「リアリティのダンス」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

リアリティのダンス


ホドロフスキー監督の23年ぶりの新作。彼の自叙伝となる原作を映像化。軍事政権下の故郷を舞台として少年時代の彼の家族が描かれる。

彼の映像表現は奇抜だが閉ざされた世界ではなく、万人を受け入れる姿勢が観客を飽きさせない。不具者が彼の世界に欠かせない共同体として描かれるが、そこに道徳心は持ち合わせておらず、不謹慎はお構い無しで進行する。ホドロフスキー少年もユダヤ人であるが故迫害を受ける。厳格なる父親は彼に男であることを強要する。それは痛みを伴う躾となる。因習は違えど、家族の結びつきは時代を知るものを頷かせる。

このまま少年の成長を描くかと思いきや、後半は父親の社会的主題に移り、やや冗長になっていく、惜しい。ホドロフスキー自身を主眼においた世界を展開してほしかった。

家族の再生となるラストにおいて、監督のメッセージは憎しみでなく、許すことで着地する。誰かが悪いと追及しない。歴史が間違いと非難することもない。なにもかも人間の所業なのだと認めた語り口が心地よい。老いるにつれて穏やかになるのは、ホドロフスキー爺も例外ではなかった。御年85歳。


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