「俺たちポップスター」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

世の中は諸行無常、栄枯盛衰。それを描く映画は数多あれ、この作品もそれに漏れず。しかもこの主人公はあまりに人格形成に難あり、そりゃ取り巻く人たちも離れるわな、と人生のどん底へと突き落とされる。そんな彼も改心して立ち直るといった普遍的物語を私がこよなく好きになってしまうのは、昨今のポップ音楽をこれでもかと揶揄する姿勢と流行なるスタイルを模倣する劇中歌の完成度の高さに他ならない。

 

"LGBT" という言葉も近年浸透しつつあるが、まだ市民権を得る情勢には程遠い。そんな少数派の言葉を歌詞にのせて歌うもさらなる差別を生んでしまう場面が私にはツボにはまり、そんな調子で全く意味をなさない言葉の羅列が現在のポップ音楽なのだと笑い飛ばす展開がさらに面白く、多くの有名ミュージシャンがカメオ出演している懐の深さも見事と感嘆する。

 

昨今の薄っぺらい音楽ドキュメンタリーを茶化すのがこの作品の主題だと製作のジャド・アパトーが述べている。私は彼の大ファンであり、その傾向として下ネタを容赦なく描いているところにある。作品ごとのテーマに違いはあれど人間を描く上で "性" を避けない姿勢は作品を観ていて実に心地良く、そこに "生命" という神秘と滑稽が共存している。崇高とゲス、命の誕生という発端は快楽という性交が導いたものなのだ。今や政治の世界にも不倫といった言葉が蔓延しているのも実はそこに"生命" の滑稽な側面に興味津々なのだ。私たちは皆ゲス。それを受け入れない、私はそうじゃないと認めない人は何か大事なものを見落とす残念な生き方をしていると感じる。

 

政治という言葉が出たのでついで言うと、体制に反骨を掲げるロック精神が現在の音楽シーンに台頭しなくなったのは寂しい限りであり、恋愛至上な歌詞を紡ぎ上げていく傾向はそこに商業という大人の皮算用が見え隠れするのでいけ好かない。恋愛を否定するわけではなく純愛であろうとも滑稽はやはり必要であり、チ◯コ、オメ◯等、放送禁止用語は無理ならばそこへ導く言葉に人を好きになる陰陽が潜むと考える。あくまでも "陰と陽"。万物は相反して働いている。韻をふむのはいいが陰だけだと、それはつボイノリオの世界になってしまう。

 

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