耐震工事が始まり、いま勤めている学校の本校舎は無人に近く、まるで廃墟のようになっています。
人気がなくなると小動物たちが棲みはじめるのか、がらんとした校舎に探検に行った杉さんが二階の廊下でまだウロコも生えそろっていないニホンヤモリ(Gekko japonicus)のベイビーと出会いました。
「旧校舎で、出会いました。三年生の、冷水機、廊下です。可愛すぎて😍思わず手にとってしまいました🙏」、と、杉さんはこともなげに言いますが、逃げ足の速いヤモリをスマホで接写し、捕まえてハンドリングを許してもらっているところに、常人ならぬものを感じます。きっと私だったら、すぐに逃げられてしまい、こんな写真は撮れていません。
警戒心が強く敏捷なヤモリも、杉さんにはこんな表情を見せてくれるのですね。うらやましい限りです。
ヤモリのチャームポイントは顔と脚にあるでしょう。
眼は瞼が変化してできた透明なうろこで覆われており、閉じることがないのでいつでも大きく開いて見えます。この点は蛇も一緒なんですが、なぜか無表情にも気持ち悪くも感じません。不思議ですなあ。輪郭で得しているのかな。
それから、五本の指がついた短い脚がかわいい。指先が広く大きいのは、垂直な壁でも自由に登るための適応です。
ヤモリの指の裏側には微細な鱗がびっしりついていて、強いグリップ力を発揮するので、ガラスの表面にも接着して登ることが可能なのです。
ガラスの表面をするする駆け上がってゆくヤモリを不思議に思った昔の人が、脚の裏を研究したので、今では「ヤモリテープ」なるものが開発され、ダイソーでも販売されていています。私はまだ使ったことはありませんが、画鋲とか接着剤なしで垂直な壁にスマホなどの小物を張り付けることができて重宝するようです。
実は、杉さんからニホンヤモリの写真を送っていただいたのは2回目です。前回は昨年の10月の末のことでした。この時は、杉さんは屋外にいたものを撮影していました。
この時は記事にしそびれてしまったから、ここで写真を上げておきましょう。大きさはまだ3cmほど。大人のヤモリは体長が10cmを超えるくらいになるから、この個体もまた生まれたばかりのベイビーでしょう。同じ学校で撮られた写真なので、今回、校舎の中で杉さんに見つかったヤモリとは血縁関係があるかもしれません。
体表はびっしりウロコで覆われて、風格だけは一人前です。先日、校舎の中で杉さんが見つけたヤモリも、やがてウロコが生えそろってくると、このような姿になるのでしょう。
無事に育ってくれるといいなと思いました。
ずっとヤモリ、ヤモリ、と、呼んでましたが、正しい和名はニホンヤモリと言います。学名はGekko japonicusです。5月から9月にかけて産卵し、寿命は5年から10年なのだそうです。冬は、壁の裏とかちょっとした隙間で冬眠します。準絶滅危惧種としてレッドリストに載せられていることも多く、最近は数を減らしているようですが、調べる限り、家守の名の示す通り、民家の近くでないと生きていけない感じです。