「はじまりへの旅」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

文明社会と訣別した父親ベンと6人の子供たちのキャッシュ一家は山奥に暮らしてガスや電気もない自給自足を営んでいる。一家には電話もないので山の麓の雑貨店にある公衆電話から数年前から病いで入院していた母親の様子を尋ねると彼女は亡くなったと聞かされる…

 

アメリカではたった4館で封切りをスタートしたのだが好評を得て最終において全米600館まで拡がった作品。消費社会への批判や疎外されつつある家長が根ざす家族の絆というのは、日本でも「北の国から」で描かれている。しかしここでは子供たちがウジウジしていない。何を言うか、ウジウジしているからこそ「北の国から」はいいのだ、決断力たくましい純クンなんて魅力ないじゃないか、そうだ、私は決してアンチクラモトではない。同じモチーフだと言いたいだけなのだ、そして母親の死という類似する出来事が物語の原動力となる。この作品では親の死に対するニヒリズムがユーモアを交えて描かれていく。互いの衝突はあるが、異なる宗教観や価値観を暴力抜きで表現するのがミソ。超おススメ。

 

主人公である父親は子供たちに最良の教育を目指していく。自然に囲まれた自給自足、多国籍に渡る語学教育、ネット社会を拒絶するかのごとく紙による文化・思想の習得、しかしそれはあまりに偏ったものであり、時代にそぐわない流れへと誘っていく。そんな家族が現代社会に触れた時、歯車は軋み始めていく。これこそがまさに子供達の成長であり親の言うことだけではあまりに世界は狭すぎるというメッセージが込められている。長男の旅立ちは至極当然であるし、家族がガンズのカヴァーを合奏する場面から空港に至るまでの流れが名場面、この作品の核が詰め込まれている。

 

さらに構成として時間軸が交錯しない、安易に回想シーンを盛り込まず母親の姿は一向に見せることはない、母親という存在は家族たちの言葉によって紡ぎあげられてそれぞれの心の中に受け入れられていく。ここがイイんです、主題にビタっとはまっていく。

 

この題材であれば、連続ドラマとして6人の子供達一人ひとりに焦点を当てることができよう。今作品では長男に偏っていたエピソードもさらに広がっていくだろうし、終盤における父親の改心がさらなるカタルシスを生み出していくだろう。懐疑に満ちてきた家族間のほころびを父親自身の未熟さを露呈することで子供たちからの愛を授かる。まさに家族の再生。ラストにおける無言で通じ合う家族の食卓が微笑ましい。

 

前略、Netflix 様、「はじまりへの旅」は家族を物語る最良の作品だと思われ、是非とも連続ドラマの企画を実現して欲しいわけで…蔵王の冬は厳しいわけで、寒いのが苦手な私は雪国の人々の暮らしに馴染めそうもないと思われ…いったいこのままどこへ帰結する文章なのか、自分でも訳がわからなくなっているわけで…

 

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