カラスノエンドウとソラマメヒゲナガアブラムシ ー春を実感ー | はし3の独り言

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 昼下がりの校庭で生徒に植物の名前を教えていて、カラスノエンドウに大量のアブラムシが寄生しているのを見つけました。

 

 緑色で茎にびっしりとくっついており、最初は他の植物が混生しているのかと思いました。

 

 写真を撮ってあとで調べてみると、カラスノエンドウによくみられる、ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda)と言うものらしいです。

 

 

 アブラムシは単為生殖で増えることで有名で、高校生物の教科書にも取り上げられています。単為生殖では、雌が生んだ卵に単独で子に成長する能力があるため、雄の存在なしで増えることができます。生まれた子は全て雌で、同じく単為生殖可能な子を産むので、効率よく個体数を増やすことができるのです。

 

 アブラムシの場合、体内で卵が孵っており(卵胎生)、すでに卵を持った雌が生まれてくるので、よりいっそうスピーディに数が増えます。

 

 ちなみに、雌単独で増えることができても、卵は減数分裂を経て作られているので染色体には遺伝子の組み換えが起きており、クローン個体が増える無性生殖とは区別されます。単為生殖は卵で増える以上は有性生殖の一種なのです。

 

 この集団は、おそらく最初は一匹から始まったのでしょう。母娘の関係を持ったアブラムシの集団がお尻を上にして整然と居並ぶ光景は、生まれた順番がこうであったことを示唆しており、異様でありました。

 

 

 アブラムシはカメムシ目に分類される昆虫です。カメムシ目にはセミも含まれるといえば分かりやすいでしょうか、針状のストローのような口器をもつのが特徴で、アブラムシの場合は宿主の植物の師管にこれを突き刺し、栄養分を搾取します。

 

 

 アブラムシと言えば、お尻から甘露という甘い汁を出して余剰の糖分を排出することで有名です。これは、一般に師管に含めれる液には他の栄養分に比べて糖分の割合が多すぎるためです。

 

 甘露を目当てにするアリとの共生関係は有名ですね。

 

 しかし、このソラマメヒゲナガアブラムシたちに甘露を出している個体は見当たりません。根粒菌と言う窒素固定細菌と共生関係を結んでいるマメ科の植物の師管液にはアミノ酸などの窒素化合物が豊富で、栄養のバランスが良いのかもしれません。

 

 アブラムシの中には、アリと共生関係を結んで天敵から身を守ろうとしないものも多いのだそうです。本当に生物は多様です。

 

 一方、カラスノエンドウに目をやると、これだけたくさんのアブラムシの寄生に負けずに花を咲かせて健気であります。しかし葉にはウイルス感染したしたためであろう斑点が現れているし、食害の跡もあります。また、正体不明の昆虫の卵や、アブラムシの死骸があって、たいへんにぎやかなことになっており、ここでたくさんのドラマが起きていることが見て取れます。

 

 身近な雑草ひとつとっても、生態系が出来上がっていると解釈でき、命をつなぐ、活発な活動が行われていることが分かります。

 

 春の訪れを感じました。