高校生物学習教材 動物のからだのつくり | はし3の独り言

はし3の独り言

腕時計に自転車、高校理科の話題が多いブログです。日常で印象に残った出来事も取り上げます。時間があって、気が向いた時しか更新できていませんが、ご愛顧よろしくお願いします。

 教科書や参考書によくある「動物の組織」の解説は、なぜか、個体→器官→組織→細胞の順になっているものが多いのです。

 

 しかし、多細胞生物の成り立ちを考えたら、逆の、細胞→組織→器官→個体の順のほうが好ましいと思うのです。

 

 多細胞生物であるヒトのからだは、50兆から60兆個の細胞からできているといわれます。だとしたら、ざっと地球の人口の10,000倍くらいの細胞が調和して個体を成立させています。

 

 細胞が役割を分担し、どのように個体を成立させているかを考えるのが、ここでは大切なはず。

 

 だったらやっぱり、細胞スタートの方が説明しやすいかな、と、そんなことを考えて、このプリントを作りました。

 

 

 いきなり脱線なんですが、入試でも頻繁に問われるヒトの細胞数が50兆~60兆個というのは、ほんとうに数えて確かめた人がいるわけではなくて、「体重1キロあたり1兆個くらいかな」、として見積もって出された概算の数字だそうです。なるほど、ヒトの体重は平均的に見て女性が50㎏、男性が60㎏ですなあ。

 

 通説になってしまったヒトの細胞数を不審に思ったアメリカ人が、本当に数えたわけではないけれども、それに近いことをして、「30兆個くらいだったー。」、と、書いた論文があると聞いたことがあります。

 

 いずれにしても、ヒトの細胞数は余裕で兆を超えるオーダーになるので、実際に数え切った人はまだいないのです。

 

 そんな兆を超えるたくさんの細胞は、ただ集まっているわけではなくて。個体を作るために細かく役割分担をしています。同じゲノムをもった細胞が、任された役割に応じて形態的にも機能的にも多様化することを、細胞の分化といっています。

 

 

 ヒトの細胞の種類については学者によって見解が異なるんですが、およそ200~300種類の間になっています。数に幅があるのは、分類の仕方に違いがあるからで、人間がやることだからしょうがないです。

 

 200種類にも分化した細胞は、組織を作って働いています。

 

 ここでいう組織と言う言葉は、よく、掃除の時間に、効率よく清掃を終わらせるために、「ほうき隊と雑巾がけ隊を組織して~」、と、指示を出すときの組織と同じです。

 

 つまり、組織と言うのは、同じ細胞が集まったもの、と、いう定義になります。

  

 

 組織が同じ種類の細胞があつまったものなら、組織も200~300種類あってもいいものなのに、なぜか、高校で覚える組織はたったの4種類になります。「上皮組織」、「神経組織」、「筋組織」それから「結合組織」です。

 

 ここで、素直でお利口な子ほど、解釈に苦しむわけです。

 

 お利口なみなさん、気づきましょう。そもそも細胞数についても細胞の種類についても、けっこういい加減なんです。

 

 ここでいう組織は、共通する特徴を持った組織をまとめたものです。たくさんある組織を大別したということですね。分類の上で注目された特徴は次の通りです。

 

 上皮組織…細胞が隙間なく並んでいて、からだの表面を覆う(隙間があったら困ります)

 神経組織…神経細胞からできている

 筋組織…筋細胞からできている

 結合組織…細胞間物質がある

 

 上から3つは分かりやすいけれども、結合組織だけイメージが難しいです。上皮、神経、筋組織以外の部分は全て結合組織にしてしまう分け方なので、その他もろもろといった風情がありまして、骨や血液、脂肪組織などが入ります。

 

 ちなみに結合組織を特徴づける細胞間物質と言うのは、骨だったら炭酸カルシウムとか、真皮だったらコラーゲンとかになります。血液だったら血漿(血液の液体成分)なので、ピンとこないんですけどね。よくぞ、まあ、その他の組織に共通する、うまい特徴を見つけたものです。

 

 

 

 組織の上の階級は器官になります。先ほどクレームをつけるみたいに紹介してしまった、組織を4種類に大別する方法ですが、器官を定義するときに大活躍します。器官は、4種の組織が協力して一つの役割を果たす構造をとったものと定義すると上手に器官を理解できるのです。胃とか小腸とかを器官と呼ぶのは、感覚に合います。

 

 動物のからだのつくりで、教える順番が個体からになりがちだったり、組織の定義に矛盾を感じたりするのは、もしかしたら、からだの理解が解剖学的な知見によって進んできたことが影響しているかもしれないですね。解剖を始めてまず気がつくのは器官ですから。器官を調べていって、組織に気づき、それから細胞の種類や器官系の議論になって行った、そんな歴史的な背景があるんじゃないでしょうか。

 

 脱線しました。

 

 本筋に戻ります。関わりの深い器官をまとめて器官系とします。

 

 

 

 これは病院に行くとよく聞く分類になります。呼吸器系外来とか、消化器系外来とか、まあ、聞かないのもありますが、馴染みはあります。心臓と血管をあわせて循環器系とかね。

 

 

 

 器官系が集まってできたのが個体になります。

 

 このように、数えきれないくらい多くの細胞から成り立っている動物のからだは、個体、器官系、器官、組織、細胞の各分類階級を作って理解する決まりなのです。

 

 これが植物になると、またちょっと変わってきます。