「 IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

非日常を描く娯楽芸術で大衆が求めるのはアクション、サスペンスであり、さらにはホラーという恐怖も私が好きなのはサスペンスの延長線上にある登場人物の心理描写に共感していくことでスリルを体感したいからなのだ。しかるにホラーというジャンルにもさらなる分類として、日常からしだいに非日常へズレていくことに恐怖するホラー(オーメン等)、恐怖のメタファーとして異形の存在が襲いかかってくるホラー(13日の金曜日等)、狂人の行動へと非条理に巻き込まれていくホラー(悪魔のいけにえ等)と他にも様々なカテゴリーに枝分かれまた融合していく。私はそれぞれ好きなのだが、それがウケてしまいシリーズ化されていくとメタファーの存在が優先になってしまい標的にされる人物の描写がなおざりに陥ってしまう。"ホラー被害者を思う会" 会員として申し上げます。恐怖の対象に対して怖がる描写がおろそかになると、より過激な行動に出ないとこちらは満足しない。経験浅い若者ならいざ知らず、数々の名作ホラー作品を観ている私達は既視感の域から突き抜けることなく凡打に終わるのだ。漫才でいう "ボケ" と "ツッコミ" 、恐怖に対する "リアクション" 、同じネタでも面白い漫才とホラーはそれが卓越しているんです。今回の「IT/イット"それ"が見えたら、終わり。」は 恐怖という描写をおろそかにはしていないが、悪い意味で教科書的な演出に終始している。物足りない、"もう一歩" が欲しいのだ。

 

"それ" があるにはある。(ここでいう "それ" は "卓越したリアクション" )しかし "それ" は冒頭のビルの弟が辿り着く排水溝での場面であったり、ビル達のグループがガレージ内で見るスライドショーの場面がそうである…考えると、二つとも予告編で使われていた場面じゃないか、いわゆる予告編で "エエとこ取り" してしもうた作品、"予告編越え出来なかった作品" やんけ、とツッコミたくなる。

 

欲言うならば、終盤に向けてビル達のグループだけでしか行動できない状況、ピエロに扮したペニーワイズの存在に "大人はわかってくれない" 四面楚歌な窮地を描いていけば、あの廃墟へと乗り込んでく勇気に喝采できたであろうし、終盤のペニーワイズの対決も結局腕力勝負というお粗末な展開ではなく、彼らの "心の弱さ=恐怖" を克服する、そういった頓知やガジェットを使う事でより説得力のある場面になったであろう。ちなみにペニーワイズの断末魔のカットはフランク・ザッパの名アルバム "HOT RATS" のジャケットのオマージュであろう、そっくりの構図であることにニンマリする。

 

ともあれ、後編があるということなので大人になった彼らの勇姿を見たい、その前に原作も読みたい、エラそうな事言いながらも実は読んでない、と足早と劇場を出て同じモール内にある本屋さんへ駆け込んでも "それ" がない。(ここの "それ" はまさしく原作本の " IT " )こんだけヒットしてるのにコラボしろよ!と心の中で叫ぶホラー好きな小心者。

 

遊泳の場面で見せるビル達の "陥没乳首" に乾杯。

 

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