「ムーンライト」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

 

いじめられっ子のシャロンは廃墟の中で隠れているところを麻薬密売を生業にしているフアンに助け出される。無口なシャロンは何かと世話を焼くフアンに心を次第に開いていく…

 

説明的台詞や場面転換の遠景が一切なく物語は進行する、しかも主人公の幼年、少年、青年と3つの時代を混乱することなく描いていく。ここでは黒人という人種差別を声高に訴えるのではなく、その黒人社会の中でおきる差別・暴力が問題提起される。超おススメ。

 

この物語に登場する人々は皆、品行方正でなない、しかし懸命に生きている。懸命に生きているから裁かれずに放置していいのか、否、ルールという規範は大切であるがそこからはみ出してしまう人々を助け合う姿を主題としている。誰かが誰かを裁く、そんな一元的な観点で社会を決して見ることはできない。終盤、青年期の場面で母親がシャロンに「愛してるよ」と言う。それは決して過去を清算できない、許しを請う空疎な言葉だと悲観してもシャロンは母親を裁くことはしない。肉親の女性を見捨てることは復讐たりうるのか、復讐を自身は肯定するのか、それは弱者を暴力で支配するいじめっ子となんら変わりないではないか、無言のシャロンが葛藤する名場面にグッとくる。

 

欲言うならば、青年期のシャロンの生活をもっと描くことにより友人ケヴィンの電話がより劇的に描かれたのではないだろうか。金歯という効果的アイテムの他に背伸びしたシャロンのエピソードを加えるほうが、憧憬するフアンを模倣した、等身大ではない生活を終焉させるにふさわしい局面が訪れたと確信するシャロンの心情が伝わってくるし、ラストシーンの救われていく主人公に誰が裁くことができようか、と作品の主題へと帰結していく。

 

こんな黒人映画が現れたのは、時代がまさに変わっていることだろう感じとった人は少なくないはず。バリー・ジェンキンス監督はこれから注目の人になっていくし、ジェームズ・ラクストンの撮影も印象深い。それよりも先述した3つの時代を見事に編集した功績者を調べると、おおお、ナット・サンダース。聞いたことある、そう、あの名作「ショートターム」でインディペンデントの編集賞もらった人、うむ、なになに公開待機作として「The GlassCastle」とある。これまた「ショートターム」のデスティン・クレットン監督作。観たい。それにしても主演再登板のブリー・ラーソンは髑髏島に行ったりアベンジャーズに参戦したり…どエライ事になってるよ、仕事選んでなさそうやけど大丈夫なのかい?

 

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