「トランセンデンス」 | やっぱり映画が好き

やっぱり映画が好き

正統派ではない映画論。
しかし邪道ではなく異端でもない。

【ネタバレ】あります。すみません、気を付けてください。

トランセンデンス


ジョニー・デップ主演のSFサスペンス。人工知能を研究する科学者がテロリストに狙われて命を落とすが、相棒でもある妻の手で彼の意識を人工知能プログラムに移すことに成功する。身体を失った主人公は奇跡を起こすのか、それとも暴走を始めるのか。

起承転結全てが弱い、わがままな科学者夫婦の狂騒がゆる~く展開する今年の残念作。「インセプション」などクリストファー・ノーラン監督作品の撮影を手掛けたウォーリー・フィスターの監督デビューなのだが、演出力の未熟さが露呈する。

なにせ世界観が小さい。製作資金はあるのだろうが、画面に奥行きがない。これは撮影技術の問題ではなく、登場人物の描写に尽きる。それは日本が製作する一部の特撮作品にも共通する、どこかで見たという既視感。ステレオタイプのキャラ勢揃いに物足りなさを感じる。うまくまとまろうとする結果、世界観が突き抜けていない。どこか破綻してもいい、粗があってもいい、それぐらいでないと魅力ある作品として成立しない。

強大な力を得た主人公は、破滅の道へと向かう。これは神の領域に侵犯した報いとして納得できる展開だが、主人公の嫁と同僚の苦悩がうまく伝わらず、科学が目指す理想郷が集団狂気だと気付かせる描写としてイマイチ感が残る。モーガン・フリーマンが主人公の嫁に手渡すメモが唯一盛り上がりを見せてくれるが、それに続く見せ場がない。

私達人間は謙虚に生きる。それが理想郷ではなくても受け入れる。飢えや病いが絶えない世界は、私達を不平等に運命を課す。だが不平等は決して理不尽ではない。それが自然であり、私達はその一部。主人公は平等なる世界を構築する為に自然を超越(トランセンデンス)しようとして破綻する。荒廃した世界に再生するヒマワリの花は、彼の最後の願いとして存在を残す。しかし自然は平等を求めていない。残酷だが、愛とは身勝手な愚行だとヒマワリの花で解釈するのは間違いだろうか。愛や正義を昇華させるとロクな事がない。

この作品を支持するみなさん御免なさい。何度考え直してもあまりに安っぽい。娘は今年のワーストと酷評。親として映画好きとしてそれに続く言葉が出なかったと猛省。


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