作「ゴルゴ13」

 

その主人公デューク東郷も無頼にミッションをこなすスナイパーであり運命の岐路に立つ世界情勢の裏で暗躍する物語の構造で面白いのは、主人公が窮地に陥るハラハラ感に加えて周りの登場人物の喧騒と冷酷な主人公と対比した温度差の中に美学が生まれるところにある。「アトミック・ブロンド」は東側のデモ騒動という喧騒の中、誰が裏切り者なのか分からない状況で格闘が寡黙に展開する。コミックでは違和感のない独り言やテーマそのものを声高に叫ぶという表現も映画になると "説明的台詞" となってしまう安易な表現を拒絶するかのごとく女スパイは多くを語らない、その代わりMI6の尋問という場で彼女は語っていく、この "時間軸" と "キャラクターの距離感" を表現した構成が上手い。 "前者" は彼女の痛々しい傷から一体ここに至るまでに何が起きたのかというサスペンス要素であり、"後者" は言わずもがな彼女の素性が最後に分かるといったオチへの前振りとなっている。

 

この作品の監督、デヴィッド・リーチはスタントマンも経験している。なるほどカーチェイスは「ザ・レイド2」、亡命者スパイグラスを死守すべく東側組織との格闘を長回しで描く階段の場面は「イップ・マン 継承」といった具合にアジアのアクション作品からの影響を垣間見る。パクリと言った下品な言葉ではなく、リスペクトという形でその本質を昇華させたアクションとして楽しませる。欲言うならば、ジェームズ・マカヴォイのパーシヴァルというキャラはナイスなのだが、ソフィア・ブテラ演じるフランスの女スパイの人物造形がもっと深ければ冷酷なる女スパイ、ロレーンの動揺が働いて想定外の精神的窮地に立たされる面白さが加味されたのではなかろうか。フランスの女スパイが浅はかな行動をとって主人公の足を引っ張ってしまう " 物語をかき回す道化 " として描くのも一興かと感じる。

 

来る2018年は戦うヒロインが次々に現れる。「トゥームレイダー ファースト・ミッション」「Alita : Battle Angel」しかしながら威風堂々胸元パックリのドレスを着こなす絶世の美女シャーリーズ・セロンに分がある。やはり運動しなければあの体型は維持できないよね、頭上がりませんと感服する私は最近左腕がまともに上がらない、これがもしや四十肩なのかストレッチ体操から始めよう老化防止。とうとうこんなワードが出てしまう、終活への序章。

 

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