「ドリーム / Hidden Figures」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

たった50数年前の冷戦時代。経済大国は熾烈な宇宙船開発を社会主義大国と競い合っていた。この物語は舞台となるNASAを背景に人種・性別の差別を日常の中に織り交ぜている。この作品とシンクロするように某公共放送で実在する主人公達のドキュメンタリーが放送された。その中で彼女達の職業が宇宙飛行に関する様々な資料を計算する部署であった事、当時は電子計算機としてのコンピューターはなく "計算する人" としてコンピューターが存在していたのだ。なるほど、英語表記でいくと "conputer" の "er" は "play-er" "driv-er" 等と同格 "〜する人" だったのね、そういえば傑作「アポロ13」でもNASA職員が一斉に検算する場面があったよね、察するにそれは鬼気迫る環境だったのだろう。なにせ宇宙飛行士の人命がかかってる職務。終盤、ジョン・グレン飛行士がNASAに導入された電子計算機がはじき出した数値があっているか主人公キャサリンに検算して欲しいと依頼するのもやはり "無事生還" がこの計画の絶対条件であるからなのだ。

 

欲言うならば、この作品、カタルシスを生み出す場面がココ一番に弱い。確かに黒人用トイレの看板を叩き壊す場面や、疎まれた雰囲気の会議室で主人公が黒板に数式を羅列していく爽快感は "そこ!" なので申し分無いのだが、これが某公共放送「プロジェクトX」のように職人物語の構成とするならば、もっと主人公がどん底に落ち込んでからの這い上がりが見たかったのよ。そこに差別は壁として立ちはだかる、その壁をどう乗り越えていくのか、周りの人々はどう支えていくのか、その描写が物足りない。なんや知らんうちにシングルマザーが良い按配に再婚できたり、なんや知らんうちに上司が改心して良い人になったり、と人間関係の衝突がエスカレートせず予定調和で締めくくるので観客の一人としてモヤモヤ感が拭えない。

 

再三言っているかもしれぬが、私は役者の顔を覚えるのが苦手であり、今作のように、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、マハーシャラ・アリはすぐにわかるのだが、問題はジョン・グレン飛行士、演者は「エブリバディ・ウォンツ・サム !!…」で主人公の寮仲間を演じていたグレン・パウエルだとはついに分からなかった。以前はヒゲが印象に残る役柄だったのでそれが無くなった精悍な飛行士の表情からは判別できなかった。悔しいかな、これを言い当てたのは隣にいたヨメ。これほどまでに正確に顔識別できるヨメの能力を生かせる職業はないだろうか、否、現代は電子計算機としてのコンピューターが市井の生活にまで浸透した時代、人力で敵うはずはなく、これからも私のヨメ・ムービー・データベースとして精進してくれたまえ(なぜか上から… not 差別)

 

---------------------------

ここまで読んで下さってありがとうございます。
ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、
↓下をクリックしてください。よろしくお願いします。


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村